第166話 作ろうにも作れない

気づくと元の荒野のような風景に戻っていて。そこで横になっていた。


 全身の痛みが引いていない、殴られた痛みというより筋肉痛のような痛みだった。

 

 “全身が痛い、痛てぇ”と思っていると、視界の中にエルメダが現れた。


「気づいたか?」


 横になり空を見上げてる自分に対して見下ろし聞いてきた。


「えぇ、まだ全身が痛いんですが……」

「そりゃあれだけ動き続ければそうなるだろうよ、何か気づいた事あったか?」


 気づいた事?


「体力が最小限で維持していたことですか?」

「そりゃ、お前が持っている阿修羅とやらの加護だろう、戦いの神のようだからな戦いの中で何割かの体力は絶対に維持する」


 ん?何割か?それって限界値が上がれば上がるほど楽になるという意味では?


「気づいたようだな、基礎体力が伸びれば、良いコンディションで永遠に戦い続けられる。もう一度さっきと同じことをやれば全然違う結果になると思うぞ、やってみるか?」


 全身が痛い状態でもう一度とな……?


「今すぐにですか……?」

「いや、その体の痛みが引いてからでいい、少し休憩時間をやるから休め、それとお前は自分で武器を作ることが出来るようだからな、先と同じ戦いをする上で適切な武器を作ってもよい」


 適切な武器作りか、長柄武器だろうか?

 刀よりは槍や薙刀のような武器だろう、後はセリエに上げたチャクラムの様な武器だな……、痛みがある程度引いたら、十文字槍とチャクラムを作ろうと決意した。


「わかりました」

「とりあえず今は好きに休め、お前の準備が出来たと思ったら戻ってくる」


 それだけ言うと、エルメダはふっと姿を消した。


 とりあえず体を起こしてもうちょっとまともな所で休もうと思ったが痛みが酷過ぎて体を動かすのが辛い、全身の筋繊維がボロボロなんだろうなと思った。


『何しようとしてるの?』

「いや、背中がゴツゴツしてるから休みにくくて、もうちょっとまともな所でとね」

『そっかそっか、でも少し休めば難なく動けるようになると思うよ』


 こんなにも体を動かすのがきつい状況なのに?


「何か理由が?」

『戦神様の加護があるからね、戦いで出来た怪我に関しては普通にできた怪我よりも早く回復するよ』


 人によって“早く”の感覚が違うからな、とりあえず目を閉じてゆっくりした。


 どれくらい経っただろうか、気づけば寝ていたようだった。


 少しでも動けるならと体を動かすと痛みが全くなかった。“ん?”と思いながら体を起こしてみた。


 立ち上がってみると色々な動きをしても痛みが全くなかった。どれだけ寝たんだろうと思った。


「自分どれくらい寝てた?」

『ん~10分くらいじゃないの?』


 そんな短時間で筋肉痛と思しき症状が治まるか?と思ったがヒスイが言うなら本当の事なんだろう。


「そっか」

『うん、直人の身体引き締まったよね』


 自分の腕やら足を少し触ってみたが確かに無駄な脂肪が無くなっている気がした。


 体を動かせるようになったので、十文字槍とチャクラムを作ろうとして思った。


 ネア様から頂いた神刀は今エルメダに預けている事、そして魔法適正が無しになっているせいで熱魔法が使えない事に気づいた。作れないじゃん!


 ファイヤーピストンに薪や炭なんかはアイテムボックスにあるし炉があればできるな、どうやって炉を調達するかだ、レンガがアイテムボックス内にある事に気づいた。


 レンガを大量に量産し、出して組み立ていく、レンガとレンガの繋ぎになる粘土代わりになる物があるか?無いな一旦諦めよう、そもそも持ってるレンガが耐熱レンガじゃない気がした。自分で武器作れって事なら、せめて熱魔法だけは返してほしいと思った。


 武器作りを諦め、服についた土を払っていると、エルメダが現れた。


「もういいのか?」

「武器作りたくても熱魔法が無くて作れないんですが……」


 エルメダは、自分が炉を作ろうとして並べたレンガや薪などを見て。


「あぁなるほどな、熱魔法だけは戻してやろう、どうする?このまま再戦するか?」


 武器作りは次の休憩でやればいいかと思い。


「おねがいします」


 そう言うと、再び黒い人型が現れた。

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