第17話
水遣りを終えると、パブロとリオはショッピングモールに行くことにした。特に目的がある訳ではなく、気晴らしに冷やかしに行こうということだ。
「ガブリエレ! オレたち、ショッピングモールに行って来るけど、何か買ってくるものってあるか?」
丁度、休憩の為に家に戻ってきたガブリエレを見つけてパブロが声をかける。ガブリエレはタオルで汗を拭きながら答えた。
「ああ、グラスを買ってきてくれるか」
「グラス? 何で?」
「何でって、この間、お前が割っちゃったからだろー?」
ガブリエレはじゃれ合うみたいにパブロの髪をかき混ぜた。ピンで止められた前髪が乱れてすごい髪型になっていく。パブロは逃げながら「わかったわかった」と言って、リオの後ろに隠れた。
この2人は本当に仲が良いなーーキルヒナーとケンカした後だから、リオは余計にそう思う。
「楽しんでおいで」
目つきが鋭くて無骨に見えるガブリエレは、笑うと途端に柔和になる。日向で眠る猫みたいなガブリエレの笑顔に送られて、リオとパブロは路面電車の停留所へ向かった。
日曜日の電車は混んでいた。カーブを曲がるたび、大人の身体に潰されそうになりながら、2人はなんとかショッピングモールに辿り着いた。停留所に降り立った時の開放感は、それはそれは気持ちの良いものだった。
石畳の通路にショーウィンドウが並び、様々な店が軒を連ねている。電車の混雑具合からも予想できたことだが、ショッピングモールもやけに人が多かった。
この町の人口はそう多くない。ショッピングモールには、この町の住民の殆んどが集まってるんじゃないかと思うほどの人がいた。
リオは学園の生徒や教師を何人も見掛けた。
「何でこんなに人が多いんだろ」
パブロの呟きを聞きながら、辺りを見回すと、リオが壁に貼ってあるポスターに気が付いた。
「見て、パブロ。これだよ」
ポスターには『喜劇』の文字。場所はモールの広場だ。
「へえ、オレたちも見に行こうぜ」
嬉しそうに言って、パブロはリオの手を取った。
「え、でもグラスは?」
「そんなの後でいいだろ」
言いながら、パブロは走り出していた。急に引っ張られて、リオは転げそうになる。
「危ないって!」
リオの抗議の声も虚しく、パブロは上機嫌で、人波を泳ぐように、ぐんぐん広場に向かってリオを引っ張って進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます