第130話 ペンジェンの街 囚われのリンクル族救出へと魔石の使い道
狼衆が街中にいる兵士掃討戦を行っている中、自分はどうするか、残っている子達といっしょにリンクル族救出するか、そう思いリンクル族達が居る建物を囲っていたアイアンウォールを解除すると、その瞬間残っている狼衆が、“キューン”など弱々しい鳴き声をだしながら後ずさりしていた。
なんで?と思ったが思い当たる節がある、異臭だ、建物内には人間である自分が辛いと感じるレベルの異臭が漂っていたことを思い出した。人間よりも嗅覚が鋭い狼衆にはつらいレベルだったのだろう、大気魔法を使い周囲の臭気を一旦消した。
「ごめんごめん、君たちはここで少し待ってって」
それだけ伝えると、ちゃんと伝わったのか?
周囲に居た狼衆が皆伏せ状態になった。
待って=伏せって伝わったのかな?そんなことを思いながら建物のなかに入った。
近くの扉からは異臭が放たれ、入るのを躊躇したが、ここで躊躇していては救出が進まないのも事実、ガスマスクなんかが欲しいなと思いながら扉をあけ瞬時に大気魔法を使い空気を清浄した。
これは1度だけじゃだめだな、大気魔法を継続的に使用し自分周辺の空気を常時清浄し続けた。
目の前には凄惨な現状が広がっていた。足の踏み場が見当たらないレベルで床の上にゴザを敷いたりすることもなくそのままの状態でリンクル族達が横たわっていた。それだけじゃない、見た限り全員が何処かしら皮膚が裂けたり痣があちらこちらに有ったりと見ただけでも尋常じゃないのが分かった。
これは酷いと思っていると、
「あんたはだれだい?教団の者じゃないようだが……」
入口近くに居た少女に声をかけられた。
「ヴィンザー様の命により皆さまを救出にきました」
「ほんとうかい!?」
それを聞いていた周囲のリンクル族がざわめき始めた。
「えぇ、エスティアは既にヴェンダル領となり、ヴィンザー様もそちらにいます。これから皆さんを1人1人エスティアに送り届けます」
「まっとくれ、私らは教団の兵隊さんが居ないとこの部屋から出られないんだよ」
なるほど、そのように命令しているのか、その面は問題ないはずだ、神の手で何とかしてしまえばいいのだから、問題は彼等の身体から放たれる臭いだ、このままじゃ狼衆が辛いだろう。
奴隷に関しては神の手で何とかなるのは実証済みだが、皮脂などの体の表面を覆う汚れなんかは対応できるかが不明だった。
最初に問いかけてきた女性で試してみよう。
「すいません、お嬢さんちょっと手を借りてもいいですか?」
「よしとくれ、お嬢さんと呼ばれるような歳じゃないよ、何をするのか知らんけども、これでいいかい?」
それだけ言うと、女性は手を差し出してくれた。
見た目が少女じゃ、年齢がいくつなのかが本当に分らない、女性の手を取りながらそう思った。
神の手を発動させ女性の身体をチェックしていく、痣や裂傷だけじゃなく身体の内部をチェックしていく過程でいくつかの臓器もダメージを受けていた。殴られたりしたことによる外的要因のものもあれば、加齢や普段の生活によるものも多々あった。
チェックが終わった後、奴隷にする呪いを含めて異常カ所の修復を行った。
そして皮脂やフケ等の汚れだが、どうにもできなかった。
「どこか痛い所とかはありますか?」
「無いねぇ……、腕にあった傷も塞がっている、それに奴隷紋までもが……」
「なら大丈夫そうですね」
「ありがとうね、ほんとうにありがとうね、こんなおばばの為に……」
女性は泣いてお礼を言った。この後どうするか、一旦は海で体を洗ってもらうか?服はどうする?
子供服なんて持ってないぞ、以前ヒスイが、持ち込んでいる物ならいくらでもコピーできると言っていた。ならばパーカー等の上半身に着る服を大量にコピーすればいいかな?
次は、どうやって海で体を洗ってもらうかだ、このまま港に出て海に飛び込んでもらうというのはダメだろう、泳げるものでも海の魔物の餌食になりうる、泳げない者は自殺するようなものだ、どうするか、プールの様なものを作るか?
「すいません、ちょっと離れます」
いったん廊下に出て地面に両手を当て、土魔法を使い地下に降りる階段を作り次に、男女別脱衣場とプール予定地にも男女別になるように間に壁を作った。
そして次に、リンクル族が流されないようにと、魔物避け、そして外から海水を引き入れられるようにと簡単な柵を設置した簡易プールのようなものを作った。
これでいいかな?脱衣場に移動し、男女それぞれの脱衣場にスウェット上、Tシャツ、パーカー、トレーナー等の大量の衣類を出した。
そしてプールの場所に移動しては行ってみると、膝位までの深さだ、これくらいなら溺れることもないだろう、地下エリアは大気魔法と熱魔法を継続的に使い、海水温と室内温をあげた。
ふと、設置魔法できないのかな?と思った。
『ヒスイ、質問なんだけどさ』
『うん?』
『この場に大気魔法と熱魔法を固定というか設置させることってできないかな?』
『ん~出来なくはないけど、魔石あったよね』
『うん』
『それを出してくれる?』
ヒスイに言われた通り、1㎤ほどの小さな魔石を出した。
『ちょっと待ってね』
『ほい』
ヒスイが魔石に触れてしばらくすると。
『これでいいかな、設置したい魔法をイメージして魔石に魔素を流し込んで』
言われた通り、特定の空間が暖かくなるようにイメージしながら魔素を流し込んでいった。
『これでいい?』
『うん、気づかない?』
『ん?』
『1度今展開している大気魔法とかをやめてごらん』
言われた通りに大気魔法を使うのをやめた。
『あたたかくない?』
『さっきまで魔法使ってたから余熱じゃないの?』
『んじゃ海水につけてみなよ』
言われた通りに海水につけると、魔石周辺の海水がぬるま湯?と思える位の温かさを持った。
『あたたかい……』
『消耗品だけど、そういう使い方も出来るよ』
『なるほど、どうやって作る?』
『空に近い魔石に魔法をイメージして流し込む』
なるほど、最初にヒスイが触れていたのは魔石の魔素を吸い出していたのか、理解した。
『からの魔石なんて存在するのかね?』
『するにはするかな?ドワーフ族やエルフ族は魔石を使った魔道具を作ってるよ、人族はその技術を知らないみたいだけどね~、んで魔道具に入れていた魔石の魔素をぎりぎり迄抜くと空の魔石になるんだよ、全部使いきっちゃうと砕けて消えちゃうけどね、そのぎりぎりまで抜いた魔石ならそうやって使えるよ』
『この小さな魔石でどれくらい継続するの?』
『ん~1日位じゃない?』
全員が体を洗うまで持つかな?と思いつつ、同じような大きさの魔石を複数取り出し、ヒスイに魔素を吸ってもらい、大気魔法と熱魔法を込めた魔石をそれぞれの脱衣場とプールエリアの壁に埋め込み、熱魔法だけを込めた魔石をプールエリアの底のあちらこちらに設置した。適正はないが光源が無いと困るだろうと思い、照明をイメージして魔素を流し込んでみると、光を放つ魔石が出来た。それらを壁や天井に埋め込んでいった。
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