第171話 卒業と褒美
隠密が身についた実感がないまま、卒業試験が終わった。
元の荒野の風景に戻った。
「どうした?うれしくないのか?」
「隠密が身についた実感があまりないのですが……」
「だがどうすればいいかは分かっているんだろ?」
それは分かる、気配を、足音を可能な限り消していけばいいと言うのは。
「それは分かっているんですが……」
「あとは慣れだな」
「そうですか」
まぁいいか、意識しないで隠密なんて怪しさMAXだからな、ポジティブに考えよう。
「あまりうれしそうじゃないな、これで戦いに明け暮れた日々から解放されるんだぞ、もっと喜べ!」
ん?
「なんで解放される事を喜ぶんですか?」
「ん?うれしくないのか?」
「ん~ここにいる間常に強くなっているなと実感できましたからね、ならとことん限界まで鍛えてみたいと思うのですよ」
「なるほどな、だがな、お前は限界突破スキルをもっているからな、限界なんて訪れないぞ」
そう言えば限界突破って持っていたな。
「そうですか」
「うむ、それとほれ」
そう言うとエルメダは自分の額に手を当てた。
「これでお前が持っていたスキル全て戻したからな」
改めてステータスと念じてみると
―――――――――――――――――――――――――――――――
秋津 直人 人族 18歳
異界の神の加護
創造神ネアの加護
スキル
神の手・絶対健康・鑑定妨害・アイテムボックス・言語理解・限界突破・夜目・速読
成長速度上昇・サバイバル・鍛冶・木工・革細工・彫金・錬金・調理・心眼・縮地・刀術・
体術・弓術・槍術・見切り・二刀流・行動速度上昇・影渡り
適正武器
全種
適正属性
熱、水分、大気、土、空間
―――――――――――――――――――――――――――――――
確かにここに来る前と同じだ、
『適正に空間がついてるよ~』
ヒスイに言われて気づいた。確かに空間が追加されていた。
「エルメダ様、適正属性に空間が着いているのですが……」
「そいつは私からの卒業祝いだ、使い方はちびっこ共に聞けばいい」
『だってさ』
『って言われてもね~全部は知らないからなぁ』
『ボクも同様だなぁ』
試行錯誤しろって事か……?
「そうだな、一番便利な奴の使い方だけ教えようか、影渡りは夜限定で色々な所に行けるが、同じような使い方で時間帯問わずに使える」
瞬間移動とか空間転移と言われるテレポートってやつか!
「おー瞬間移動がいつでもできるんですか!?」
「そうだ、後は私がやったように自分の固有空間を作り出すことも出来る。ユーロンスの様な事があったら空間事切り離して消せそれだけですべての悪魔に対処できるからな」
悪魔か、せっかくだし聞いてみよう。
「エルメダ様、1つ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「悪魔憑きとかの悪魔っていったい何なんですか?」
「ふむ、ちびっこ共からも聞いてないのか?」
聞いたことはあるが、権限がないとか言っていた記憶がある。
「聞いた事はありますが、教えてくれませんでした」
「だろうな、ちびっこ共には権限がないだろうからな、それを知りたければ秋津に行けばいい、嫁っ子を貰って追うのをやめちまったがノリはこの世界の真理を追っていたからな」
「その真理の中に悪魔の正体が?」
「あぁあるぞ、悪魔の正体は1つじゃないからな」
って事は悪魔と呼ばれる者達の起源は複数あるって事か。
「わかりました、今まで本当にありがとうございました!」
「あぁ、気にするな、お前を鍛えたのはノリとの約束でもあるからな、それにお前といるとノリと一緒にいるようで私もとても楽しかったぞ」
エルメダが初めて笑顔を見せた気がする。
「それじゃあ元の場所に戻るか」
エルメダがそう言うと、朝方か夕方か不明の荒野から、目の前に城壁があり青空が澄み渡っている平原の風景に切り替わった。
「ここは……?」
「おまえが最後に居た場所だよ」
それって、ユーロンスがほろんだ場所……?
「ユーロンスですか?」
「あぁ、今おまえの目の前にあるのがアキツって町だ」
ん?なんでアキツ?
「アキツ?」
「あぁ、20年前お前がユーロンス民の避難場所として作った場所だからな、作った本人の名をとってアキツの名がついてるんだそうだ」
ちょっとまって?20年前?
「20年前?ユーロンスがほろんだのは20年前ですか?」
「そうだ、まぁ驚くのも無理はないな、あの空間は時間が流れてないような風景だからな、お前があの空間に居る間にこの世界では20年の時が流れているんだよ」
個人的には、あの空間の中で20年以上過ごしていたような感じだったが……、現実世界では20年も時が流れていたのか……、となると後2~3年後に茜君がこの世界に来るという事か、日の位置と気温を考えると春先か?
「はぁ……」
「シャキッとしろ、ところでお前はSS級冒険者になる意思はあるのか?」
「ぇ?なれればいいかなって感じですかね」
確か3つの国の推薦状が必要だったはずだけど。
「そうか、まだオリハルコンが残ってるなら、ハーブティッサ王国を目指すといい」
「ん?ハーブティッサ?」
どこだっけ?聞いた事があるが。
「あぁ、ドワーフ達の国だ彼等にとってオリハルコンは喉から手が出る程欲しい代物だからな、オリハルコン塊数個と推薦状交換してもらえるだろうよ」
「そんなに貴重品なんですか?」
「あぁ、なにしろ使徒じゃないとダンジョン攻略できないからな。それに普通に鉱物として取れるんだが、その鉱脈を発見できていないのが現状だ」
なるほど、それなら価値があるのも頷ける。
「助言ありがとうございます」
「いやいい、私もお前の旅を見守ってやるよ」
エルメダがそう言うと、自分の身体が一瞬淡く光った気がした。
『エルメダ様の加護がついたよ』
『効果は?』
『ん~阿修羅様の加護と同等かな~?』
「なんか加護を頂けたようで、ありがとうございます」
「気にするな、気が向いたら浮遊大陸にも来い、グアーラがお前に会いたがっているからな」
飛行機とかが出来たら考えるが、高所恐怖症が克服されない限りは行くことはないだろうな……
「気が向いたらで……」
「フフッそれでいい、じゃあな」
それだけ言うと、エルメダが姿を消した。
さて、ユーロンスが滅んで20年後か、アキツの街回って、首都ヴォーネスと王都ヴェンダルに行って、ハーブティッサに向かうか。
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