第159話 仮設の街とセージャ

 ユーロンスの外での悪魔憑きを討伐し終わった後、蘇生出来る人は蘇生し、ゾンビと蘇生できなかった死体をリースが火魔法を使い高熱で燃やし骨も武具も何も残らない位燃やし尽くしていた。


 片付けが終わるとリースと共に、ユーロンスの街入口の門まで近寄って行った。


「この結界で入れないんだっけ?」

「そうなんだよね~触ってみて、キュッキュって感じなんだよね」


 リースに言われた通り虹色に輝いている結界とやらに触れてみた。


 陶器のお皿と触っているようなキュッキュッっといった感触だった。


 結界越しに中を見ようと思ったが、何も見えなかった。


『ヒスイ何かわかる?』

『ん~街の中は見えないかな……』


 おそらく神刀なら結界を斬ることが出来るだろうけど、今は止めておこう、


 問題は街に入れない人達をどうするかだが、一緒にセージャまで連れて行くか?


「リース、この人達もセージャで受け入れ可能かな?」

「無理でしょ、ざっと見ただけでも5000人以上いるでしょ……」


 無理か……、仕方ない魔物達に襲われてもあれだし、ユーロンスと街道を挟んで反対側の平原に小さな街でも建てるか……、街道から100m程離れた場所に移動し、地面に手を付け、ガイアコントロールを発動させ、草木を抜き石や岩を1カ所に集め整地していく、それと同様に地面にある土を使い高さ5m程の土壁を直径5kmで設置し、残す家は街に戻れるまでの期間なので適当に土づくりの家をボコボコ~っと作っていった。


 土づくりの家じゃなく、ログハウスの方が良かったかなとか思いつつ、帰宅困難者?を案内した。


「ユーロンスに入れない人はこちらへどうぞ~人数分あるか分かりませんが~一応仮住まいの家があります~」


 街の外にあふれていた帰宅困難者を仮設の住宅に案内していった。


「そういえば、信仰心を斬ったって言ってたよね?」

「うん、リライアンスフラワーの依存もだけど」

「ふ~ん」


 リースは何かを考える素振りを見せた。


「ちょっと離れて良いかな?」

「いいけど」


 仮説の街から離れるとリースは上空に向けて5発の火の玉を同時に放っていた。同時に放っていたのにも関わらず、上空で時間差で爆発していた。


 上空に魔法を放った後、リースが戻ってきた。


「何やってんの?」

「半蔵達を呼び寄せたんだよ、この街の事は私達に任せてくれないかな?」

「ん?なんで?」

「信仰心無くなってるなら、聞き込みで情報収集できるかなとね」

「なるほど」


 たしかに、教団の縛りで情報を漏らせなかったなら信仰心がなくなった今なら聞き込みだけでも十分成果をあげられそうだ。


 帰宅困難者に対して食糧とタオルケットと枕等配っていると、半蔵達がやってきた。


 リースと何かやり取りした後、数名自分の所にきた。


「兄ちゃん替わるよ」

「頼んだ」


 大量のタオルケットと枕、食料を倉庫代わりの所にだしていった。

 

「直人、セージャにいこう」


 倉庫に各物品を出していると背後からリースが声をかけてきた。


「了解」


 リースが爆発魔法を放ったにもかかわらず、兵士が出てこない今なら後を付けられることもなくセージャに向かえるだろう。


「セージャまで案内して」

「ついてきて」


 リースの後について森の中にはいり、道なき道を進み岩場などを越えた先に山の頂上があり、リースが立ち止まった。頂上からはセージャと思しき里が眼下に広がっていた。


 セージャは隠れ里と言っていたが、雰囲気がなかなかよかった。田畑が広がり、藁を束ねた屋根の木造家屋が複数並んでいて、3つの山に囲まれ、そのうちの1つから川が流ていた。そして1か所はちょっとした崖がありその下には海が広がっていた。秘境中の秘境とか言えそうな場所だった。


「なかなかいい雰囲気だね」

「でしょ~私のふるさともこんな感じだったんだよね~。崖下に行くには、あそこの山の麓に洞窟があるから、それを降りて行けば海に行けるんだよ」


 リースが奥にある山を指をさして教えてくれた。機会あれば探検してみたいと思った。


「へぇ~」

「里の中央に村長の家があるからそこに向かおうか」

「ほいよ」


 山を下り、ようやくセージャに到着した。中央にある村長の家と思しき家の前で、ヴィンザーの前に跪いている1人のリンクル族がいて何かやり取りしているようだった。


「あの人が村長?」

「うん、すごくいい人だよ、私達は拠点として家を借りているお礼に秋津で身につけた技術を半蔵君たちと一緒に学んでもらってるかな」


 秋津で身につけた技術を?

 戦い方とか忍びとしての技術か何かだろうか?


「秋津で身につけた事って諜報活動のしかたみたいな?」

「それもあるけど、あっちの山の中腹に野生の綿花がいっぱいあるんだけどここの人達って綿花を活用してなかったんだよね~、だから綿花活用法なんかをね~」


 綿花という単語が出てくるとは思わなかった。


「綿花を糸にする技術を持っていたの?」

「もちろん、私が居た里じゃ、綿や絹の産地だったからね~糸車なら里を出るとき、親に持たされたからね~」

「そっか」


 ヴィンザー達の元へ近づいて行くと、2人ともこちらに気づいたようで、自分に視線を向けてきた。


「御使い殿遅かったな」

「敵兵の数がちょっと多かったので」

「そうか、活路を見出してくれた事感謝する」

「いえいえ、出来ることをしただけです」

「そうか、村長と話したが、明日1日休み、明後日の早朝ユーロンスに向かおう」


 1日の休日を挟んでユーロンス攻略か、中の情報が全くつかめてないのだがいいのだろうか?


「わかりました」

「あちらの方にある広場を好きに使って構わないそうだ」


 ヴィンザーが指さした方向には多くのリンクル兵がいてテントの設営等をしていた。


「了解です。自分も手伝ってきますね」

「頼む」


 リンクル兵達がいる広場まで向かう途中、一宿一飯の恩義というわけではないが、場を借りたお礼に自分も何かしようかな?リースは秋津の技術って言っているし、自分に出来る事、診療と畑の作物育成位か、後は仮設の街にも行かないとな。

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