第178話 20年後のブラン村 母親カレンとミアン

 実家を後にし、ミアンの家までやってきた。


 旅に出る前よりも敷地が広くなり花壇が広がっていた。


 ブルーローズが咲き誇り、あちらこちらに、ドライアドの上位精霊が飛び回っていた。


「なんか、広くなったね」

『だね~』

『なんでここにこんなに上位精霊が集まってるのさ……』


 村では精霊が集まっている所はないとか言っていたが。


『ここは何百年とかけて人の力だけでブルーローズを育てた子がいたからね、だから私が力を貸してるんだよ』

『へぇ~、ブルーローズってドライアド達がいなくても育つんだ』

『うん、育ててたんだよ、すごいよね』


 あの時はヒスイが泣いてミアンの延命を願ったりしたことがあったなと思い出した。


『それでか、ボクにもそう思える人できるのかな?』

『どうなんだろうね、私もミアン以外にはそう思える人は居ない気がする』


 ミアンの事を考えればヒスイの大体の基準がわかるが、光の大精霊レムの場合はどういった状況になったらそう思えるのかな?と思いながらやり取りを聞いていた。


 ミアン宅の玄関まで来ると中から話声が聞こえる。少女の声と女性の声だった。これだけドライアドが一杯居るし自分が帰ってきてる事は悟られてそうだけど?


『ヒスイ、帰ってきてる事伝えてないの?』

『せっかくだし?子どもたちにも黙ってるように言ってある』


 ヒスイはサプライズを希望ですか?


 とりあえず、玄関をノックする。


「は~い」


 ミアンの声だな、若返らせてから声質変わってないなと思いながら黙って玄関前で待っていた。


 玄関が開くと旅に出るときと全く変わらない姿のミアンが顔を出した。


「あっ久しぶりだね~」

「どうも」


 そっけなかったかな?と思っていると。


 ミアンは直ぐに中に戻っていった。


「カレン!カレン!ナット君が帰ってきたよ!」


 あれ?父さんは居ないのかな?


 少し待ってるとミアンと30代になったカレンが姿を現した。


「ただいま」

「おかえり!」


 そう言うとカレンは抱き着いてきた。


「えっと……?」

「オスカーさんから天神様に攫われたと聞いていたけど無事だったのね」


 攫われた?


 連れて行かれたという表現より物騒な感じがあるが、オスカーからどのような手紙?話をきいたんだろうか?


「攫われたというよりは、自分が強くなりたいと願ったから、その願いを叶えるために連れて行かれたという感じで……」


 カレンは自分から離れると観察するように自分を見ていた。


「ナット君の姿でも?」


 どうなんだろうか?


 ずっと秋津直人の姿で過ごしていたからどうなんだろうか?


「どうなんだろう、ずっとこっちの姿だったから」


 試しに年相応のナットの姿になってみると、子どもの姿じゃなくなったらしく視線の高さがあまり変わらず姿が変わったのが分からなかった。


「すごく立派になったね」


 母親がそう言うならそうなのだろう、自分自身触ってみると確かに鍛えられた身体つきをしていた。


「みたいですね……」

「なんだ、しばらくその姿になってなかったのか?」


 ミアンから突っ込みが入ったが、20年前は子どもだったし、子どもの姿で戦争は……、リンクル族にうまく溶け込めたのでは?


 なんて少し思った。


「そうですね、ヴォーネス国内の戦に参加してましたから」

「そうみたいね、手紙にはヴォーネス内戦の最後に攫われたと書かれていたね」


 手紙か、オスカーからという事は誰から聞いた情報だったのだろうか?


 伝言ゲームのように中身が変わっているとかはない辺りユーロンスに居た人間から聞いているのは分かるが……。


「とりあえずあがっていきな」


 ミアンから上がるように誘われ久々にミアンの家に上がり、お茶をしながら20年ほど前にこの家を出発してからの話を母親とミアンの話を伝えた。


 話の途中で、父親のサントが帰ってきたので、ミアンとカレンが夕飯の支度をしている間に同じ話をした。


 サントとカレンは、ミアンの結界内に小さな木造の家で生活していたが、敷地は拡げられるのでログハウスをプレゼントし、自分の分も横にだし今日はそこで寝る事にした。


 自分のログハウス内で寝る準備をしていると。


『ねぇねぇ、直人ちょっといいかな?』


 ヒスイから声を掛けられた。

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