第24話 寝坊?
翌朝、寝ていると、扉の外から、
「おーい、ナットいつまで寝ている、起きろ!」
グアーラの声で、夢の中から現実に引き戻された。
『おはよ~もう日が高いよ~』
「おはよ……」
昨夜久々に働いたからだろうか、ぐっすり寝れた。
「おーいナット入るぞ!」
「はいはい開けますよ~」
ベッドから降り、入口の扉を開けると、グアーラが居た。
「なんだよ、起きてるんじゃないか」
「ついさほど、グアーラさんの声で目覚めたんですよ……」
「そうか、そりゃいい目覚めだっただろ?」
なわけない、どうせなら可愛い女の子の声で目覚めたかったものだ……
『あら、私が起こせばよかった?』
まぁ確かに、ヒスイの声は可愛い女の子の声だけど……
『それだけ!?』
「んで、なんなんです?」
「夕べマスターが言ってたろ、朝ギルドに来いと」
今、朝なら十分じゃない?
『ん~朝ならね~さっきも言ったけど、日が高くなってるよ? 朝というよりは、お昼って時間帯になってるかなぁ~』
「もう昼前?」
「そうだよ、だから起こしに来たんだよ……、早く服きてこい、行くぞ」
「うぃ~」
いったん扉を閉めて、服を着る、今日は村で着ていた服でいいか、一番替えがあるのは、村の服だからな、着心地がいまいちなのが残念な所だ、服を着て、扉を開ける。
「なんだ、普通の服も持ってるのかよ、あの服よりはこっちの方が良いだろうに……」
自分的には、着物の方が肌触りや動きやすさがいいんだけども、人それぞれだしな……
「そうですか? 自分は着物の方が好きなんですけどね」
「そうか、それじゃ行くぞ」
冒険者ギルドに向かう途中、グアーラが話しかけてきた。
「ナットは槍も使えるのか?」
「一応使えますよ、母さん直伝ですけどね」
「ふむ、ならこいつを受け取れ」
そういってグアーラの手元には、長い十文字槍が現れ、手渡された。
「カレンが現役の頃に使っていた槍だ、引退する際に俺に預けていてな、俺が持つよりもナットが使う方がいいだろ」
突けば槍 払えば薙刀 引けば鎌と言われる万能武器、十文字槍!
自分の身長の3倍位はあるが、そこまで重さを感じない、街中じゃなければ、振り回したい気分だ。
『穂先がアダマンタイト製だから十分な強度だね~よっぽどのことが無い限り壊れないよ』
そんなものを使っていたのか、でもありがたく使わせてもらおう。
「一応、俺らの仲間だったガットスが作ってくれた武器だからな、長く使えるはずだ、アイテムボックスにしまっとけ」
新しい人名が出てきた。槍をアイテムボックスにしまいガットスについて聞く。
「ガットスさんって何者なんですか?」
「ドワーフで、バトルアックスの使い手だ、俺らが使っていた武具は全部ガットスのお手製だな」
「今はどこにいるんです?」
「あいつは秋津にいるよ、刀を作りたいらしく、技術を身に着けたいとかいいだしてな、それで俺らは解散したんだよ」
ドワーフ=鍛冶、色々なファンタジー小説で描かれていたけど、この世界でもそうなのか、自分も鍛冶には興味あるからな、いつか自分で自分の武具をそろえてみたいな。
自分のスキル向上のために、パーティ解散したのか、そういや、友のわがままがきっかけでって言っていたな。
「まぁカレンとサントは冒険者よりは、どこかで落ち着いた生活をした方が良かったし、ちょうどいいきっかけだったんだよ」
「なるほど」
グアーラと喋りながら、冒険者ギルドに入ると、カウンター一番左にリアさんと、初日に猫耳の子抱きかかえていたお兄さんと猫耳娘と骨折した女の子の3人がいた。
「遅れてすまんな、連れてきたぞ」
「グアーラの旦那、無理言ってすまない」
「いやいい、マスターから言われてるのに起きてこなかったからな」
この世界の時間がわからん、3人がグアーラの下にやってきた。
『君が居た世界と同じだよ、1年の流れもね』
時間に追われない生活は結構快適なんだよね、救命医をやってた頃には、もう戻れない自信がある。
「よぉ、俺はアルフ、こっちの魔法使いが、ファラだ、猫獣人の子がキアナってんだ、この前は本当にありがとう。坊主のおかげで、キアナを死なせずに済んだ」
そう言って、アルフ達3人が頭を下げた。
「自分はナットです。無事目が覚めてよかったです。」
「ナット、ほんとうにありがとにゃ」
猫耳娘を見るとへそ出しルック、縫合後が丸見え、よく見ると傷が完全に塞がっているし、跡も残ってない気がする。こんなに早く塞がるものなのか? と思っていると。
『獣人族は、人族に比べて生命力が桁違いに高いからね~ケガしてもすぐに回復するよ、この前みたいなレベルじゃ流石に無理だけどね。』
生命力が強いならもう傷口は十分回復してるだろう。なら抜糸するか。
「傷口大丈夫そうですね、抜糸しようと思うんですけど」
「バッシってなんニャ?」
猫娘が聞いてきた。それもそうかここは日本じゃないから説明しないとだ。
「お腹を縫った糸を抜くんですよ。」
「なるほどにゃ、お願いするニャ」
問題は、先日の場所借りれるなら借りたいところだけど、リアに聞いてみればいいか、リアがいる窓口に行き確認する。
「すいません、あの子のお腹の治療の続きをしたいんですけど、先日の部屋を借りてもいいですか?」
「大丈夫ですよ、案内しますか?」
あっさり許可を貰えた。
「場所覚えているので大丈夫です。ありがとうございます。」
猫娘だけ連れて行こうとしたら、みんなぞろぞろついてきた。部屋に入ると、シーツはかかっていないが、元ソファーだった台がそのまま残されていた。
「キアナさん、そこに寝そべってもらえます?」
「わかったニャ」
直ぐに横になってくれたので、ささっと抜糸作業をすませる。最後に神の手を発動させ跡を消していった。
「これで大丈夫です。」
「ありがとニャ」
「はい」
猫娘が軽快にベッドから降りると、アルフが提案してきた。
「なぁ、ナット、今夜空いてるなら、俺らと一緒にクエストやらないか?」
夜のクエスト?
「どんなクエストなんです?」
「二人が病み上がりだから、街中でのクエストなんだが、最近夜に北西部の住宅街で奇声が聞こえるらしくてな、見回りするってクエストだ」
見回りクエストか、暇を持て余しそうだけどな。
「北西部の住宅街っていうと貴族街か?」
グアーラが、アルフに対して質問した。
「あぁそうだ、貴族街だけじゃなく、この街の富裕層が住むエリアが対象だな、悪魔憑きの可能性があってクエストが発生したらしい。」
悪魔憑きね、病理的なものなら精神疾患だろうな……
『この街に悪魔の気配とかないし、ナットの想定通りじゃないかなぁ』
ヒスイの発言に少し引っかかった、“悪魔の気配”って?
『ヒスイ、悪魔って存在するの?』
『するよ、悪魔・妖とかいろいろな呼ばれ方してるけど、人や動物の感情や強い想いから生まれた何かだね、あいまいだけど実体があるよ~人や動物に取り憑いて悪さをする前に見つけたら討伐推奨かな』
魔物以外に考えなきゃいけないやつらが居るのか、どんなのが居るのか気になるが、とりあえず、病人の可能性がある以上同行した方が良さそうだ。
「いいですよ、夜ご一緒します。」
「おいおい、いいのか?」
グアーラは反対なのだろうか?
「なんかあります?」
「いや、無いが、お前さんは外のクエストをやりたがっているものだと」
そりゃ、十文字槍なんてかっこいい武器もらったら、使ってみたいし魔物討伐はお金になるからなぁ。
「ちょっと気になる事もありますし、明日から護衛クエストでしょ?」
「おまえさんが良いならそれでいいが」
グアーラはあまり乗り気じゃないのかな?
「よっし、きまりだな、日暮れ頃にギルドの前に集合だ」
一方アルフは、やる気満々なんだが、
「ナット、夜クエストするなら、今から明日の準備するか?」
「あ~そうですね、後、昨日の奴、解体依頼してきていいですか?」
「あぁ、いいぞ、行ってこい」
解体窓口は空いていた。並ばずに済みそうだ、窓口に行き、窓口で事務作業をしていたおっさんに話しかけた。
「すいません、解体おねがいしたいんですが」
「ん?お?」
「ファイティングカウを3頭解体お願いしたいんですけどいいですか?」
「おう、いいぞ、カウか、したらそっちからこっちに入ってついてこい」
そう言うと、カウンター横の扉が開き奥に通された。
「こっちにきな」
「はい」
おじさんが、さらに奥にある扉を開けると、大きな倉庫の様な開けた場所に出た。今は何も作業していないのか、がらんとして、道具を洗ったり磨いたりと手入れをしている職員が多い。
「おーい、依頼が来たぞ~ファイティングカウ3頭だと」
おっさんが声かけると、人が集まってきた。
「んじゃ坊主だしてくれ」
この世界では、男の子は坊主って言われるのが普通なのか?
言われるがまま、3頭のファイティングカウをだすと、おっさんを含めて職員が集まって状況確認をしているのだろうか?
「傷口がないな、どうやって殺した?」「血抜きもまだなのか?」「綺麗な状況だな」等様々な声が聞こえた。
「素材はどうする?」
「肉と1頭分の皮を貰ってもいいです?」
「それだけでいいのか? 魔石はいらんのか?」
色々な用途があるって言ってたっけか、使い道が解らないけど持っておくか、
「魔石もお願いします。」
「了解だ、夕方までには終わってるだろうから、また来てくれ」
さすがにすぐに終わらないか、んじゃ今のうちに買い出しかな?
冒険者ギルドのフロアまで戻ってくると、3人はおらず、グアーラだけになっていた。
「おう、お帰り、終わったか?」
「夕方に、また来いって、3人は?」
「あぁ猫娘があまりにも空腹だってんで、飯食いに行ったな。」
朝飯喰わずに、ここで待ってたんだろうか? ちょっと申し訳ないことしたか?
「んじゃ、明日以降の準備しましょう」
「そうだな、食料とか諸々準備しなきゃならんからな、いくか」
こうして冒険者ギルドを後にした。
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