第59話 鍛冶デビュー

 キャンプの準備を終えて、焚き火台の火に薪を入れてて思った。


 バーベキューで使う木炭があります。そして砂鉄があります。玉鋼が作れるんじゃね!?

 物作り趣味を持っている人間が、素材があるのにのんびりできるだろうか!?

 答えは出来ない!生前やってみたいと思っていた自前の刀制作の第1歩!思い立ったらやってみよう!


 炉は、下の方に通気口となる穴と砂鉄が溶けた際に流れる穴とそれを受ける受け皿があればよかったはず……、土魔法で炉を作り中にバーナーで火をつけた木炭と砂鉄を放り込んでいく、大気操作魔法で酸素濃度を通常より濃いめにしておく。


 あとは溶けだすのを待つだけだ、鉄塊でメスとか作れないかな?

 キャンプなんかで使うハンマーはあるから、金敷があればいいのか?

 熱した鉄を掴むヤットコに代わる道具が無い気がする。小さいものならペンチで代用できないかな?


 となると、小物を作るために必要な物は、金敷だけだな壊れない丈夫なのが欲しいな

 ダンジョンの壁とか使えないかな?


 物は試し斬りだしてみよう!


 椅子から立ち上がり、神刀を取り出す。


『何してるの?』

「壁を切り出そうかと」

『ぇ?』


 壁を斬り、ピラミッド状に壁を切り出した。そのまま使いやすいように形を整えて金敷の出来上がり!

 端材はアイテムボックスに放り込み、鉄塊を少し切り落とした。


 アイテムボックスに神刀を入れて、ペンチとハンマーを取り出した。


 フッフッフッフ!ついに憧れの鍛冶作業だ!このために熱与奪魔法を選んだと言っても過言ではない!


 ペンチで、切り落とした鉄塊と掴み熱与奪魔法を使いペンチは冷却、鉄部分を一気に熱し赤くなってきたところをハンマーで叩き形を整えて、熱与奪魔法を使い一気に冷やした。


 メスとしては刃の部分がやたらと長いが、初作品だしこのまま仕上げてみよう、土魔法で目の粗い砥石をイメージして出してみる。出来るか不安だったがイメージ通りの砥石がでてきた。状況に応じて砥石の目の粗さを調整し研ぎ続けた。その結果初めての作品が出来た。


 正直、刃の部分の厚みが一定じゃない等のいくつか改善点があるが、個人的には満足だ!ラーネバンのスタンピード戦で得たオークの死体を出して切れ味を試してみたが、切るときの感触が“これじゃない”感がある。持ち込んでいた手術練習セットからメスを取り出し比較するも、やっぱり自作のメスモドキはダメだな、精進せねば、その後10本程のメスモドキを作った。


『ナット~取り込み中悪いんだけどさ~』


 10本目のメスモドキを研ぎ終わったころ、ヒスイが声をかけてきた。


「ん?」

『まず一つ、君がここに拠点作って、既に7日目だよ』

「ぇ?まじで?」


 正直薄暗いダンジョン内だから時間帯が全く分からない、トイレは赤子の頃から殆どアイテムボックス経由でどこかの次元に消しているし、お腹は少し空腹感があるが絶対健康のおかげだろう健康を害することもなく7日間も趣味に没頭していたらしい。


『うん、それから変な音が聞こえない?』

「ん?」


 聞くことに意識を向けると確かに壁の向こうから金属がぶつかり合うような音が聞こえる。


「えっと?」

『壁の向こうに魔物がうじゃうじゃ……、まぁあれだけカンカンカンカン音を出してれば集まるよねぇ~』


 あぁなるほど、一旦撤収するか、炉の方を見ると砂鉄は全部溶けているようだった。冷却して、砂鉄だったものを取り出し炉だったものを無に返した。テントやら諸々片付けて最後は掃除した。


 忘れ物が無いことを確認し、神刀を腰に差し準備万全!壁を無に返すと壁の向こうに居た魔物達が一斉に襲い掛かってきた。


 狭い通路でもお構いなし、壁も斬れるから平原にでもいるような立ち回りを繰り返しひたすら魔物を倒していくが、どれだけ戦っても一向に魔物達が途絶える気配が無い。


「これどれだけいるのさ」

『さぁ?このフロアに居る魔物全部集まってるんじゃない?すでに討伐数1000越えてるでしょ、まだまだ後ろにうじゃうじゃ居るよ』


 倒しても倒しても終わらない……

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