第155話 敵陣奇襲実行
作戦を伝えたのち、火魔法が得意な10人を率いて敵陣に向かった。
敵陣から300m程離れている所まできた。
「よっし、全員狼から降りて、狼たちはそれぞれの影に」
小声で伝えると、皆狼から降り、狼たちはそれぞれ乗り手の影に隠れた。
「それでは全員火魔法をありったけ陣中に!」
「「「「「了解!」」」」」
自分は燃えやすくするために、大気魔法と水分魔法を使い、辺りの湿度を一気に下げた。
ファイヤアローや、ファイヤボール等様々な形状の火魔法がリンクル族達の周りに現れた。自分も弓を構え、モリソンで預かった火矢専用の矢を近くの火魔法で着火し弓に番えた。
「よっし!撃てっ!」
自分も行動速度上昇を使い、火矢を次々と敵陣のテントをめがけて放っていく、リンクル族達も、各々火魔法を連続して敵陣に打ち込み始めた。
「敵襲‼」
と敵陣の中から大きな声が聞こえた。
「まだ!撃って!ぎりぎりまで引き付けてから騎乗ね!」
「「「「「はい!」」」」」
今、後退したラ意味がない、ぎりぎりまで引き付けなければ、敵陣から1人2人と姿を現し始めた。
自分は可能な限り出てきた兵を射抜いて行く、もっと大量に出てきて!
「いたぞー!リンクルの奴らだ!」
そんな声がしたのち、バラバラとだったが沢山の兵達が出てきた。
2人のリンクル族の兵が、自分と同じように出てきた兵の対処をしようと、敵兵に向けて魔法を放ち始めた。
「敵兵は自分にまかせて、陣中にお願い!」
「「はい!」」
ぞろぞろ出てきた。
「よっし後退!」
追いかけてくる敵兵に背を向け、伏兵が居るポイントを目指し走り出した。
リンクル族達は子どもと同等な身体の為走るのが遅い、本当に遅い……すぐに追いつかれそうになった。
「騎乗!」
それぞれの影から狼が飛び出し、リンクル族の子達が狼に騎乗し、後退を継続した。
『ヒスイどれくらい来てる?』
『思った以上に釣れてるよ5~600くらいいる』
思っていた以上に釣れたな。その半分が釣れればいいと思っていたが。
しばらく後退を続け大分離れただろうと思う所でヒスイに確認した。
『最後尾は陣から離れた?』
『うん』
なら次の手だ、走りながら音のなる矢を上空に放った。
自分が放った矢は、ピューー―――――――――と高い音を立てて上空に飛んでいく、狼達による敵陣襲撃の開始だ。
自分たちも、相手を引き離しすぎない程度に引っ張り伏兵の居る所へ誘い込みが成功した。
「よっし!全員で攻撃せよ!」
それと同時に気の影からリンクル兵がそれぞれが得意な魔法を、教団・帝国兵に浴びせていき、後退していたリンクル兵たちも反転して、敵兵にそれぞれの得意とする攻撃をした。自分と狼衆は敵兵に襲いかかった。
敵軍の将と思しき人も数人こちらに釣れている辺り、うまく行っていると思う。
しばらくした後周囲を見ると、立っているのはリンクル兵と狼衆達だけになった。そして敵陣へ逃亡する敵兵がいた。
「負傷者はいるか!?居るなら自分の元へ!それ以外は全員騎乗!」
しばらく待ってみたが、だれも自分の元に来なかった。
狼衆はそもそも絶対健康を持っているから怪我してもすぐに回復するし、リンクル族は隠れて魔法だからけが人は少ないはずと思っていたが、怪我人は居ないようだった。
「よっし、敵陣へ向かうぞ!」
「「「「「お~~~!」」」」」
逃亡する敵兵の後を追って敵陣へと向かった。
「森に火を!」
多くのリンクル兵が、森に向けて火魔法を放ち、森に火が着いた。みるみると火が広がっていった。
そして自分は、2度目の音のなる矢を上空に放った。
自分が放った矢は、再びピューー―――――――――と高い音を立てて上空に飛んでいく、今回は、狼達に敵陣から撤退し、モリソン方面の街道で待ち伏せの合図だ。
これで相手方ば、火に包まれた森、自分たちが居るダロナ側の街道、狼たちが居るモリソン側の街道、そして川という完全に包囲された状態に陥った。
敵陣に踏み込むと、我先にと船に乗り込もうとする兵と、森の火やテント等の火を消そうとする兵、そして先ほどまでいた狼たちにやられ満身創痍な兵と混沌とした様子だった。
リンクル兵達はそこら辺にいる敵兵に魔法を放ち始めた。
船の乗り込むのを失敗し川に落ちる敵兵たちや狼たちが居るモリソン方面へ逃げ狼たちに襲われる兵、リンクル兵による魔法で命を絶つ兵が溢れた。
そして流れ弾ならぬ流れ魔法で船に火が着き、船が沈没した。沈没した船に乗り込んでいた多くの敵兵達が海の藻屑ならぬ川の藻屑として消えた。
「よっし!勝鬨を上げよ!」
「「「「「お~~~~~~~~~~~~~~」」」」」
リンクル兵たちが喜びあっていた。
自分は森についた火を消すために、大気魔法をつかい、森の中の酸素濃度を下げ、二酸化炭素の濃度を上げて火を消した。
その後、リンクル兵達と一緒に使えそうな物資は回収し、敵兵の遺体は川に流し後処理に追われ、気づけば夜が明けていた。
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