第12話 旅立ちまでの2年間

戦いの後の2年間


 午前中は、ミアンと共に、ヒスイから薬効のある植物を色々と教わった。

 そしてそれぞれの育て方も教わった。


 ミアンが、何百年とかけて開花させたブルーローズは、状況に応じて魔素の与える量を調整しながら与えないとならないらしい、少しでも間違えば枯れてしまうとか、本来は上位精霊が居て育てる植物だと知った。


 何も知らない状況から試行錯誤して開花までこぎつけたミアンがどれだけ凄い事だったのかを知った。ヒスイが若返りを懇願してくるわけだ。


 ミアンからは、ポーションや薬品各種の基本的なつくり方を教わった。すりこぎでゴリゴリしたり、魔素水を使ったり、天然水を使ったりと色々な手順があったが、一通りの薬品を作れるようにはなった。


 自分からは、ミアンと両親に対して、医学と応急措置の手法を教えた。


 午後は、父親と母親をピーク時の20歳頃に若返らせてからの戦闘訓練をした。

最初の頃は、1VS1で、阿修羅様の加護のおかげか直ぐに槍・弓・剣の使い方をマスターした。


 個人的に、せっかくファンタジーな世界に来たんだから、アニメやゲームの中でしか存在しない技、3連撃ではなく、3撃同時攻撃なんてものをやってみたいと思っている。夕食後は、そのファンタジーな技が繰り出せないか鍛錬をしている。


◇◇◇◇◇◇


 2年後、ナット5歳の誕生日


 ミアン宅前の広場で、神の手で若返った、両親が目の前でへばっている。


「ふぅ、息切れもしてないか、全盛期の俺たち2人がかりでお前に勝てなくなる日が来るとはな、異界の神の加護は戦絡みの神か?」

「ほんとうに、使徒様って感じよね~5歳児に負ける両親って何なのかしら……」


 大分前に余裕で勝てるようになってはいたが、試験でもない状態で勝つ必要もないから手を抜いていただけなのだが、今回は試験って事だったので、手加減抜きでやらせてもらった。


 阿修羅様の加護のおかげもあるのか、メキメキ上達した。技を見ただけで、その技がどういう理屈でこういう事をしているというのが、瞬時に解かる。見取り稽古だけで、技を自分の物にできるのは阿修羅様々だろう。


 ヒスイからは、スキルに弓術と槍術が加わってるとか、刀術と体術は極めてる状態だから、他の武器を使って相手にしなと言われた。どこで極めてると判断しているのかわからないが……


「まだまだいけるよ」

「いや、俺らはもう体力的に無理だ」


 戦いの最中なら、体力が無限にあるような感覚だ、疲れることがない、これも加護のおかげだろうか?


 とりあえず、この2年間は、見たことのない技術を見せてもらったりと、楽しかった。中でも、矢落としや、矢掴みこの2つが出来るようになったのは個人的に興奮した。2方向からなら余裕で対処できるが、その先は協力者がいないので不明だ。可能なら100とかでも出来るようになりたい! そう思うようになった。


「さて、ナット、5歳の誕生日おめでとう、まずは、父さんからのプレゼントだ」


 そういって、父親から渡されたのは、自分の身分証明書とこの大陸の地図等の旅の道具一式だった。


「これがあれば、問題なく街に入れるだろう、半年後位にはなるが、ヴェンダル王国王都で、武術会があるはずだ、あの国は力こそがすべてって考え方だからな、興味あるなら参加してみろ」


 2年前の侵攻以降、戦らしい戦は一度も起きてない、理由は、この国を囲むように隣接するフェアレ獣王国とさらに北にあるヴォーネス共和国の2国同盟と戦争中らしい、さすがに3国相手に戦争は無いか、戦争と聞くと本当にファンタジーの世界に来たなぁと思う。


 とりあえず、武術会には参加しよう、まだ見ぬ強者の技を見て見たいし!行先は戦争大好きなヴェンダル王国の王都できまりだな。


「私からはこれを」


 母親から渡されたのは、紺色の衣に、白い袴の大人用と子供用の着物と、お金とお弁当だった。


 貰った着物を着ると、懐かしい気持ちとぴったりで動きやすい。何で着物……?


「手伝わなくても、着れるのね」


 そりゃ、居合や剣道をする際にいつも着ていたからね。


「なぜ着物を?」

「ミアン様から聞いたの、この国の英雄の1人である秋津則宗様は、生前のあなたの先祖様だったんですってね、その服はね、秋津様が興した秋津の国で一般的に着られてる服なんですよ。昔冒険者時代に、秋津にいって、お父さんが買ったんだけど、一度しか着なくてね~もったいないから、ナットにね、大きくなったらこっちのを使ってね」

「そのズボンはスースーして落ち着かないからな…… 」


 まぁ、袴は慣れないと落ち着かないよね。

 この世界に来て初めての和服を親から貰えたのが嬉しかった。


「ナットいつでも帰ってきなさいよ、私達はあなたの家族なんだから、彼女と出会ったら必ず連れてきなさい!それから……」


 母親の話がまだ続く、正直、両親の気持ちがうれしく自然と目に熱いものがこみあげてきた。自分は、思いっきり頭を下げた。


「今まで、本当にありがとうございました!」

「おう、男なら泣くな!元気で暮らせよ!なにかあったら、無理せず戻ってこい!」

「ナット、体に気を付けてね」


 両親に背を向け、周囲に色とりどりの薬草が所狭しと栽培されている。2年前に比べて大幅に種類が増えた。薬草が栽培されている中の道を通り街道を目指し歩き始めた。

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