第179話 20年後のブラン村 ネア様からの贈り物

『ねぇねぇ、直人ちょっといいかな?』


 秋津直人の姿に戻り、寝る準備をしているとヒスイから声かけられ何だろうと思っていると。


「ん?」

『ネア様から君に対してのプレゼントと言えばいいのかな?』


 ヒスイだけじゃなくレムも何か知っているのかな?


「プレゼント?」

『『うん』』


 ネア様からプレゼントされるような何かをやったかな?


「プレゼント貰えるようなことをした記憶はないんだけど……?」

『まぁそうだろうね、エスティアの像と言えばいいのかな?』


 エスティアの像というとヴォーネス騒動始まりの頃のやつか、壊れた教会を治す次いでに作った像を思い出した。


「出来の良い神像の事?」

『そうそう、ちなみに今エスティアの町ってどうなってるかしってる?』


 戻ってくるときに寄ったわけでもないし知らなかった。


「いや?」

『ヴェンダル王国内で王都に継ぐ2番目に大きな規模の町になってるんだよ』


 いやいやいや、噓でしょ自分が知っているエスティアの町はそんなに大きくなかったはず、ブラン村から最寄りのジャッスェイ町の半分くらいの規模だった気がするし。


「なんでそうなってんの……?」

『君が作った像のおかげもあって創造神教の聖地になってるんだよ。人が増えて秋津砦があった場所からエスティアの町が一体化したのさ』


 秋津砦と一体化した時点でかなり規模が大きくなるのは分かるが、そんなに人って簡単に集まるもんなのか?


「そんなに広がってるの?」

『うん、んで今回のプレゼントなのさ』


 信仰者獲得に努めたから?


 良く分からないけど貰えるものは、ありがたく貰っとくか。


「そうなんだ、その内容とは?」

『うん、これみて』


 そう言ってヒスイが両手をだすと、そこには小さな光の玉が3つあった。


「なにこれ?」

『カスミちゃん、ヒナちゃん、ノンちゃんの魂だよ。ネア様から神の手を使って3人の肉体を作って君の元で生活させてみては?とね、ついでに3人共それを望んでるみたいだから』


 まぁたしかに、ノンが亡くなるとき、“カスミ、ヒナ、ノン来世でもまた3人で遊べるような環境になりますように”と願ったけども、こういった形で成就するとは思っても居なかった。


「肉体を作るって言ってもな……」

『オーレリアからもらった遺毛を使えばいいんじゃない?』

「なるほど」


 問題はどんな姿て転生させるかだ、元のシャドーウルフとして?


 それとも人として?


 どうしようか悩んだ。


「人としてなのか、元のシャドーウルフとしてなのか本人たちの要望とかわかるかな?」

『ん~』


 ヒスイは3人の魂をみると、すぐに顔を上げた。


『みんな人としてだって』


 それならば、それぞれの小箱から毛を取り出した。


 何歳位からがいいだろうか?


 ある程度自由に動き回れる5歳くらいでいいかな?


 決まったらそれぞれの肉体を作っていく。


 カスミのイメージは、3人の内しっかりしているリーダータイプだ、髪の色は生前のシャドーウルフと同様の黒、ちょっと釣り目な感じでいいかな?


 ヒナ、明るく活発なイメージのあるヒナは、目は釣りでもタレでもなく普通にしておこう。


 最後にノンは、のんびりしているイメージだ、のんびり屋さんのイメージに合うタレ目にした。


 それぞれの遺毛を使い、イメージを元に3人の肉体を作り、自分が小さいころに使っていた服を着せた。


「これでいいかな?」

『うん』


 そう言うとヒスイは両手を広げた。


 ヒスイの腕の中に居た小さな光の玉がそれぞれの肉体の方に移動していく。


「ところで記憶は?」

『ないよ、スキルもないから付けてあげてね』


 まぁ普通はそうか、たまに幼少期の時だけ前世の記憶があったりするがそんなものなんだろう。


 3人の女の子たちは目を覚まし身体を起こすと、辺りを見たりしていたが、ノンだけは起きるなりじーっと自分の方を見ていた。


「あ~えっと、自分は秋津直人です」

「なおと……」


 それだけ言うと、普通に立ち上がり自分の方に駆け寄って来るなりピタっと抱き着いてきた。


「えっと……?」

「なんとなく……」


 なんとなくか、ノンが自分に抱き着いてきたのを見ていたカスミとヒナも寄って来て抱き着いてきた。


「えっと……?」

「うちも何となく?」


 ヒナらしい感じの答えだった。


「名前は憶えてるかな?」


 記憶がないと分かっていながら念のため確認してみると。


「ノンなんかそう呼ばれていた気がする……」


 抱き着いているノンが答えた。


「うちはヒナかな~?」

「私はカスミと呼ばれていた気がする」


 あれ?


 皆それぞれ名前をはっきりとじゃないが憶えていた。


『あれ?ヒスイ?』

『ん~全部消えてないのかな?』


 まぁ名前を憶えているならそれでいいか、もしかしたら他にも何か覚えているのだろうか?


「そうだね、名前はあってるよ、他にも何か覚えてる事は?」

「兄ちゃん、兄ちゃんとどっかで会ってる気がする」

「それは私も思う」

「うちも!」

「だから抱き着いてきたの?」

「「「うん」」」


 まぁ支障ないしいいか、これからカスミ、ヒナ、ノンとの子ども達と一緒に生活することになった。

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