第175話 20年後の王都ヴェンダル ノン

 目を開けると、懐かしい兵舎の前にオーレリアとセリエがいた。


 セリエが結構立派な鎧を身につけ、自分があげた2つチャクラムを身につけていた。


「ノンちゃん……」


 オーレリアもセリエも背後にいる自分には気づかずノンの最期を看取ろうとしていた。


 そんな中、匂いで気づいたのだろう、ノンが最後の力を振り絞って体を起こしこっちを見た。


「あるじ……?」

「ノンちゃん?」

「あるじの匂いがする」


 ノンと自分の間にはさえぎるものは無いはずなのにこちらが見えていないのかな?


「ぇ?」


 オーレリアとセリエがこっちを向き自分の姿に気づいた。


「あ!ナット君!」


 久しぶりにナットと呼ばれたきがする。


「お久しぶりです姫様、そしてノンずいぶん待たせたね」


 ノンにゆっくりと歩み寄ると、ノンもゆっくりと立ち上がりこっちにおぼつかない足取り歩き始めた。


「あるじ……あるじ……懐かしい匂いと声だ」

『もうノンちゃん目が……』


 こっちに寄って来るノンの身体が崩れ落ちそうになり、慌てて駆け寄り支えた。


「ノン!」

「あるじ、遅いですよ、カスミちゃんもヒナちゃんも大分前に逝っちゃいましたよ」

「すまない」

「でも、最期に主にあえてよかった~……」


 あの時と変わらないのんびりとした懐かしい口調だ。


「若返らせることが出来るが……」

「このままでいい、カスミちゃんとヒナちゃんを待たせてるから……」

「そっか……、1つだけ、自分と関わった事を後悔してないか?」


 もし自分と関わらなかったら最後の任務、姫様の護衛を受けなくて済んだだろうにと少し思った。


「何でですか?わたしは幸せでした。カスミちゃんとヒナちゃんと一緒に遊べたこと、主からスキル頂いた事、そして姫様の護衛任務をやり遂げました。カスミちゃんもヒナちゃんもそう思ってました」


 これを聞いて自分はどれだけ救われただろうか、狼衆が皆幸せじゃなかったかもしれないが、そう思ってもらえてよかった。


「そうか、よかった……」


 ノンの身体から力が抜けていくのが分かる。


「ノン……?」

「そろそろお別れみたいです。またあるじとかすみちゃんとひなちゃんで一緒に遊びたかった」

「あぁ、3人とも生まれ変わったらまた一緒に遊ぼう」

「は~い……」


 これがノンの最期の言葉になり、ノンの身体中から力が抜けノンの身体からでてきた1つの光の玉が天に登って行った。


「ノン……」

「「ノンちゃん……」」


 カスミ、ヒナ、ノン来世でもまた3人で遊べるような環境になりますようにと願わずにはいられなかった。

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