第146話 6カ月後と開拓作業

 ペンジェンのリンクル族救出後、半年がたち、季節が初冬から初夏になった。


 ヴォーネス国内の26ある都市のうち、首都ヴォーネスを含む22の都市の解放が終わった。


 手順はペンジェン同様に、攻略する都市へ自分が潜入しリンクル族の救出し、リライアンスフラワーとエノオンドクダミの粉末を入れ替え、街に居る市民と駐留する兵士に神刀で戦意と・クラリス教団への信仰心を斬る。この3つの仕事をするだけになった。


 エノオンドクダミの粉末は、ヴィンザーにクラリス教団の事情を説明したら、ペンジェン攻略直後、ヴィンザー達と共にエノオンに行き、現地在住のリンクル族達によって大量に生産されるようになった。


 解放された街に、冒険者ギルドや商業ギルドが入り、活気があふれ始めていた。


 残り4都市だが、ヴォーネス共和国を南北に縦断する大河により進軍が阻まれている状態だった。


 そのためヴィンザーの指示で、教団の動向に注視しつつ、国力の復興に注力することになった。


 内政重視の時期は、解放済みの街へ医者として巡回する事と、エノオン湖から流れる川を中心にペンジェン、エスティア付近までの開拓を手伝うことになった。


◇◇◇◇◇◇


 今日は多くのリンクル族達と一緒に開拓する日だ、目の前には木々が鬱蒼と生い茂っていて、街道200人を超えるリンクル族が居る。


「よっし!神様!みんな揃った!やってくれ!」


 ん?


「何で神様?」

「失った足を生やしたり、スキルを与えたりすることができるんだろ?神様以外に何がいるんだ?」


 ヴィンザーの足の件と、いつだっかシャドーウルフを譲ったリンクル族からの情報だろうか?それにしても神様に接するような話し方じゃないよな?と思った。


「御使いなのは事実ですが、神様じゃないですよ」

「そうか?まぁなんだっていいさ、リンクル族の俺達からしたら、あんたはこの国の英雄でもあるんだ」


 “そうだそうだ”等周囲のリンクル族達も同意していた。

 神様だったり英雄だったり……、ペンジェン以降の街は、兵も少なかった為に無駄な血を流さずに攻略していったが、リンクル族達を救出しただけで英雄とか、どうなんだろうか?


 まぁいいか、誰かの迷惑にならないなら気にしないでおこう、その場にしゃがみ地面に両手を地面につけありったけの魔素を森の中に張り巡らせていった。

 

 魔素を流せど流せど、絶対健康のおかげか体内の魔素が回復していく、どこら辺まで流せているのかが分からないが、ただひたすら地面に魔素を流していった。


『もういいんじゃない?かなり広範囲に行き渡ってるよ』

『そっか』


 自分の感覚だとどこまでいきわたっているのかが分からなかった。


 つぎはガイアコントロールで、草木を根から抜き、地中の岩や石を地表に出して、それらすべてを操作した土地の中央に集めた。


 ガイアコントロールを終えて前を見ると見渡す限りの畑になっていて右前方のはるか先に木々や岩が大量に集まっていた。


「こりゃ凄いな!やっぱあんたは俺らの神様だ!」


 その一言をきっかけに周囲のリンクル族が騒ぎ出した。


 正直自分自身も驚いている。鬱蒼とした森が広がっていたはずなのに、目の前には、遠くの丘まで続く畑という光景だった。


 リンクル族の騒ぎが収まりそうになかった。


「騒ぐのは終わってからでいいから、さっさと麦などを植えましょう」

「そうだった、それじゃ皆手分けして植えていくぞ!」

「「「「「お~!」」」」」


 リンクル族達が、1つ1つ丁寧に植え始めた。


 見ていて思った事、多分適当にばらまいた方が早い気がする、神の手を使って育成する際には暇を持て余しているドライアド達が手伝ってくれるだろうし、どうにでもなる気がしていた。


 子どもが200人横1列に並んで種植えする光景はなんだか、幼稚園とかの芋掘り大会みたいなほほえましさがあった。


 種植えは任せて、木々や岩などが集積されている中央に向かった。


 中央に着くとそこには大量の木々と様々な大きさの岩や石に雑草等があった。


 木々を残してすべての素材をアイテムボックスに入れた。


 木は、加工しやすいように、根の部分を切り落とし、枝を払い1本の丸太にした。


 次の木もやろうとしていると、ヒスイが声をかけてきた。


『ねね~同じ作業ならアイテムボックス内で一括で出来るのにやらないの?』


 ん?


『そんな便利機能があったの?』

『あれ?言ってなかったっけ?材料作りなら一括でやった方が早くない?』


 そもそも一括でやる方法があるって今知ったが?


『やり方は?』

『やったことのある作業なら、イメージすれば、アイテムボックス内にある物を一気に加工できるよ、けれど付与魔法とか、魔法を行使した加工はできないからね?』


 製品を作るのには向いていないが材料を作るのには向いている機能かちょっと試してみようと思い、周辺にある木々をすべてアイテムボックス内に入れた。


 枝払いと根の切り落としをイメージし、今度は収納した木々を目の前に出していくと……、すべての木々が丸太化していた。


『これは便利だな』

『でしょ~』

『もう少し早く教えてくれても良かったんじゃない?』

『いや~ごめんごめん、もう教えていると思ってた』


 思い返せば、一括作業をする必要があったシーンなんてあったかな?無かった気がした。


『いや、何かいい機能があったらまた教えてよ』

『オッケ~』


 目の前には何千本という丸太が積み重なっていた。


 リンクル族達の方をみると、まだ種植えをしている様子だった。


 アイテムボックス内に入れた大きな岩を取り出した。3m四方は有りそうだな。石像作れるかな?


 思い立ったが吉日という、リンクル族のお仕事もまだかかりそうだったので、エスティアに負けない神像を作ろうと思った。


『この世界の豊穣の神ってどんな神様?』

『フェンリル様だよ、メグちゃんのお母さん』


 ちび助のお母さんか、そうしたらちび助は真っ白だったから、フェンリルも体は真っ白なのかな?


『体毛が白い狼でいいのかね?』

『うん~それで問題ないよ~』


 狼か~ポーズはどうするかな、ぱっと頭に浮かぶのは、遠吠えするポーズ、お座りポーズかな?お座りの方がいいか、ポーズはそれでいいか、ならばさっそく取り掛かろう、行動速度上昇と、五穀豊穣と、決して壊れることが無いようにとイメージし大量に魔素を纏わせ岩を掘り始めた。


 木材とは感触が違うが、岩を掘りながら、都度必要なオリハルコンの彫刻刀を作り彫っていった。


 彫刻刀を作ったり、岩を掘っていると、突如ヒスイが声をかけてきた。


『行動速度上昇が限界突破したね~』

『そっか』

 

 どれだけ早くなっているのかは後で知れればいい今は集中して石像づくりをしよう。

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