第187話 付与魔法の極意 前半

「その技術を教えてもらっても?」


 魔法を得意としないドワーフだけど大丈夫だろうか?


『ドワーフでもできるの?』

『出来るよ、色のついていない魔石を使えばいいよ、付与の付いていないやつでやってみたら?』


 なるほど自分魔素じゃなくて魔石で代用するのか。


「構いませんよ、せっかくだし何もついてない2本でやりましょうか」


 ヒスイからのアドバイス通り、無色の魔石をアイテムボックスから出した。


「師匠、そいつは魔石か?」

「ですよ」

「色を見るに無属性か?」


 色で分れるんだっけ?


『そうなの?』

『そうだよ』


 ヒスイがそうだというならそうなのだろう。


 今まで魔石の色とか気にしたことなかったから知らなかった。


『ちなみに、赤い魔石は火属性、水色は水属性と行った感じで、武器や防具に属性付与するなら属性魔石がおすすめだよ』


 属性付与とかやったことないな。


「ですね、1つ目は魔石を使った方法で、属性付与したければ、属性の魔石があればできますよ」


 ヒスイに教わったことをそのまま伝えた。


「ほぉ」

「さて質問です。魔石は何からできているでしょうか」


 基本を理解してもらうために質問をしてみた。


「そりゃ魔素からだろ?」

「そうです、人種や魔物なんかの体内にできますね」

「ん?人にもできるのか?」


 以前ヒスイがそんな事を言っていたのを覚えている。


「できますよ、長寿種の方々は高い確率で、もってますね。話がそれるんで、これまでで」

「すまん」

「いえいえ、んじゃ魔法はどうやって使います?」


 誰もが解かるように聞いた。


「そりゃ呪文を詠唱して使うな」


 イメージをして使うという答えが欲しかった。


「まあ、そうなんですが、求めてる答えじゃない」

「どういうことだ?」

「魔法は、適正がありますよね、適正が無くても多少は使えますよね」

「だな」

「なぜですか?」

「そりゃ、日々見てるからじゃないか?」

「まぁそうですね、魔法は呪文詠唱とかはどうでもいいんです、イメージが出来れば使えるんですよ、高度な魔法程適性がないとイメージしにくくなるから使えなくなるだけなんで」

「なるほど、するとイメージが大事という事か?」

「そうです、ガッザラさんは、何を思って作りますか?」

「……無心だな」

「そこなんですよ、自分は、基本オーダーメイドでしか作らないんです、作るときに

使い手にどうなってほしいかイメージして作るんですよ」

「なるほど」


 そこまで話すと、ガッザラは何やら考えている様子を見せた。


 おそらく彼なりに何か思い当たる節があるのだろう。


「思い当たる節があるようですね」

「あぁ、作る過程で付与効果については理解した魔石はどうするんだ?」


 自分に効かれてもと突っ込みたいが。


『どうするの?』

『魔素って以前話したように、気体・個体・液体って存在するのは覚えている?』

『空気中に漂う魔素が気体で、魔石が個体、ダンジョンの下に流れている液体ってやつだよね?』

『そうそう、液体を使うのさ』


 塗るのかな?


 とりあえずガッザラと話を進めていく。


「こっちはですね、水と同じで、気体、固体、液体って変化するんですよ」

「気体?液体?固体?」


 文明的なものなのだろうか?


 一応小学生で習うレベルだと思っていたが。


「ありゃそこからですか?」

「学が無くてすまんな」

「いえいえ、気体というのは魔素で言う、空気中を漂ってる魔素の事を指します」

「なるほど、水も気体になるのか?」

「なりますよ、鍛冶をやっていれば、叩いた金属を水で冷やしますよね?」

「そうだな、あ……」


 水蒸気について思い出してくれたかな。


「わかりました?」

「あぁ、あの煙は水なのか」

「水蒸気というんですけどね、液体の水が気化した状態です」

「なるほどな、すると固体ってのは、氷か」

「そうです、魔素、魔石にも同じような状態があります」

「魔素が液体になるのか……?」

「なりますよ、水の場合は、冷やせば氷、温めれば水蒸気なんですが、魔素は違います。圧縮したら魔石、魔石から液体にするのは、冷やすんですよ」

「ほう……?どれくらい冷やすんだ?」


 どれくらい冷やせばいいんだ?


『どれくらい?』

『ん~どれくらいだろう~滝とかも凍っちゃうレベルなんだけど』


 あいまいで分らん、とりあえずー20℃位か?


「そうですね、具体的にどれくらいというのはあれですが、大体-20℃位ですかね」


 ガッザラは、どれくらいの寒さ?という表情を浮かべていた。


 そりゃそうだ、自分も九州出身で都内暮らしだった為、-20℃と言われてもピンとこない。


「師匠悪いが、どれくらいなのかが解らん」

「あ~そうですね……」

 

 どうするか、この際この部屋を冷やして体験すればいいか?


「んじゃ、ちょっとこの部屋の中を-20℃にしますよ」

「あ?どういうことだ?」


 この部屋の気温をー20℃にイメージした。


 すると一気に冷え込んできた。


「何をしたんだ…… ものすごく寒いんだが……」


 寒くはなったけどこんなものなのか?


 真冬の岩手に行った事があるが、その時と比べると全然余裕な気がした。


『ちゃんと冷えてる?』

『うんうん、これくらいなら魔石も液体になるよ』


 あれ?ちゃんとできてるのか。


『あまり寒くない気がするんだけど気のせい?』

『そりゃ、君は絶対健康があるからね~一定以上の寒さは無効だよ』


 寒さや暑さも絶対健康に引っかかるのか。


「これが、-20℃の世界です」

「わかった、ものすごく寒い状態だと言うのはわかった…… 元に戻してくれ……」

「はいはい」


 元の気温に戻るようにイメージすると、暖かくなってきた。


 この寒暖差を一瞬で体感すると体調崩しそうだなんて思った。

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