第63話 A級実力試験

 地下に降りると壁に様々な木製の武器が掛けられている。アマネが中央付近までくると。


「ここら辺でいいかな、まずは体術を見せてもらうよ」

「素手ですか?」

「そうだね、それではいくよ!」


 ちょ!っと思いながら応戦していく、蹴り主体の攻撃が多い、ひたすら攻撃を払い続ける。

 アマネさんの格闘スタイルが格闘ゲームで見た事があるスタイルだ、中国拳法の何かだと思うんだが……、上段と中段に交互に打ってくる連続蹴りが非常に厄介なんだが……


 ひたすら攻撃を払いながら技を盗んでいく。


『へぇ適正でもないし体術もないのに凄いね、血のにじむ様な努力したんだろうね』


 突然ヒスイが喋った。体術スキルがないからなのか攻撃が全体的に軽い、アマネ自身がすらっとしたスリムな女性だからだろうか?格闘技で体重は結構重要な要素だからな……


 アマネが後ろに飛びのいて間合いをあけた。


「攻撃してこないけど私の攻撃すべて見切ってるね」

「師から教わったんですか?」

「そうだよ」


 格闘ゲームからの技をマスターしたか?戦神なら自分と同様にすぐにマスターできそうだし、もしくは最初から中国武術の使い手という可能性があるな。


「私の攻撃全部見切るあたり体術は十分かな、それじゃあ次は何か一つ武器を使おうか」


 前回短剣術を身に着けるのに失敗しているし、短剣を使うか、短剣を手に取ると、アマネは棒を取っていた。


 中国武術にたしか棍術があったような……


「棍術もその人から?」

「棍術は違うね、師の友人から教わったよ、さっき君が持ってきた死体と同じ外傷のない死体を持ち込んだ女性だよ」


 ジャッスエイの武器屋に置いてあった棍って……、


『ヒスイ以前武器屋で買った棒あったよね……』

『うん、十中八九彼女の物だろうね……』


 ここで棍の持ち主とつながりが出てくるとは……


「1つ質問」


 首をかしげるアマネ


「どうしたの?」

「その女性と、師はまだ存命ですか?」

「そうだね、師は結構な年齢だけど未だにピンピンしているよ。女性の方も元気なんじゃないかな?」


 なにかおかしい事言ったかな?少し笑いながらアマネが答えてくれた。


『絶対健康もってるからピンピンしてるだろうね~』

「会ってみたいので居場所を教えてもらうことは?」

「私に勝てたらいいよ」

「わかりました。本気で行きますよ」


 短剣術身に着けることは諦めるか……

 中央の開始位置まで移動し、それぞれの武器を構えた。


「それじゃ、行くよ!」


 行動速度上昇からの、縮地でアマネの背後に回り込み、自分の開始位置へ駆けるアマネに足払いを仕掛け背後から馬乗りになる様に押さえつけ首元に短剣を押し当てた。


「はぁ……、君も行動速度上昇持ってるんだね……」


 縮地に関しては触れてこなかった。


「わかります?」

「それ位はね、君のやり方が師と同じなんだよ、背後に回り込んで転ばせるって部分がね……」

 

 それだけ言うと、アマネは立ち上がり服に着いた土を払っていた。

 そりゃ本気でやるならその選択肢しかなくない?


「本気でって事だったので……」

「そうだね、師は王都の冒険者ギルドでギルドマスターをやっているよ。そして私達暗部のトップだよ、師の友人の女性は商業ギルドのマスターになってたはずだよ。」


 思った以上に近くにいた。そして暗部のトップと来たか……


「ありがとうございます。」

「約束だしね、実力は申し分ないしA級でいいよ、それじゃあ戻ろうか、君は納品済ませてから戻って来てね。」


 その後アマネと上に戻り1階で別れた。


 ロビーに戻り依頼掲示板から鉄塊の納品依頼票を剥がし、受注カウンターに行った。


「すいません~これお願いします。」


 カウンターに依頼票を出した。


「はい、冒険者カードを見せてもらっていいですか?」


 アイテムボックスから冒険者カードを取り出し提示した。


「はい確かに、受注確認しました。」


 窓口の人が何か事務作業をして、依頼票と冒険者カードを返してくれた。横の依頼終了窓口に移動しカウンターに依頼票と冒険者カードを置き。


「すいません、これお願いします。」


 窓口の人が、依頼票と冒険者カードを確認し、


「はい、確認しました。鉄塊いくつ納品されますか?」

「500個で」

「ぇ……?」


 窓口の人が驚いていた。普通は一度に500とか納品しないのかな?


「少しお待ちください」


 窓口の人がどこかに行ってしまった。少し待っていると1人別の職員と共に戻ってきた。


「お待たせしてすいません。」


 一緒に来たおじさんがこっちを見て質問してきた。


「兄ちゃんが鉄塊を?」

「はい」

「そうか、それなら解体窓口の横からこっち側にきてくれるか?」

「わかりました。」


 言われた通りに解体窓口の横の扉から中に入った。中に入ると先ほどのおじさんがいた。


「こっちだ」


 おじさんの後について行くとジャッスエイの冒険者ギルドと同様開けた倉庫のような所にでた。


「ここで出せばいいです?」

「いや、ここは解体倉庫だからな、もうちょっと奥だ」


 おじさんはさらに歩るく。


「質問していいです?」

「どうした?」

「冒険者ギルドってみな似たような構造なんですか?」


 地下の訓練場らしき場所や、解体倉庫、カウンターの並びを見ているとそうとしか思えなかった。


「そうだな、基本我々職員も異動があるからな、移動先で構造を覚えなくていいように、主要施設は皆同じような位置にある。まぁこれから行く施設は鉱山都市特有だがな」


 ファンタジー世界にも異動があるのか、組織だしそんなものなのか?


 おじさんの後について行くと、屋根があるものの、3台の馬車が並び3方の壁が存在しないとても広い場所だった。


「ここは……?」

「ここはな、鉱石集積場だ、本来10~20位の納品が多いのだが、おまえさんみたいに大量に持ち込む奴が稀にいるんだ、そういう時はここで直接出してもらう事になっている。」


 なるほど、壁の方には7種の鉱石?塊が置けるように高さ3m長さ6~7m位有りそうな複数の大きな仕切りで仕切られていた。


「おーい手の空いてる奴ちょっと手伝え!」


 おじさんが叫ぶと10人ほどの職員が集まってきた。皆結構マッチョだな、そりゃ毎日重い物扱ってればそうなるか。


「鉄塊500の納品だ、50は馬車に他は保管だ」


 職員たちがざわついているが、おじさんがこっちを見て言って来た。


「この場に全部出してくれ、数えながらやっていくからな」


 ならばこちらは数えやすいように出した方が良さそうかな、10×10×5と数えやすいようにだした。


「数えやすく出してくれたのか、ありがとな、しばらくロビーで待ってってくれ、あとで俺の方で報酬を持っていく」

「あ~それでしたら、この後アマネさんの所にいくのでそちらでもいいですか?」

「なんだ、ギルマスの客人か、解った後で持っていこう」

「おねがいします。」


 集積場を後にしてギルマスの部屋を目指した。

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