第147話 豊穣の像と穀倉地帯

 フェンリル像を作りながら思った。

 木材なら失敗したところで、神の手で修復出来たが、岩となると修復が出来ない事に、かなり彫り進めてから気づいた。


 今更後悔しても仕方ない、このまま進めよう、手術をするよりは気を使わなくて済むので気楽に掘り進めていった。


 もう少しで完成って時にヒスイが声をかけてきた。


『リンクル族の子達の仕事が終わったみたいよ』

『そっか、教えてくれてありがとう』


 彫っていた手を止めリンクル族達が作業をしていた方向を見ると、確かに皆集まっているのが見えた。


 彼らの元に寄っていくと、大仕事をやり終えたからかみんなでワイワイはしゃいでいた。


 子どものように元気な奴らだなとか思いながら彼らに声をかけた。


「種植えお疲れ様、少し離れていてくれる?」

「おう、今度はあんたの出番だな」

『ヒスイお願い』

『はいはい~』


 ヒスイの返事をきっかけに、多くの緑色の光の玉が集まってきた。植えた種の上にふわふわと浮いているようだった。


 リンクル族が自分の後ろへ移動したのを確認した後、地面に両手を付け神の手を発動させた。


 すると先ほど植えた麦の種が芽をだし、ドライアド達のサポートを受けぐんぐんと成長していき、やがて小穂が出来、青から黄金色へ変わっていき収穫できる状態まで育った。


「あんた凄いな、一瞬で収穫できる状態になっちまった」


 リンクル族達は初見の為かすごく驚いていたが、自分は既にアキツ砦前でやっているからさほど驚くことは無かった。


「それじゃあ、麦の小穂を回収してもう一度やりましょう」

「あぁ、そうだな!みんなやるぞ!」

「「「「「お~」」」」」


 リンクル族達は皆一斉に麦畑に入って行った。リンクル族は元気いっぱいだなと思った。


 収穫に励むリンクル族達を見ながら、自分は再びフェンリル像作成に取り掛かった。あとは細部の調整をするだけだったので直ぐに終わった。


『ヒスイ効果はどうかな?』

『不壊と周囲の作物に対して豊穣効果があるね~』


 問題なくできているようだった。収穫作業中のリンクル族達の方を見てみると、彼らの作業はまだ続いているようだったので、川から水を流す水路を作る事にした。


 川の側まで来て思った。農作業なんてやったことないからどのよう水路を作れば効率良いのかが分からなかった。リンクル族の作業が終わってから確認しながらやればいいか、今やれる事は、改めて考え直し彼等の住処となるログハウス設置をしていくことにした。


 事前に聞いていた話だと、112世帯と言っていた。とりあえず土魔法で整地をしながら家を並べていった。


 家に畑に水路他は何が必要だろうか?収穫した作物の保管用の蔵か?作物保管用の蔵だと年中通して安定した気温を保てればいいのだろうか?


 とりあえず田舎の蔵をイメージしながら、壊れないようにと付与効果を与えながら土づくりの蔵をいくつか作ってみた。


 とりあえず当面の間は生活できるだろう、中央にフェンリル像、その周辺に商店等が建てられるようなスペースをあけ、その周りに住宅地その外に蔵を作った。


 自分もリンクル族達の元に行き、麦の収穫を手伝った。太陽もだいぶ傾いてきた頃、ようやく収穫が終わりを迎え、再度収穫した麦を畑にまいてく、今度は自分が適当に種まきをする姿を見せリンクル族達にも適当に撒くように依頼した。


 リンクル族達も各々適当に種まきを終えて自分の元に集まってきた。本日2回目の麦育成だ1回目よりも数十倍広い範囲に種まきをしている、ドライアド達もかなり数を増やして待機していた。少し神経を使いながら神の手を発動させ麦育成をした。


 1回目よりも広範囲で麦がぐんぐんと成長していく姿は圧巻だった。


「凄いな!1日で2回収穫!それも1回目よりも20倍近く多い収穫!」

「何年分くらいあるかな!?」


 年単位で持つ物だっけ?そんな疑問を思っていると。背後から声がした。


「お前すごいことやってんな……、こんなことも出来るのかよ」

「そうね……一瞬で育ってたね……」


 実際は1年も経ってないが、数年ぶりに聞いた声がした。


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