第117話 エスティアの街 救出へ
自分の前で跪いた少女に対して困っていると、一緒に来た少年が少女の肩に手を置いた。
「姫様、おやめください、使い様もお困りの様子ですよ」
姫様?どこかの姫様なのか?とか思っているとヒスイが教えてくれた。
『彼女の名前リコリス・ヴォーネス、ヴォーネス王国だったころの王族の生き残りだね』
『ヴォーネス王国だったころってなに?』
『エスティアは違うんだけど、ペンジェンから東の地は60年ほど前までヴォーネス王国だったんだよ、それをクラリス教団がクーデターを起こしたんだよね、そしてその際当時の王は処刑、当時の王は彼女のお爺さんだね』
教団による国乗っ取りか、ここで助ける選択をするととてつもなく面倒な事になりそうだと思ったが、シモンズとのやり取りの中で創造神ネア様に使わされたと言っちゃった以上後に引けない状況になっていた。
『もしかしてなんだけど、以前リンクル族の話をしてくれてたよね?』
『うん、この子達皆リンクル族だよ』
確かに、見た目が皆3~5歳位の可愛い盛りの子どもの姿だった。ロリ・ショタコンなら狂喜乱舞しそうだなと思った。
とりあえず今は、自分の軽率な発言を恨みつつ彼女の力になるしかない気がした。
「リコリスさん頭をあげてもらえませんか?やれるだけの事はやりますけどあまり期待しないでください、ネア様に使わされただけの人間なのでやれる事は限られていますから」
そう言うと、リコリスはハッと頭を上げ自分を見つめた。
「どうして私の名前を?あなた鑑定を持っていませんよね?」
あ、余計な事を言った!しかもこの人鑑定持ちか!
これ以上墓穴掘らないためにどう対応すれば!?
「それ位は?」
「なぜ疑問形なんですか?」
なんか、喋れば喋るほどボロが出そうな気がした。
「気にしないでください、とりあえず現状を教えてください」
「はい、私たちは……」
それからリコリスに教えてもらった事は、
エスティアの街は元々ヴェンダル王国領だった為町全体が非道な扱いを受けている事
非道な扱いを受けている為町全体がレジスタンスの様なものだという事
各町のレジスタンス達とは繋がりがあり、出入りする商人が連絡役を買ってくれている事
町全体が飢えや病に苦しんでいる事
当然治療してくれる町医者も居なければ薬を作る錬金術師も居ない事等色々な事を聞いた。
「ヴェンダル王国の騎士団がきたら受け入れます?」
「もちろんです!」
街の調略は必要ないことが判明した。
問題は、この街の人々の病と飢え、街の外に居る兵士と2国間の休戦協定だろう。次いで湾の対岸にあるペンジェンの街に駐留する1万の兵だ、この問題をどうするかだった。
「とりあえず、街の人達の飢えと病は何とかしましょう」
「ほんとうですか!ありがとうございます!」
自分のアイテムボックスにある食材で何とかなるだろうけど1人で街全体の配給はやれないな……
「食材を出すので、食事作りしくれません?」
「それくらいでしたら!」
「お願いします。その間自分は兵達について手をうちます」
食材を出しながら色々とこれからの事を考えた。
まず2国間の休戦協定は、街の外に居る1万の兵達に破ってもらおう、その為には、この街に居る将を動かさないとだ、それと、トライベッカとオーレリアに事前に通知する必要があるだろう。
エイダに手紙を渡し、オーレリアからトライベッカの要人に伝えてもらう必要があるか?
「あの~、大きな鍋とかありませんか?」
大きな鍋が必要な状況ってなかったからなぁ、仕方ない、急ぎ銅鍋をつくるか、そう思い、アイテムボックスから、ドザズトアダンジョン産の銅塊をだし、行動速度上昇を使い急ぎ作っていった。
「火もない所で鍛冶するんですね……」
「自分の得意魔法の1つは熱の与奪ですからね」
「便利そうですね」
「結構便利ですね」
やり取りをしつつ、5個の鍋を作った。元教会の瓦礫を使いかまどを作った。続いて拠点づくりの際に回収した木々を出し、がっつり乾燥させ薪を作った。
鍋に張られた水を沸騰させたのち、リコリスたちに後を託した。
次はオーレリア宛の手紙を書いた。3日後、拠点へ兵を向かわせる事、トライベッカにも海上から兵が向かう事、そしてその侵攻で、ヴォーネスが休戦協定を破棄したことにしてほしいという事にしてほしいと、上記の事をトライベッカにも伝えてほしいという事も記した。
セリエについている2匹を使えばすぐにトライベッカに行けるだろうという事も記した。
「エイダ」
「はいなの~」
「こいつを姫様に、あと、魔物衆に城内に入るようにと、3日後敵が攻めてきたらそこから出て迎え撃てと伝えてくれる?」
「わかったの~」
それだけ言うと、消えるように居なくなった。縮地でも使ったかな?
次は、将に3日後出陣させるように促さないとか、どうやって出陣させるか考えないといけなかった。
「リコリスさん、この街の中にクラリス教団の将が居ると思いますがどこにいるか分かりますか?」
「領主邸近くの屋敷に集まっています。ちょくちょく領主邸に顔を出していると聞いています」
「領主は味方ですか?」
「はい、一番の味方です」
領主邸か、リースがメイド長として潜入していたのを思い出した。
『ヒスイ、リースに伝言を、近いうちに領主に会いたいという事と、領主が反クラリス教団かどうかの確認を』
『OK』
この街の配給を街の外にいる兵達に悟られぬようにしないとだな、大気魔法を使い匂いの元となるものを消した。
「街中に兵は居ないんですか?」
「港の北側にある倉庫に600人程います」
配給するとなると人が集まるから異変を察知したら確認しに来るな、土魔法で壁を作って閉じ込めるか?とりあえずここに来れないようにしたいと思った。
『リースから返答きたよ~領主は創造神教で反クラリス教団だって、あと接触は今からでもいいみたいよ、ただし裏口から来るようにだって』
接触して問題なさそうだった。
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