第64話 A級とB級の冒険者カード

 集積場を後にし、ギルドマスターであるアマネの部屋に戻ってきた。


「おかえり、A級手続きが終わるまですこし時間かかるだろうから、B級A級とS級への昇給条件等説明をしておこうか」

「お願いします」


 椅子に座り、アマネの説明を受けた。ジャッスエイでの登録時と同じ説明や、グアーラが言っていたようにS級昇給は王族の依頼が不可欠な事等を教えてくれた。


「ざっとこんな感じかな、Aにもなると指名依頼も増えてくるからね、それから3人の討伐報酬も渡さないとだね」


 アマネが机の上に白銀貨1枚大金貨5枚を出した。ありゃ?ジャガックス・クリフト・サンディよりも高いな。


「えっと、多くありません?」

「君はあまり手配書を見ないのかな?」


 お金に困ったことがないからか報酬額の所見てないな……


「すいません、報酬額の部分一切見てないです。」

「はぁ……、賞金首狩のやつらが1番重要視するところだと思ってたけど……」


 アマネがため息をつきながら答えた。


「すいません……」

「謝らなくていいよ問題ないから受け取ってね、それから女の子だけど親が判明したので近々職員が送り届ける事になったから安心するといいよ。」

「ありがとうございます。」


 机の上にある白銀貨1枚大金貨5枚を受け取った。150万か、考えようによっちゃ冒険者ってフリーターだけど稼げるな。


「ボクの方からは、以上だけど何かあるかな?」


 ふと思ったのは、ナットの階級はどうなるのだろう?


「1つ質問していいですか?2重登録って問題あります?」

「ん?ないよ、2重登録する?」


 良かった……、大丈夫そうだ。アマネさんの前にナット名義の冒険者カードをだした。


「ナットでも登録しているのか、こっちの階級もAにするかい?」

「えっといいんですか?」

「構わないよ、正直言うとね、暗部の人間は皆複数登録しているんだ、状況に応じて初心者を演じたりする必要があるからね。ボクもほら」


 そう言って4枚のそれぞれ名前と階級の違う冒険者カードを見せてくれた。アマネの名の冒険者カードの階級がSなんだが……


「任務によって、階級の使い分けをね」

「なるほど、自分の持つ1番高い階級までなら自由設定ですか?」

「そうなるね、ただまぁナットの方はC級のままかB級が良いだろうね年齢が5歳だし……、」


 何か気づいたように止まってしまった。待つこと数分戻ってきてくれた。


「えっと、君これ本当?最近登録されて5歳なんだけど、君はどう見てもそう見えないよ」


 そりゃそうだ、今の秋津直人は18歳時の姿だ。


「これからやる事内緒にしてくださいね」

「ん?」


 右手を胸に当て、神の手発動、5歳児ナットの姿になり、衣装も子ども用の着物へチェンジした。


「凄いね……、見た目そのものも変えられるのか……、君の肩に精霊がいるから同一人物だってのが解るけど、さすがに信じるのに苦労するレベルだね」


 あぁ、変装してもヒスイの存在ですぐばれるのか気を付けよう……。


「それは他人にも出来るのかい?」

「できますよ」

「ますます暗部に欲しい人材だよ。どうだろう試しにボクを君が連れてきた女の子の姿にできるかな?」

「出来ますけど……」

「そうか、ちょっと待ってって」


 それだけ言うと席を立ち棚から手鏡をもって戻ってきた。


「いいよやってくれる?」

「良いですけど、服がずれ落ちないように抑えててくださいよ」


 ワクワクしているのが解る表情だ。


「了解~」


 言葉遣いが……


「それじゃあ手を貸してください」

「はいはい~」


 左手を出してきたので触れ、神の手を発動させ、連れてきた女の子の姿になるようイメージした。すると、目の前にいるアマネの身体が縮み例の女の子の姿になった。右手で服を抑えていたせいで、“きゃ~”とかいう展開にはならずに済んだようだ。


 アマネは先ほど持ってきた手鏡を見ている。


「おぉ~すごいね、記憶もちゃんとそのままだし、完全に別人じゃないか!」


 興奮状態のアマネをよそに、さっさと事を終わらせて再度ダンジョンに潜りたいと思ってしまった。


「戻しますよ?」

「いいよ、可能ならボクを本来の姿の16歳の姿にできるかい?」

「ん?それ位なら構いませんが……」


 再び出してきた手に触れ、神の手を発動させ本来の姿に戻し16歳に若返らせた。


「これでいいです?」

「お~目元の皺がなくなってる!」


 自分から見ると、どうやっても少女というよりは少年にしか見えない……


「それじゃあ元に戻しますよ」

「いや!このままでいい!」


 だろうなぁ、若返って元の姿に戻ると言い出す女性がいるとは思えないし……

 自分も秋津直人の姿に戻った。


「それでナットの階級ですが、Bでお願いします。」

「いいよ!それじゃあ2枚のカード預かるよ、直人君のカードも貸してくれる?」


 やたらと機嫌がいいせいか即答してきた。秋津直人の冒険者カードをアマネに渡した。


「ちょっと待ってってね!」


 それだけ言うとアマネは部屋の外に出て行った。


 しばらくした後アマネが戻ってきた。


「はい、冒険者カードね、階級があっているか確認してね、それから鉄塊の納品報酬金貨3枚ね」


そう言い、2枚の冒険者カードと、金貨3枚を手渡された。思ってた以上に鉄塊は安いな……、冒険者カードの方は、秋津直人A級、ナットB級、どちらも間違いなし。


「大丈夫です。」

「そか、ダンジョン攻略にもどるのかい?」

「そうですね、1つだけ、アマネさんは適正が糸ですよね、普段どんな武器を使っているんですか?」

「ん~適正が糸なんだけどね、直ぐに切れてしまったりと納得のできる武器に出会えないんだよね、だからボクは体術や棍をつかってるのさ。」

「そうですか、ここで取れる金属全部糸にしてやってみたんですか?」

「いや、鉄、銅、青銅だけだね」


 ふ~ん、ダマスカスとかの他の金属や、合金で糸作れないかな?とりあえずワイヤーの原理を考えれば、数本束ねて1本にすればよかったはずだが、出来るかな……?


「わかりました。ありがとうございます。」

「気を付けてね」


 席を立ちギルドマスターの部屋を後にした。

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