第160話 前例、シャンソンの街
セージャに着いた翌日は、セージャの人達の診療から始め、午後は農作業を手伝い過ごした。
そして、翌朝、ユーロンス攻略に向かうことになり、リースと狼衆、そしてセージャの村人の大半がユーロンス攻略に協力してくれることになった。
問題はあの見た目がシャボン玉のような虹色の結界だ。
ユーロンスまで来ると仮説住宅地で半蔵達が住民達と何やら楽しそうに話をしていた。情報収集は問題なくできているようだった。
リンクル騎兵やセージャの住民、情報収集担当していないリース達狼衆でユーロンス入口を囲むように展開した。
『ん~もしかしたらなんだけど、手に負えない事態になるかも……』
展開し状況の変化を待っているときヒスイが物騒な事を言った。
『なんで?』
『んとね……、この結界そして昨日の悪魔憑きの人達、行方不明のリンクル族ってのがね……』
何かあるのだろうか?ユーロンスの街が見えて来た時に“ぇ……”とか気になること言っていたし、ユーロンスから出てくる兵・市民が皆悪魔憑きだった時“昔おんなじことがあったよ……”と言っていた。
『なにか前例があるの?全員悪魔憑きってとき前例があるような感じだったけど』
『うん、シャンソン遺跡の話覚えている?』
ヴェンダル王都北側に広がる湖の中にある湖底遺跡の事は覚えている。
『湖底遺跡の事だよね?』
『そう、人狼騒動始まりの地、で終焉に近い地』
『それがどうしたの?』
『その終焉を迎えるとき、シャンソンの街と全く同じ状況なんだよね』
たしか、天神エルメダにメテオで滅ぼされた所だったと記憶しているが……。
『何があったのかな?』
『私はまだ大精霊として過ごしていなかったから、間接的に得た情報なんだけど、この結界は悪魔がやる結界なんだ……』
何やら物騒な話が出てきた。
『エルメダ様に滅ぼされたんじゃないの?』
『どうなんだろうね、とりあえず、当時の話をするよ。シャンソンの街に引きこもった人狼たちが最後にやった事は、シャンソンの街の結界を張り、戦える者全員が悪魔憑きになって最期の抵抗をした事なんだ』
確かに、この時点ではユーロンスの結界と、昨日自分たちに向かって来た者達は一致する。が、ヒスイのセリフの中に“戦える者”と言っていた。逆に戦えない者達はどうなったのだろうか?
『戦える者じゃなく戦えない者達は?』
『多分贄になった……』
贄?生贄?何の?悪魔召喚か何かのか?
『贄ってもしかして悪魔召喚とか?』
『そう、悪魔召喚と言うべきなのかな?むごい殺され方をされたことによる負の感情が生まれ、それを繰り返したことにより負の感情が結界の中溜まり町の中に巨大な悪魔を召喚したんだよ……、もし半蔵君達の聞き込みでリンクル族達が、むごい殺されていたらその可能性は大かな……』
そうか、戦えない者達=拉致されたリンクル族達か、これでシャンソンと同じ様な状況になっているのか、巨大な悪魔か……。
『街の中に巨大な悪魔が召喚されるとどうなるの?』
『そうだね、ネア様達が数百年かけて終わらせた。人狼やヴァンパイア、グールなんかの過去に起きた騒動がまた世界のあちらこちらで起きるかもしれないね』
人狼騒動の再来だけではなく他の問題も出てくるのか。
『手に負えない状況になるってのは?』
『君の刀じゃどうすることも出来ないさ、その刀で空気を殺すことが出来ないようにね……、悪魔は実体無き身体なんだよ、それが君と同じサイズの人なら一刀両断で終わるけど、とても大きな存在だと斬りきれないよね、そうなるとすぐに回復されちゃうの、シャンソンの時は則宗様も居たけどそんな状況だった。斬っても斬っても戻ってしまうの』
もしヒスイの言う事が本当なら、この状況詰んでない……?
『で、どうするの……?』
『ん……、方法は一つあるけど、一か八かかな……、当たればいいけど、外れる可能性の方が高いかな』
何その神頼みの状況って……。
『その方法とは?』
『召喚魔法さ』
召喚魔法か、どんなものが出てくるのだろうか?
「ねぇ、直人ちょっといいかな?」
「わっ」
「何でびっくりしてるのさ」
ヒスイとの会話に夢中になっていて、リースが近くに居ることに気づかずビックリした。
「で、どうしたん?」
「うん、兵士達から聞いたんだけど、リンクルの子達絶望的かも……」
あ~嫌な予感。
「どこかに集められてむごい殺され方をされていたとか?」
「何で知っているの!?聞いてた!?」
「いや、聞いてないけど、ヒスイとちょっと話しててね……、でどんな殺され方を……?」
「拷問だって言うのも嫌になる位のむごい殺され方をね……」
「そっか……」
はぁ……、ため息しか出ない、この状況シャンソンと同じことが起きているって事が確定した瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます