第103話 模擬戦開始

 イヴァンが王の近くに移動すると、イヴァンと同じデザインの鎧を着た6人の騎士達が各軍団の陣の近くに移動した。


 あの人たちは?と思っているとオーレリアが教えてくれた。


「あの人たちは、イヴァン将軍の直属の部下で模擬戦の審判役だよ」

「そうなんですか、元々どこかの騎士団に居たんですか?」

「イヴァン将軍が戦地で拾って来た子ども達だって」


 イヴァンの弟子と言った感じなのか?

 戦争孤児を拾ってきて育てたのだろうか?

 6人の騎士を見ても20前後の若者に見えた。


「そろそろ空に魔法が打ちあがるよ」


 オーレリアがそう言った瞬間6方向から火魔法が打ちあがり、各軍団に動きがあった。

 もしかして開戦の合図だった?


「ナット君もう始まってますよ~いかないんですか~?」


 いつの間にか横に居たのはオーレリアではなくセリエだった。


「あぁ今のが開幕の合図なのか」

「そうですよ~っせい~」


 自分と会話しながら、チャクラムをこちらに向かってくる人達に向かって投げた。

 結構距離あるよなぁとか思いながらチャクラムを見ていたが思っていた以上に遠くまで飛び、先頭にいた3人にあたり姿を消した。


「これ凄いですね~よく飛びますね~」

『投擲スキルと戦神の加護のお陰だろうね』


 戻ってきたチャクラムをキャッチしまた別の方向に2つ同時に投げていた。

 セリエに任せて大丈夫そうだな、自分は第1軍団の長を誘拐してくるか、セリエのチャクラムの攻撃軌道上に入らないように、神刀を抜刀し行動速度上昇と縮地を使い第1軍団の陣に突っ込んだ。


 第1騎士団は全員が盾を持っているが、神刀の前には意味をなさないただの板と化していた。ここで気づいたのは斬った盾の残骸は持ち主が消えてもその場に落ちていた。斬った人は戻っても斬った物は戻らないことを知った。そういえばリースの刀もそうだったと思いだした。

 はじめはバラバラな動きだったが直ぐに隊列を組み常に3人で自分を囲んで後方から魔法で対処しようとしてきた、その辺はさすがエリート集団と言ったところか?

 時々魔法の斉射が飛んでくるが避けるなり切り落とすなりして対応し、自分を囲む連中には斬撃で対処していった。


『ナット後ろ、いっぱい来たよ』


 20人程消したところで他の騎士団からの攻撃組が第1騎士団に接近していた。

 鎧を見ると第2と第3騎士団の連中か、同盟を組んでいるのか?近くに居るのに攻撃していなかった。

 

 いったん第1騎士団の陣を離脱し、第2騎士団の陣に向かうことにした。


 途中辺りを見渡すと、第6騎士団の陣前には第5騎士団の攻め手がいたが、セリエが居るから大丈夫だろうと思った。

 第4騎士団は最初から動きがない?全員が待ちの陣形なのか?


 第2騎士団の陣まで来ると30名そこらしかいなかった。防衛に人を割かないとか悪手な気がしたが、第3騎士団と同盟を組んでるならそんなものなのか?


 第2騎士団の陣に突っ込み、守り手たちを斬っていくと突如周囲に声が響いた。


「シャルル王子討ち死に!第2騎士団退場!第6騎士団に50ポイント!」


 いつの間にか王子を斬っていたらしい、皆同じ鎧で兜を被っているから分からなかった。


 第3騎士団の陣に向かっていると再び周囲に声が響いた。


「バール団長討ち死に!第5騎士団退場!第6騎士団に50ポイント!」


 いつの間にか第5騎士団が総力を挙げて第6騎士団に望んでいたらしい、自分がいなくても第5騎士団撃退するとは思ってなかった。


 これで残すは第1騎士団、第3騎士団、第4騎士団と我が第6騎士団の4つになった。


 気を取り直して、第3騎士団に向かっている途中第4騎士団に動きがあった。第4騎士団の一部が、第6騎士団方面に向かっていた。


 さっさと第3騎士団を討伐して、第4騎士団の攻め手を背後から強襲するか、

 第3騎士団の陣に向かい、連続縮地で守り手たちを斬っていった。


「グラ団長討ち死に!第3騎士団退場!第6騎士団に50ポイント!」


 残すは第1騎士団、第4騎士団か、第1騎士団の方を見ると、大して数減ってなかった。第2騎士団と第3騎士団に攻められたというのにさすがエリートなのか?


 第4騎士団の攻め手達を背後から強襲しようと思ったが、セリエのチャクラムの餌食になり既に壊滅状態になっていた。


『第4騎士団の弓兵はなにしてたの?』

『第4騎士団の弓よりも、セリエのチャクラムの飛距離の方が圧倒的に長いからね近づかれる前に命を狩られた感じだね』

『なるほどね、第1騎士団と第6騎士団でやり合った場合どうなると思う?』

『ん~第1騎士団の魔法が厄介だよね~セリエのチャクラムよりも、第1騎士団の魔法の雨の方が辛いんじゃないかな?』


 第4騎士団の陣を見ると、攻め手が壊滅状態になっている為か、ほぼ全員で第6騎士団に向かっていた。

 自分の存在忘れてない?そんなに手薄になったらと思ったが、第4騎士団の件はセリエに任せて第1騎士団の陣に急いだ、自分だったら、第4騎士団を相手にしている所を横から魔法で攻撃すると考えたからだ、案の定、一部の盾を持ったロイヤルガードと宮廷魔道師全員が第6騎士団に向かっていた。


 第1騎士団の攻め手の横に突っ込もうとしたが、ロイヤルガード達に自分の前に展開し、阻まれたがお構いなし、ダンジョンの時に身につけた行動速度上昇からの縮地ドロップキック!


 すると勢いで後ろに吹っ飛んだロイヤルガードの巻き添えになった宮廷魔道師が数名消えた。


 そりゃ鉄の塊が勢いよく飛んで来たら骨折とか打ちどころ悪いと死ぬよねと思った。

 態勢を整えられる前に斬っていき第1騎士団の攻め手を壊滅させ、第1騎士団の陣に向かい団長と思しきロイヤルガード以外を斬って退場させた。


「君強いね、どうだろう?第1騎士団に来ないか?」

「断る!」


 縮地を使い背後から頭部に触れ神の手発動し意識を奪った。担ごうと思ったが鎧のせいもあって思っていた以上に重かった。仕方なく鎧の首部分を掴み引きずりながら第6軍団の陣に戻ろうとしたとき、


「第4騎士団全滅!第6騎士団に50ポイント!」


 この時、模擬戦会場内には、意識を失っている第1騎士団団長と第6騎士団のみになっていた。


「現時点をもって第1騎士団団長捕縛と見なし、第6騎士団100ポイント!第6騎士団合計300ポイントで最優秀騎士団!そして最優秀騎士は第6騎士団所属のセリエ単騎で600人以上の撃破見事!」


 模擬戦が終わったらしい、とりあえず目標だった第6騎士団の優勝に終わったのは良かった。

 セリエも弱く頼りない存在じゃなく最優秀騎士になれるほどの強者として周囲に認められたならそれもよかった。

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