第27話 悪魔憑き?精神疾患?

 ベッド上で拘束されている女の子の下へ寄った。ひどく痩せこけているのが一目見てわかった。寝ているのだろうか、目を閉じて規則正しい呼吸をしているのが分かる。彼女の額に手を置いた。


「クライ何があった? この様子ただ事ではあるまい」

「あぁ、ひと月ほど前、突然叫びだしてな、その後、暴れたり、巨大な虫が見えるだの、何者かが呼んでいるだの色々あってな、先日なんか拘束を解くと、そこの窓から飛び降りてどこかに行ってしまった。」


 興奮状態に幻覚か、というか、ここ3階なんだがなぁ。額に触れている手を通して、神の手を発動させたが、極度の栄養失調という事位で、高所から飛び降りた事による骨や筋肉に異常がみられなかった、なんでなんだか、骨折とかしててもおかしくないだろうに……


「悪魔憑きか……」

「殺さないでくれ!悪魔憑きなんかじゃない!」


 突如クライが叫んだ。


『ヒスイ、ここに悪魔は居ないんだよね?』

『うん』


 精神疾患、正直自分の専門は外科系だ、専門外なので正直分からない。内科分野は救命救急センターに所属していたころにある程度知識を身に着けたが、精神科分野は無縁に近かった。


 ただ興奮状態に幻覚ということは、可能性があるのは、薬物中毒や、統合失調症、PTSDに認知症系だろうか? いずれにしろ脳機能の異常だ、女の子の脳と、自分の脳を神の手を通して比較するも、脳の萎縮や、変な物質が現れている等は見られないが、それ以外の事は良く分からない。とりあえず、神の手を発動させ脳機能正常化をイメージして修復しておく。


 さてどうしたものか、悩んでるとヒスイが話しかけてきた。


『ナット何かわかるの?』

『あぁ、脳機能が正常に機能してないって事位だ、問題は何の物質がどのように異常をきたしているのかが分からないって事かな、とりあえずは修復をしたけど、原因がわからないからまた発症するかもしれない。』

『わからないんじゃ、神の手で対処のしようがないよね~』

『薬物中毒とか原因が特定できればいいんだけどね』


 すると、ヒスイが何かをひらめいたようだ。


『薬物か~それなら薬を作ろ! 脳の異常をきたす植物でレッドミントってのがあるんだけどね~レッドミントは、摂取量によるけど、異常なくらいの興奮状態になるんだよね~、元々はその作用を抑える為にブルーミントってのがあるんだけど、そのブルーミントは脳の正常化を助ける効果があるんだよね~』


 レッドミントは、麻薬か何かですか?

 とりあえずブルーミントがあればいいらしい、ということはブルーミント探しに行かないとだ。


「ナット、何かわかったか?」

「えぇ、話を聞く限り一応ある程度見当がつきました。」

「ほんとうですか?」


 リーアさんが横にいた。


「お話を聞く限り、興奮状態に、幻覚の症状という事で、脳機能の異常って所まで見当がついたのですが、どうしてこうなったのかが、まだわかりません、一つ試したいことがあるんですが、いいですか?」

「あぁ、娘が助かるなら何でもいいぞ」


 侯爵が、何も迷わずに即答した。自分の娘の事だからだろうか、即答してはいけないと思うんだけどな、と思いつつ。


「ブルーミントを使った薬を作る事なんですが」

「ブルーミント……、この大陸で見た事無いな……」


 グアーラが答えた。


『そりゃそうでしょ、寒冷地帯の植物だし、もうちょっと北の大陸の高地じゃないと取れないかな~』


 結構絶望的な宣言に聞こえるんだが?


「もう少し寒い地方の高地とかに生えてるとか?」

「そうだな、オダマキ大陸の北部にレイク王国があるんだが、そこだったら、ブルーミントの産地があったはずだが、ここからだと、数か月の旅路だな」


 遠いな、いつかは行ってみたいが、今回はあきらめるべきなのだろうか?


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