第104話 模擬戦後のエキシビジョン

 第1騎士団団長の鎧から手を放し、第6騎士団の陣に戻ると、セリエがみんなに囲まれていた。


「セリエすげーじゃねぇか」「セリちゃん強いね」等様々な賞賛を受けていた。


「セリエ、おまえその武器はどうした?」


 レオニダスから質問をしていた。


「ナット君が用意してくれたんですよ~」

「そいつは付与付きのオリハルコン製だぞ」

「ぇ!?」

『レオニダスは鑑定持ちだからね~そりゃばれるよね~』


 周囲の目が自分に向けられた。


「ナットはオリハルコンをもっているのか?」

「それなりに?」


 大量にある、そりゃもう大量にある。


「なぜ疑問形かわからんが、セリエの武器はナットが作ったみたいだが、鉄やミスリルでも付与できるのか?」


 魔素を使いながら作ればいいだけなので出来ると思った。


「出来るんじゃないですか?」

「出来るのか」


 これは第6騎士団の装備制作依頼でもくるのかな?

 と思っていると、レオニダスと自分の間にオーレリアが割って入ってきた。


「ハイハイ、その話はそこまで、この後イヴァン将軍とナット君の一騎討です。既に将軍の方は準備出来てるようなのでナット君も準備してくださいね~」


 中央に目を向けると、イヴァンが地面に大剣を突き刺しこちらを見ていた。


「これより!第6騎士団の新人ナットとイヴァン将軍の一騎討を行う!今回の一騎討は将軍が先日入団した新人の実力を知りたいということで組むこととなった!ナット前へ!」


 行動速度上昇を極めているなら油断禁物さっさと終わらせてようと決め中央に向かった。

 

 中央に着くとイヴァンに向かい一礼をした。


「よろしくお願いします」

 

 この世界に来ても武士道精神は忘れてはいない礼に始まり礼に終わる1対1でやるなら一番大事にしている精神だった。


「秋津の侍らしいな」


 イヴァン将軍がそのような事を言った。

 兼定も居たがそれ以外の秋津の侍らしい人は見たことがない、しいて言うなら忍者っぽいリース位だった。


「それでは始めようか」


 それだけ言うとイヴァンが大剣を構えた。自分も神刀の柄に右手を添え、腰を落とし居合の構えをとった。


「秋津の秘剣か、見せてもらおう!」


 合図する人は居ないのかな?

 行動速度上昇使用した。


 開始合図してくれないのかな?

 いつでもいいがお互いに止まったままなんだけど、


「いつでもかかってこい!」


 合図無なのか、なら遠慮なく!

 縮地を使いイヴァンの元に駆け一閃!

 縮地先で血を払う動作をしながらイヴァンの居た場所を見たがそこにイヴァンの姿は無かった。あるのは斬った大剣の先端部分だけだった。


 神刀を鞘に納刀し一礼をした。

 この後どうすればいいのだろうか?

 平原にポツンといる状態になっていた。


 しばらくすると、外に飛ばされたイヴァン将軍が上半身裸になり戻ってきた。鍛え抜かれたイヴァンの上半身を見ながらなぜ上半身裸と思った。


「久しぶりワシより強い剣士に会った。見事な秘剣だ、主も行動速度上昇をもっているな?」

「まぁそうですね」

「良き才能だ、今度はスキルなしで手合わせ願おうか」


 背中をバシバシ叩きながらイヴァンは笑っていた。

 基礎能力を磨くにはいい機会なのかもしれないと思った。


「その際はよろしくお願いします」

「後ほど、宿舎に行くと姫様に伝えてくれ、主も皆の元に行くがいい」


 言われた通り第6騎士団のメンバーがいる所に戻った。


「本日の模擬戦はこれにて終いだ!各自今日の模擬戦の反省点を活かし訓練するように!以上だ!」


 イヴァンが締めくくると各軍団撤収作業に入り、第1騎士団は王と共に、王城へ戻っていった。


 第6騎士団戻ってくると、オーレリアとセリエが駆け寄ってきた。


「ナット君ありがとう、まさか一瞬で決着付けちゃうとはね」

「イヴァン将軍が後で宿舎に行くと伝えてくれと言ってました」

「そっか、よっし!みんな戻ろう!今日は私のおごりでお酒一杯飲んでいいからね!」

「「「お~~」」」


 第6騎士団内から歓声が上がった。

 オーレリアは、自分に背を向け、第6騎士団のみんなの中に姿を消した。


「ナット君強いですね~イヴァン将軍は、先の戦争で1人で3000を相手したと言われる強者なんですよ~そんな人を一瞬で屠るとか~」

「セリエも最優秀騎士でしょ?多分同じような事が出来ると思うよ?」


 相手が雑兵ならなおの事楽だろう、自分やイヴァンとは違い相手が寄ってくる前に対処出来ることが強みだろう、セリエが行動速度上昇とか縮地を身につけたらあっと言う間に敵陣制圧できそうダと思った。


「そんなことないですよ~ナット君が暮れた武器があったからこそ出来たんですよ~これ本当に貰っていいんですか?」

「ん~もうちょっとまともな物が出来たら交換ね」

「これよりまともな物があるんですか~?」


 セリエが不思議そうな顔をしていた。

 中途半端な間に合わせ物だからな、そういやリースのジャマダハルもちゃんとした物作ると約束してたことを思い出した。


「まぁね、近いうちに作るよ」

「そうですか~無理しないでくださいね~」


 その後セリエと雑談をしながら前を歩く第6騎士団のメンバーの後について宿舎に戻った。

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