第26話 夜のクエスト
武器屋を出ると、夕暮れになっていた。武器屋で思っていた以上に時間が過ぎていたようだ。
「集合にはまだ早いか」
「カウの解体が終わってそうなんで、引き取りに行ってもいいです?」
「構わんぞ」
冒険者ギルドに、肉等の素材を引き取りに向かった。
冒険者ギルドに入り、解体窓口までいくと、おっさんがこっちに気づき
「お、来たな、用意できてるぞ、こっちにこい」
そう言って案内されたのは、解体を依頼したときに連れてこられた倉庫のような所だった。依頼したときとは違い、様々な魔物の解体が行われていた。
「こっちだ」
倉庫のような所から、寒い部屋に案内された。目の前には、多くの肉が並んでいた。
「この部屋にある物が、お前さんに渡す物だ、持っていけ、それから残りの素材買取で大金貨2枚だ」
大金貨2枚を手渡された。こんなものかな?
巨大な牛の肉、肉だけでも数百キロありそうだな……
アイテムボックスにどんどん放り込んでいく。
肉と素材を受け取り、ギルドのロビーまで戻ってきた。
「終わったか?」
「終わりました。十分な量の肉があるので、明日から毎日肉でも大丈夫そうです。」
「そいつは心強いが、飽きそうだな、時間も時間だし外に出るか」
「はい」
外に出ると、既にアルフ達がいた。出た瞬間に、こちらに気づいたアルフが近寄ってきた。
「中に居たのか」
「すまんな、ちょっと用があってな。」
自分の代わりに、グアーラが答えてくれた。
「そうか、時間だし、依頼の場所にいくか。」
「あいよ」
ギルドから20~30分くらい歩いただろうか?辺りは2~3階建ての豪華な建物が並んでる住宅街までやってきた。
「ここ辺だな、二手に分かれて探索するか、月が真上に来る頃にここに集合でどうだ?」
月か、今は街の城壁に乗っかるように姿を現していた。
「構わんぞ」
「んじゃ、決まりだな、俺らはここら辺から南側を中心に探すわ」
「俺とナットは北側か、わかった」
グアーラと、アルフで話が進んでいく、2人で色々やり取りした後、二手に分かれた。
『ヒスイ、何か感じる?』
『ん~奇声だったよね~気になる人は居るよ、ここより北側の大通りにある建物に居る女の子』
夜の住宅街に響く奇声と言ってたけど、ヒスイの気になる子に会ってみるか。
「グアーラ、大通りの方に何かある気がするんだけどいいかな?」
「大通りか、まぁいいだろういくか」
ヒスイがふわふわと前を飛んで道案内してくれている。
ヒスイについて歩いて行くと、大きく立派な宿屋についた。
「ナット、ここか?」
「多分? ちょっと自信ないですが……」
自信は無いが、ヒスイの気になる人ってのが、自分も気になる。
『ここの3階』
宿屋の扉を開けると、ヒスイは奥の階段に飛んでいった。さて、どうするかな、このまま3階にいけば不審者として怒られそうな気がする。
「ここの3階に何かありそうな気がするんですけど」
「3階か、客の殆どが貴族だが、俺らなら依頼報告で来たと思われるだろうが問題を起こすなよ?」
貴族か、面倒ごとにならなければいいけど……
「気を付けます……」
ヒスイの後について行くと3階のとある部屋の前で止まった。
『この部屋の中に居るよ、お父さんとお母さんと女の子にメイドさんの4人がいるね。』
「この部屋の中です。」
「この部屋は確か……」
そう言うと、グアーラが扉をノックした。すると中から女性の声がし、出てきたのは、メイド服を着た若い女の子だ、16歳位か?
「グアーラ様、どうされたのですか?」
知り合い? グアーラの事を知ってる?
「な~に、明日からの護衛の打ち合わせと、こいつも護衛に追加しようと思ってな、その件できた。」
明日からの護衛の件……?
「かしこまりました。では、こちらへ」
メイドさんに連れられて応接室のような所に通された。宿屋なのに、こんな部屋もあるのか、メイドさんが部屋から出ていくと、グアーラが話しかけてきた。
「ここは、明日から受けている護衛対象のアヴェナラ侯爵が借りている部屋だ、堅くならずともいい」
貴族たちが借りてるって事で、緊張はしていたけど、アヴェナラ侯爵って偶々か?
しばらくすると、男性と女性が部屋に入ってきた。
「おぉ~グアーラ久しぶりだな、今回おまえさんが依頼を受けてくれて助かるよ」
男性の方がグアーラに駆け寄ってきた。
「クライ、元気だったか?」
「あぁ、ワシらは元気だったぞ」
「グアーラ久しぶりですね、そちらの子は、グアーラの子ですか?」
女性が挨拶すると同時に変な事を言ってる。
「ちがう、お前さんらがよく知っている2人の子だ」
両親を知っているって事?
「目元がカレンにそっくりですね、もしや?」
「そうだ、サントとカレンの息子のナットだ」
「ほぉ~確かに、言われてみればカレンにそっくりだな、私は、クライ・アヴェナラだ、よろしくな、ナット」
「はい、ナットです。よろしくお願いします」
両親と侯爵夫妻の関係が気になる。
「私は、リーアよろしくね」
「よろしくお願いします。」
自分の頭の中には両親と侯爵夫妻の関係が解らず“?”が浮いていた所で、グアーラが説明してくれた。リーアと、母カレンはアヴェナラの近くにある。シッザベアの港町出身で幼馴染らしく、侯爵とリーアとカレンは同い年でよく遊んでいたらしい。そして、両親が冒険者として引退する直前のプライベートクエストが、侯爵からの依頼で、リーアとの仲を取り持つというものだったらしく、グアーラを含めた3人で、侯爵とリーアくっつけることに成功したとか、壁は、身分の差で負い目を感じていたリーアの気持ちだけだったらしく。そんなに長くはかからなかったらしい、侯爵夫妻と両親の関係が明らかになって、スッキリ!
「と、そんな事があったんだ、人族は面倒だな、我々竜人族は力で取り合うものだからな……」
竜人族はなんだか野蛮というか、動物チックだな……
「グアーラ、おまえさんらと一緒にするなよ、明日からの護衛でもナット君が付いてくれるんだって?」
「あぁ、Cランクだが、正直な所、俺よりも強いからな。」
「ほぉ、それは頼もしい! 明日からもよろしくな、ナット君」
「はい」
両親との関係が解った所で、次に気になるのは、女の子の事だ。
「そう言えば、ミーナはどうした?」
グアーラも人の思考を読むことができるのだろうか?
「ミーナは体調が良くなくてな、部屋で休んでいる。」
「そうか、もしかしてだが、この街に来たのはそう言う理由か?」
「そうだ、ここは国境都市だからな、王国では手に入らない薬が手に入るだろうと思ってな。」
薬か、病ってことだろうな、ならば、自分の出番だろう。
「娘さんに会わせてもらってもいいですか?」
「ぇ?」
驚いた声を出したのは、リーアさんだった。
「大丈夫だ、ナットは医術の心得があるようだからな、俺も先日獣人の子の腹を治していたのを見ている。」
その説明だけだと腹痛だと思われそう。
「ふむ、グアーラがそこまで言うなら、分かった、ついてきなさい」
侯爵を先頭に、4人で部屋を出て、直ぐの部屋に案内されそこに居たのは、先ほどのメイドさんと、ベッドの上に手足を拘束され猿ぐつわをされて横たわっている女の子の姿だった。
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