第67話 攻略組治療

 28層のボスをサクッと倒し29層に降りてきた。辺りは前のエリアと変わらないミスリル系のみかな?


『ここはさっきまでとあまり変わらないかな~変わるのはシルバーゴーレムが出るよ~必ず銀塊を落とすよ~』

『おー!』


 正直銀塊はほしい、アクセサリー作りに使うし。


『どれくらいいるの?』

『ミスリル系1000体に対して1体くらいじゃない?』


 存在自体がレアじゃん……、諦めよう物欲センサーに引っかからないように……、


 やる事は26層までと変わらず単体で襲ってくることが多い為来たら刺すなり斬るなりして進んで行く、会えない……、シルバーゴーレムとやらに会えないまま34層まで来てしまった。


 刀をアイテムボックスにしまい辺りを見ると、34層はこれまで人が居なかったのがウソなんじゃと思えるほど人が居た。小さな村のような状態だった。そう言えばアマネさんが34層に攻略組がーとか言ってたな、その割には誰も大部屋で戦ってないんだが……?


「なんじゃおまえさん、他の仲間はどうした?」

「ん?」


 足元にドワーフが居た。しかも片手に酒瓶を持っている。


「おまえさん仲間はどうした?」

「1人で潜ってるので居ませんよ?」

「なんと、ここまでソロで来れるやつがいたとは……、お主の名は?」

「秋津直人です。」

「ワシはグラコスだ、よろしくな少年」


 少年か~18位だから少年かな?


「グラコスさんよろしくお願いします。」

「お主秋津の剣士か?」


 何と答えるべきだろうか?

 イエスと答えても支障がなさそうだよな……?


「そうですね、そんなところです。」

「ほぉ、兼定と同郷か!」


 あれ?答え間違った気がする!本物の秋津出身の人が居るなんて!


「そうなんですか?」

「あぁ、こっちにこい、今は皆休んでるからな。ワシ1人見張りで暇しとった。」


 グラコスが中央にあるテーブルに案内してくれた。


「お主は秋津のどこの出身なんだ?」


 どこね、秋津に何があるのか知らないんだが、出身が鹿児島だし薩摩とでも答えておくか……


「薩摩ですね」

「ほぉ、薩摩か!仕事は何だったのだ!やはり武士か?」


 あれ?実際に存在するの?


『ヒスイ、薩摩って存在するの?』

『するよ、薩摩は、秋津最大の都だよ』


 あ~なんかこれ以上嘘はいけない気がしてきた。自分の首を締めそう……


「いえ、親はそうでしたが自分は医者ですね」

「ばかいえ、医者如きがこんなところまで1人でこれまい!」


 ん~……、


「本当なんですけどねぇ、怪我人とか病人がいれば対応しますよ」

「本当か?怪我人なら結構いるからな、こっちに来い」


 そう言うと、大きなテントの元に案内された。


「けが人は全員ここにおる。」


 テントの中に入ると10人ほどの男女が横になっていた。魔物種類を考えると、毒と裂傷に打撲、骨折あたりかな?


『ヒスイ』

『OK!呼吸と脈の観察だね~』

『ヒスイ判断でいいから、優先すべき人わかる様にしてくれると嬉しい』

『OK、子ども達を使うよ、最優先が3で』

『了解』


 返事をした瞬間すべての患者の胸のあたりに1~3つの緑の玉が現れた。早いな……、3つが3人か、

 1人目、血液量があまりないな、脈も呼吸も弱い右足に深い3本裂傷かウルフだろうな……、神の手発動させ血液量を戻し裂傷部分の縫合をした。


 はい次!2人目、犬か?獣人族の女の子だった。右手に咬まれた形跡があり、発熱と麻痺か?狂犬病か傷口の縫合と神の手を使用して狂犬病ウィルスを体内から排除した。


 はい次!3人目、足の部分にヴァイパーに咬まれた形跡が複数ある。体がマヒしているのはわかるがそれだけじゃない、全身に蕁麻疹がみられ意識レベルが低下している。アナフィラキシーショックか、神の手を使用しヴァイパーの毒素を排除し、アナフィラキシーショックから症状の改善とヴァイパー毒に対する免疫力を上げた。


 3人とも呼吸が安定している。これで重度の対応おしまい!


 次!中度!こっちは骨折や裂傷とヴァイパー毒による麻痺が5名それぞれ対応した。

 

 最後の軽度の2人はまぁ転んだのか?膝の擦り傷とか戦いとは関係なさそうな火傷だった。それぞれ神の手を使って完治させた。


「はい、これでおしまいです!」

『ヒスイ、サポートありがとう』

『んっふっふ!』

「おまえさん凄いな……、症状の重い者を瞬時に見分けて対応してたな……」


 ヒスイがトリアージもどきをやってくれたからね。


「医者だと言ったでしょ?」

「そうだったな……、見慣れぬ道具といい、本当に医者だったか、何か礼をしなければだな……」

「礼はいいのでいくつか教えてもらいたいのですが」


 礼を辞退したから?ラコスが少し驚いた様子を見せた。


「何を教えればいいのだ?」

「ここって攻略組の最前線ですよね?今戦っている人が居ないようですが」

「そりゃおらんだろ、今は休みだからな、大部屋突破できなかった時は次の18時間は休憩や補給なんだ、今はその休憩補給時間といったところだな。」


 そりゃそうか、常時特攻しているわけじゃないか、辺りが静かなのを見る限り寝てるのだろう、個人的には兼定とかいう本物の秋津出身者と鉢合わせる前に先に行きたいのだが……。


「ありがとうございます。休憩に入ってから1回目のリポップは済んでます?」

「いや、おまえさんがここに来る少し前に休憩に入った所だな。リポップ自体はまだ見とらんな」


 しばらく彼らは突っ込まないか、大部屋の方を見ながらどうしようかなと考えようとしたとき、居た!シルバーゴーレムが!


「そうですか、ありがとうございます。ちょっと獲物を見つけたので離れます」

「あん?獲物ってなんだ?」


 よっし、シルバーゴーレムをやるか、銀塊だけでもゲット出来れば!


 アイテムボックスから神刀をだし、抜刀した。


「おいおい、正気か?お前さん1人で突っ込むんじゃなかろうな?」

「大丈夫です。行ってきます!」


 27層の時と同様、行動速度上昇発動!縮地からのドロップキック!


「おいおいおいおい!正気かよ!」


 後ろで何か聞こえるが気にしない、今は目の前の事に集中だ!

 シルバーゴーレムを見かけた位置を目指しつつ暴れる。ゴーレムに殴られようがウルフとヴァイパーに咬まれようが、突き進むのみ!


『無茶するね~グラコスさんが入口近くで戦ってるよ』


 来なくていいのに……


 シルバーゴーレムが間合いに入りそうな所まで近寄ってきた瞬間、辺りの光が強くなった。


「直人!戻れ!リポップだ!」

「グラコスさんは下がってください!自分は進みます!」

「あ!?」


 大丈夫、出口の方向は解っている。その前にシルバーゴーレムだけでも!


 邪魔なミスリルゴーレム・ミスリルウルフを倒した。残すはシルバーゴーレムだけ首を取るつもりで強引に斬った。よっし!その瞬間周囲の魔物達が消えた。


「グラコスさん健闘を祈ってます!さらば!」


 視界の端に出口を捕らえ縮地!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る