第15話 冒険者ギルド

 屋台を後にし入口の門の近くまで戻ってくると羊皮紙の看板を掲げた建物が、

見つかった。


 結構デカいなと思いながら、中に入ろうと扉に手をかけると。


『ん~中に氷の上位精霊を使役している子がいるねぇ~』

『そうなの?』


 以前、ヒスイから精霊の階級について聞いたことがあった。

 精霊種は一部の属性を除くと、下位精霊・中位精霊・上位精霊・大精霊と分類されるらしく、以下の様に変わってくるらしい。


 下位精霊は、自我もなくただその場を漂うだけの存在。

 中位精霊は、自我が芽生えやりたいことをやり始める存在。人種でいうなれば子ども

 上位精霊は、はっきりと自我を持ち物事を考えたりたりできる存在、人種でいうなれば大人

 大精霊は、それらを束ねる存在で、属性問わず下位~上位精霊に命令することができるが、 同族性の大精霊がいればそちらが優先なんだそうだ。


 そして属性は、火・水・地・風・炎・氷・植物・雷・光・闇 の基本10属性、特別属性・時間・空間・幻が存在するとか、ただし、特別属性の3種は大精霊しか存在しないとか、火と炎が別物なのか……


『君の鑑定偽装が利かないからね~ちょっと黙らせておこう~』

『あぁなるほど、任せた』

『ふふん! 任されました!』


 ヒスイは、頼ると結構うれしそうなのが解かる。

 扉を開け中に入ると、人はまばらだが、それでもざっくり10人位いる。奥にはカウンターがあり、4つの窓口があるようだ。


 さて、冒険者登録は、どこに並べばいいんだろうか?

 入口付近でそれぞれのカウンターの様子を見ていると、後ろから


「ガキが邪魔なんだよ!入口でぼけっとすんなや!」


 と怒鳴り声を浴びせられた。まぁ、ここは自分が悪いので素直に横に退いて謝罪をした。


「すいません」

『なにこいつ! 感じ悪!』

「ふん!ガキにここはまだはえぇよ!おうちに帰んな!」


 まぁ、感じ悪いと言えば悪いが、見た目もスキンヘッドのいかついおっさんだし、良く読んだweb小説じゃこういうのが居て当たり前の業界だったよな、とりあえず、観察してわかったのが、左側にある掲示板がいくつも建ってるところが依頼票があるんだろう、それを左から2番目の窓口に持っていき受注する。そして、さっきのスキンヘッドのおっちゃんが行った左から3番目の窓口は恐らく受注した仕事が終わったら行く場所なのだろう。一番左の窓口では、3番目の窓口の後に、並び魔物の死体らしきものをカウンターに乗せてる辺り、解体窓口と言ったところか? となると、1番左の窓口が正解だろう。


 とりあえず、一番左の窓口に居る1人の水色のショートヘアの割と美人な受付嬢がいる彼女の頭の上に薄い水色の光の玉が、ふよふよと浮いているのが見えた。


『もしかして?』

『うん、あの受付のお姉さんが精霊を使役しているね』

『そうなんだ、ヒスイみたいに人型にならないのな』

『そりゃそうだよ、ミアンの所で出した上位の子達も人型じゃなかったでしょ?』


 そういや、緑色の光の玉だった。


『そういうこと、上位精霊でも名前をくれた相手には何らかの姿に見えるはずだけど、そうじゃない他人には光の玉にしかみえないよ、あとは攻撃を意図して召喚された場合はハッキリと本来の姿を見せるけどね~、あの子は素直に私たちの話は一切しませんって言ってるから気にしなくていいよ。』


 いつの間にやり取りしたんだろうか? とりあえず、精霊が頭上をふよふよ浮いている受付嬢の前に行き、話しかけようとした瞬間、バタン!という扉が開く音と、フロア中に大きな声が響き渡った


「すまねー!だれかヒールポーションもってないか!?」


 フロア中に居た人達が一斉に入口を見た。そこには、いかつい鎧を着た兄ちゃんに姫様抱っこで担がれている猫耳娘? その人の腹部付近から大量の出血をしているぐったりしている。それを見た自分の頭には、急患! という言葉が浮かび、急ぎ彼の元に駆け寄った。


「下ろして!」

「なんだ?子どもの遊び場じゃねぇんだよ!どけ!」

「良いから早く下ろせ!その子が死ぬぞ!」

『子どもの姿じぁねぇ~無駄なやり取りだよね~一刻を争うってのに~』


 ヒスイが何か言ってるが取りあえず無視、担いでる兄ちゃんも困ってる様子だ


「早く下ろせ!止血させろ!うだうだしてると助かる命も助からねーぞ!」


 ようやく、下ろしてくれた。胸部には皮の鎧か、腹部を覆ってるものは無い、とりあえず猫耳娘に触れて神の手発動し血管の修復、修復できない箇所は塞いで止血する。その後は、失った血液を補充する。


「怪我人はこれだけか?」

「出血が止まった……? いや、あともう1人いる」

「早くつれてこい!」

「あぁ!」


 鎧を着た兄ちゃんが慌てて外に出て行った。さて、まだいるとなると、本格的に縫合できる場所を確保しなきゃ、辺りを見回し、革の胸当てをした。軽装の角?を生やしたゴツイ兄ちゃんと目があった。


「すまない、そこの角を生やした兄ちゃん!」

「あん?俺か?」


 直ぐに自分の事とわかってくれた。助かる!


「この人担いでもらっていいですか?」

「さっきは下ろせと怒鳴ってたくせに…… 」

「止血が済んだからですよ!いいから早く!」

「お、おう…… 」


 角を生やした兄ちゃんが動き出したのを確認すると、次は、さっきの受付嬢の下に走った。


「すいません!あの人を横にしても問題ない大きさの机とか椅子があるところに案内してもらっていいですか?」

「ぇ!? あ、っはい!」


オペ用の台早いうちに作らないとだな、大きさが適切なのって早々なさそうだけども、


「おい!ぼーず、どうすりゃいいんだよ!」


さっきの角を生やした兄ちゃんが、怪我した猫耳娘を抱き上げていた。


「お姉さん早く案内して!」

「はい!こちらです!」

『このお姉さん、結構な曲者だよ、』

『ヒスイ、患者に関係ないことは後!』

『はい!』


 お姉さんを先頭に、カウンター横の横から廊下に入りすぐの所の部屋に案内された。仮眠室か?2段ベッドと2人掛けソファーが向かい合い、その間にローテーブルが置かれてる10畳そこらの広めの部屋だった。


「ぼーず、ベッドに寝かせりゃいいのか?」


 ベッドに寝かせろってか、ベッドだと幅が邪魔だからな、目についたのはソファーだ、背もたれとひじ掛けを斬り落とせばちょうどいい気がする。考えたら即行動、アイテムボックスから神刀を取り出し、居合抜きをしてスパッと背もたれひじ掛けを斬り落とし納刀。ベッドからシーツを剥ぎ取りソファーに被せる。


 ふと、子どもの身体じゃ、絶対に出来ないはずの居合が今出来た。もしかして、自分の手や鞘を斬る気がないから、透き通って出来た?

 リアルに考えて、鞘から刀を抜くのは出来ないはずなのに、出来た事が新しい発見だ。


「おいおいおい……いつの間に抜いたよ……」

「こっちに寝かせて!」


 角を生やした兄ちゃんが、怪我人をソファーに寝かせる間に、もう一つのソファーも同様に背もたれとひじ掛けを斬り落とし、上の段のベッドからシーツを剥ぎ取り同じように被せる。


「次着た人はこっちに」

「あぁわかった。」


 角を生やした兄ちゃんが部屋を出て行ったのを確認し、入口近くで受付の姉さんが、さっきからずっと、こっちを観察するように見ている。


「そこの姉ちゃんさ、暇ならこの子の服とか鎧を脱がせてくれない?」

「ぇ?」

「同性がやった方が問題ないでしょ? 早くする!」

「はっっはい!」


 その間に、もう片方のソファーに被せたシーツを手に取り、アイテムボックスからハサミを取り出し、余分な部分を切り落とした。切り落とした布をもって。


「胸や、局部の部分にこれをかぶせて見えないようにしてもらっていい?」

「はい」


 しばらく後ろを向いて、まずは身支度、上に着ている着物を2枚とも脱ごう、せっかくの着物が血だらけになるのは避けたい、使える手袋なんてないか、しかたない、このままでやるか、アイテムボックスからアルコールと洗面器を取り出し手を洗う、次に大気魔法を使う、目に見えない塵や菌等を消し、綺麗な空気のみの空間にする。これで少しでもリスクは抑えられるはず。神の手を使えば手っ取り早いんだろうけど、今以上に確実に目立つからな…… そんなことを思っていると。


「出来ました。」

「ありがとうございます。」


 猫耳娘の腹部を触れていくと、なにかの角にさされたのだろうか?傷口を見る辺り、円錐状の何かで刺されたといったところか、とりあえず痛覚と意識が戻らないように神の手発動させる。その後、穴が開いている腸の縫合を始める。


 腸の縫合をしていると、角を生やした兄ちゃんが案内して、さっきのいかつい鎧を着た兄ちゃんがローブをきた少女を担いで、部屋の中に入ってきた。


「その子はこっちに寝かせろだと」


 寝かせた子を見る辺り呼吸は若干荒いものの外傷はないようだが、ただ腹部付近の形状が何かおかしいが、直ぐに命に係わるものじゃないのは分かった。


『ナット、君の知識をみると。心拍数が弱くなったら教えればいい?』

『そうしてくれると嬉しい』

『OK』


 それが解かるだけでも大分違う、本当にヒスイが旅の相棒でよかった。


 全ての腸の縫合を済ませた時にふと、縫合するふりして神の手を使用すれば目立たないんじゃ? と思った。縫合した糸を抜きながら、神の手を使い綺麗に戻していく、その後、腹部に溜まった異物の排除をした後、腹部縫合する。こっちは神の手を使用してうわべの傷と縫合した跡だけを残して修復した。これで不自然ではないはず。


 こっちを観察するように見ている受付嬢に、


「すいません、こちらの子はこれで助かります。体を洗ってあげたりしてもらっていいです?傷口だけは気を付けてください。」

「はい!」

「あぁ、運ぶだけなら俺が手伝おう」


 受付嬢が、猫耳娘を毛布でくるみ、角を生やした兄ちゃんが猫耳娘を抱き上げ、受付嬢と一緒に部屋を出て行った。


 とりあえず、1人目終了!


 次は腹部の形状のおかしい子ぱっと見骨折だろうなぁ


触れると。腹部の臓器には、圧迫した痕跡があるが、異常が無いのが解かる。あるとしたら肋骨の一部が折れてるだけだ、これはなぁバンドを使って圧迫固定するべきなんだろうが、バンドなんてない、仕方ない、ここは使うか、神の手を使って骨折部分を修復した。


 ついでだったので、骨折の原因を見ようと彼女の記憶を見ると、闘牛用の牛が二回り位大きい魔物にやられてる。先の獣人娘が魔法使いのこの子を攻撃から庇う形で前に出たところ、獣人娘は腹部にざっくりやられ、勢いで猫耳娘もろとも背後の木か何かにたたきつけられたと…… 

 なるほど、骨折はその際に出来たってとこか、他の部分に異常が見られないのは、運がよかったか、担いできた兄ちゃんは、この二人と盾役として他の牛の相手をしてたのか、まぁ助かったならよかった。


「こっちの子も大丈夫ですよ。少し休めば意識を取り戻すと思います。」

「まじか、ありがとう!ほんとうにありがとう!なんてお礼を言ったらいいか」

「やれる事をしただけなんで、気にしなくていいですよ。」

「あぁ、俺の名は、アルフ、いつかこのお礼はさせてくれ、絶対にだ」

「じゃあ、いつか自分が困ったときお願いします。」

「あぁ今日は、本当にありがとう!」


 そう言って、女の子を抱き上げて部屋を出て行った。

 血だらけのシーツやら諸々を片付け、天然水を出して手を洗い一息ついた。

 ふぅ~なんか疲れた。既に窓の外はまっくらになっていた。


『そこにベッドあるんだし、少し休めば?何かあったら教えるからさ』

『あぁ、頼む』


ベッドに寄っていき、上に寝ころんだ。

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