第180話 オスカーからの使い

ブラン村に戻って来てから約1年の時が流れた。


 カスミ、ヒナ、ノンは、自分の親であるサントとカレンから戦いの術や生きる術、常識を学んでいた。


 カスミは、どんな状況下でも冷静な判断ができ、2人を守りながら指示を出したりしている。誰かを守る盾役としての適性がありそうで、片手剣と盾術に長けていた。


 ヒナは、3人の中では活発な性格もあるのか素早さに長け、格闘術や、槍術に適正があるようだった。


 ノンは、肉弾戦の適正はイマイチだが、魔法使いとしての才能は有りそうだった。

 試しに母親カレンの持っている火適正をつけるとアドバイス無くても見事に使いこなし、空間適正を与えて狩させると、ヒナが適当に放った矢を獲物の頭部直前にワープさせる等考え方が独特なのか頭の回転が速いのか良く分からないが魔法使いとしての才能を発揮していた。


 ノンに関してはもう一つ勉強という部分に関しては文系はイマイチな部分が多いが、理系分野では少し特殊な才能があった。


 カスミとヒナなら問題があって解く過程があって答えという普通の過程をこなすのだが、ノンは違い問題と答えを教えると自分自身で解く過程見つけてくるという事が多々あった。


 何というか、問題があって、仮説をたて、その過程を色々実験していく研究者のような考え方をするなと思っていた。魔法使いとしての才能はこの独自の考え方からきているような気がした。


 そんな3人の子ども達と一緒に狩をして村の近くまで戻ってくると。


『あら?半蔵君が村に来てる』


 と、ヒスイが教えてくれた。


『何のために?』

『君に会いたいみたいだけど』


 半蔵がわざわざ会いに来たんだろうか?


 何か用事があってきたような気がしてならなかった。


『案内してくれる?』

『うん』


 自分の肩に居たヒスイが前を飛び始めたので後について行く。


「3人とも悪いけどちょっと付き合ってくれる?」

「はい!」「あい」「は~い」


 と、三者三様の返事を聞きヒスイの後について行くと、村の入口で村の外に向かう半蔵と鉢合わせた。


「あっ、兄ちゃん!」

「久しぶりだね半蔵」


 おじさんになった感じはあるが渋さのあるイケメンになってるなぁとか思った。


「あぁ!ってその子達は?兄ちゃんの子ども?」


 これは何と答えればいいんだろうか?


 カスミ、ヒナ、ノンは3人共自分と同じ黒髪黒目だからそう思われても不思議ではないが、エルメダ様から解放されて1年で6歳児3人の父親というのは現実的に無いだろう。


「まぁちょっと訳アリでね」

「そっか、あのさ隊長から兄ちゃんに手紙を預かってるんだ」


 そういって半蔵はアイテムボックスから手紙を出し自分に差し出した。


「隊長ってオスカーの事でいいのかな?」

「あぁ、狼衆のみんなはヘインズ王国に居るんだけど兄ちゃんも急ぎ来てくれないかな?」


 狼衆全員がヘインズ王国って何かあったって事か?


 急ぎ手紙の封を切りオスカーからの手紙を読んだ、内容は“ヘインズ王国のポートパラダイスにてペストと思しき病気を確認した。これを読んだら至急ポートパラダイスの冒険者ギルドまで来てくれ”という内容だった。


 ペスト、中世のヨーロッパでは1回目の流行期で1億人以上の死者、2回目の流行でも2500万人の死者を出したと何かで見た記憶がある最悪の病気だ。


「半蔵、オスカーに伝えてくれる?すぐに向かうと」

「あぁ、分かった先に行って待ってる」

「あぁ」


 さて、問題はここからだ、有効な薬を持てるだけ持っていきたい。


『ヒスイ、ペストに有効な薬が欲しいんだけど作り方を知らないか?』

『ん~?君の知識を借りるよ~』


 そういうと、しばらく間を置いて教えてくれた。


『体内のペストウィルスとやらを殺せればいいのかな?』

『まぁ、そうだね、抗菌薬があると嬉しい』

『それなら、ブルーローズの花びらを乾燥させて粉末状にしたものを使えばいいよ、大人一人当たり2枚あれば十分かな』


 ブルーローズか、旅に出るときに持たされている分があるが、少ないだろうなとりあえずヘインズに向かって現状を見てから空間転移で戻ればいいか。


 カスミ達を一旦返さないとだ。


「聞いたね?3人とも悪いけど先に帰っててくれる?」

「大丈夫、カレンさんとミアンさんに今の事伝えればいい?」


 さすがはしっかり者のカスミだ。


「あぁ、自分は今からヘインズに向かうからそのことも」

「わかった!ヒナ、ノンかえってこのことを伝えるよ」

「あい!」「は~い」


 と、ヒナとノンの返事を聞くとカスミは2人を連れてミアンの家のある方へ走っていった。


 さて、ヘインズかまだ行ったことないからな、行った事がある場所で最寄りは秋津砦近くの街道かな?


 そう思い、秋津砦入口の街道をイメージして空間転移を使った。


 空間転移を使った直後驚いた。秋津砦に続く道があるところにとんだら城壁の横に出た。


「何これ……、もしかして……?」

『壁の向こうはエスティアの町だよ』


 大きくなりすぎじゃない?と思いながら、ヘインズ王国のポートパラダイスを目指した。

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