第102話 セリエ栄光への第一歩

 ベッドに横になったが眠れないまま夜が明けた。


「ナット君起きてますか~?朝食ですよ~」


 もうこんな時間か、眠気もないのでベッドから起き上がり扉を開けた。


「おはようございます」

「おはようございます~食堂に行きましょう~」


 扉の外には昨夜泣いていたのは夢だったかな?と思える位に元気なセリエがいた。

 セリエの後について食堂に向かった。


「セリエ、ご飯終わったら模擬戦まで時間ある?」

「ありますよ~、なにかするんですか~?」

「セリエの武器作ったから模擬戦の会場で使いこなせるように練習しない?」

「私の武器ですか~?いいですよ~」


 2人して朝食をさっさと食べ、模擬戦会場に向かった。


 模擬戦会場は既に準備がされていて各騎士団の陣と思しき所に陣幕が張られていた。


「ここが?」

「そうですよ~ここが模擬戦やる場所ですね~もうじき宮廷魔法師の方々がきてアーティファクトを設置起動させていくんですよ~」


 その人達が来る前に使い方をマスターさせるべきだな、セリエにグローブとチャクラムを渡し使い方を説明した。


「接近戦の時はチャクラムを持って振り回せばいいし、距離があれば投げればいいから一応距離万能だとは思うよ」

「わかりました~ナット君信じますよ~」


 セリエが投げる動作を見せたのでセリエから離れた。


 セリエを見ていると、臆することなく戻ってきたチャクラムをキャッチしていた。普通手をバッサリやられないか不安になると思うんだがなぁ……、色々な態勢で投げたり、振り回したりしていた。


 なんというかセリエの舞を見ているような感じだった。


「すごく使いやすいですね~とてもしっくりきますよ~」

「それは良かった、第6騎士団の陣前でそれを使って守ってくれる?」

「わかりました~」


 あとは、セリエの防具だな、本人を見ると、胸当てブーツか、オリハルコンで胸当てを作るとして、ミスリル繊維とアダマンタイト繊維があるからそれで服を作るか?ブーツ用に何かいい皮がほしいなドラゴンの皮とか、その時オスカーがドラゴンダンジョンクリアしているとアマネが言っていたのを思い出した。

 もしかしたらまだ皮を持っている可能性がある。

模擬戦終わったら冒険者ギルドに行くことを決めた。


 しばらくセリエの練習を見ていると、多くの人達が集まってきた。


「そろそろ練習終わりにしよう、疲れてない?」

「はい~疲れてないですね~これだけ動いたら汗びっしょりになるはずなんですが~」

『そりゃ戦神の加護のお陰でしょうね~』


 そうだろうね、今までの動きを見ていると疲れてないはずがないし、疲れてないならそういう事だろうと思った。


 会場にぞろぞろとひとが集まりはじめた。


 第6騎士団のメンバーもそろってきたところで、皆の元に行った。全員がそろったことを確認したオーレリアが皆に向かって言った。


「はい、皆さん揃いましたね、夕べ伝えた通りナット君以外は私を守ってください!」

「「「お~!」」」


 周りを見ると、第6騎士団除く騎士団毎同じような鎧を身につけていた。

 第1騎士団は縦1m以上ありそうな大きな盾と白い鎧の人達と、赤い服とマントを身につけた宮廷魔道師の人達、第2騎士団は黒いフルプレートメイル、第3騎士団は銀色の鎧、第4騎士団は第1騎士団と同様に大きな盾とフルプレートメイル組と皮の鎧の軽装組、第5騎士団は殆どの者が軽装で、一部はローブだった。


 ぱっと見わかりやすいと思った。


 模擬戦会場中央に、紺色の鎧を着た白髪の壮年男性が現れた。


『あの人がイヴァン将軍だね、行動速度上昇極めてるね~それに身につけている防具全部に付与がついてる』


 行動速度上昇を極めていて全身付与か能力アップ系の付与だったら結構強そうだな一騎討はあまり油断できないな。


「騎士諸君!待ちに待った者も居るだろう!これより模擬戦を始める!」


 中央に居たイヴァン将軍がシンプルな挨拶を済ませた。

 辺りを見渡すと、ロイヤルガード達が陣取る後方に王族用の観客席が築かれ、そこには王がいた。


「ナット君、お願いしますね」


 気づけば横にオーレリアがいた。

 この模擬戦は、自分よりもセリエが目立つと思っていた。

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