第10話 村での戦い
ヒスイの後について行くと、収穫間近の麦や所々民家が燃えていた。
『酷い!』
村の所々で男達と騎士達が戦っていた。
女性や子供は姿が見えなかった避難しているからか?
村長宅あたりに大きな壁が建っていたため、村長宅が見えなかった。
燃え盛る火のおかげで心眼使わずとも見えた。
村人と騎士、村人の方が不利に決まっている目立ちたくないとか関係ない、近くにいた兵から斬りつけ村人達を支援した、村の中を走りながら、何人か斬っていると、ヒスイが叫んだ。
『ナットお父さんが危ない!こっち!』
ヒスイの後をついて行く、途中騎士を見つけては斬り、見つけては斬りを繰り返していく、前方に、剣を振り上げている騎士と、弓を片手に後ずさりをする父親が見えた。
このままでは間に合わない!もっと早く!縮地のように瞬時移動できる力が欲しい!と心の底から願った。
『あっ』
という、ヒスイの声が聞こえた瞬間、目の前に剣を振り上げた騎士が居た。
訳が分からず、斬る動作をしないで勢いそのまま体当たりをすることになった。
その結果左肩からおもいっきり騎士の太もも付近に突っ込んだ。騎士はふっとび、自分は左半身全体に痛みがはしった。
「いったぁ……」
「ナット!どうしてここに!?」
説明すべきか、そう思い、父親を見ると、右肩がばっさりやられ出血も酷かった。
「その肩!」
「大丈夫だ…… なんで、お前がここに居る?大婆様の所に居たんじゃないのか?」
父親の呼吸が荒い周囲をみるとあちらこちらに血痕があった。この状況だと出血量がまずい、失血死も時間の問題だった。
止血だけでもしないと危険だと判断した。
「大婆様にこの刀を貰った。何かあったらこの刀で戦いなさいと、戦い方もこの刀が教えてくれるんだ」
『よくもそんなウソを…… 』
ヒスイの突っ込みはスルーだ、しかたないだろう!それ以外に良い嘘が思いつかなかった。
なるべく被害が無いようにと思ったけど、親しい人が危険にさらされると考えたら甘すぎる考えだと思い知らされた。
倒れて気を失っているのか動かない騎士、これ以上村の人に被害が出ないように命を刈り取った。
「そうか、その為に大婆様が、お前を呼び出したのか?」
全然違いますがね……
「父さん傷口を見せて、手当しないと」
「ふぅ…… おまえ、手当なんてしたことないだろ」
そりゃそうだ、この世界に生まれてから医療行為なんて全くやってないが、生前は嫌というほどやってきた行為だ何をすべきか覚えている。
「大丈夫!わかるから!」
「まぁいい、お前の言うとおりにしてみよう」
そう言って地面に座る父親、父さんのいう事なんてどうでもいい、とりあえず、父親に触れて神の手で、血液量を正常値に戻しつつ血管の修復だけして止血した。
傷口をふさぐまでやると面倒な事になりそうだし、見た目わからない事だけをした。
アイテムボックスから、カーゼと包帯をだした。
「おまえ、その布はどこから?」
「大婆様から預かったんだよ、襲われるって言っていたんでしょ?」
「そうだな、大婆様からか、わかったその布を…… いってぇ!」
大婆様単語は凄い効果だすべてを信じてもらえる!父親が喋っている途中で、消毒用アルコールを傷口にかけた。
「なんだそれは」
「アルコール、傷口を綺麗にしているんだよ。」
カーゼを当て包帯を巻く、これ応急処置はおしまい。
「父さんも、村長の所に避難しておいてよ」
「あぁ、だがお前は?」
「残っている騎士達を片付けにいくさ」
「そうか、相手はヴェンダルの騎士だから気をつけろよ」
「大丈夫さ」
3歳児が戦闘に参加する事には反対しないのか?武器を持っているからか?父親とわかれ、現状知りたかった。
「ヒスイ、村の中に騎士ってあとどれくらいいる?」
『ん~?14人位かな? ミアンが結構やっているよ』
ミアン優秀!?
『弓で、すぱっすぱっって!1撃必殺狙撃!』
「ミアンってスナイパー素質があったの!?」
『君が武器適正あげたからじゃないかな、元々弓が得意っていっていたしね~』
「そっか」
早速役に立ててくれたならよかった。
「村人の被害は?」
『ん~重傷者が多いかな、亡くなっている人が1人』
母親じゃないよなと思った。
「母さんじゃないよね?」
『違うよ、君から一番年の近い女の子だよ』
村で自分を除いて一番近い子、13歳の女の子だ!
年齢問わず救いたいと思うけど、若くして命を落とすのは正直ダメだと思った。
「その子はどこに!?」
『ん、こっち!』
道中、見かけた騎士の命を刈り取りながら、ヒスイに案内されたのは、今も燃え盛る麦畑だった。ヒスイは関係ないとばかり燃える麦畑の中に入っていった、生身で燃える麦畑に入るのはちょっと抵抗があった。
試してみよう、大気操作魔法、目の前の麦畑の二酸化炭素率上昇!
すると、麦畑を燃やしていた火が徐々に小さくなっていき、しまいには完全に鎮火した。
案外便利な魔法かもと思いつつ、ヒスイの後を追った。
畑の真ん中付近にいくと、1体の女の子の亡骸があった。左足なくうつ伏せに倒れていた。
彼女に触れ、記憶を読み取った。
村長宅へ避難する途中、父親を襲っていた騎士に見つかり、襲われ左足は斬り落とされた。騎士は、這って逃げる、女の子をいたぶるように、あちらこちらを刺し、女の子が麦畑に逃げたのを確認したうえで麦畑に火を放っていた。女の子は恐怖心のなか意識が薄れていった。
正直、残虐な事をする騎士らに対して憎しみが沸いた。今まで極力命を取らないように対していたが、これが現実か甘っちょろい考え方をしていると本当に自分が後悔をすることを知った。
彼女に触れ、火傷や負傷している部分を治療していく、記憶は避難しているときまで戻す。破れたり所々切れている服だが、そこまでひどい状態じゃないから大丈夫だろう、改めて魂を戻す。
彼女が目を開け、自分を見ると。
「あれ?ナット?何しているの?早く逃げないと!」
「姉ちゃんが、麦畑に入っていったから!」
少女は、辺りを見渡し、不思議そうな顔をした。
「え?あれ?なんで?」
「良いから逃げよう」
「うん!」
少女と一緒に、村長宅へ向かった。少女は、切り落とされた左足が履いていた履物が無かったが、村長宅へ一生懸命に走った。
『ヒスイ、避難できてない人達はあと何人いる?』
『ん~あと2人だけど、騎士らから距離があるかな』
なら、まずはこの子を避難させようと考えた。
『この子を探すために出てきた人達が騎士と戦っていた感じだね』
ヒスイが、少し前を走る少女を見ながらそんなことを言った。
なるほど、父親が避難すると言っていたのにもかかわらず、多くの男らが騎士らと戦っていたのは、少女を探すために出てきたって事か、村長宅が近くなってくると、騎士達の死体が多くなってきた。
ざっくり見積もっても、50~60人位の騎士や兵が倒れていた。どれもこれも、鎧や兜の隙間に1本の矢が刺さっていた。
なるほど、一撃必殺狙撃ね、どう見ても致命傷にならないだろうって思える部位にささっていても倒れているのを見ると、なんらかの毒を使っているんだろう、そんなことを思っていると、村長宅を囲む壁の上から大きな声が聞こえた。
「アンナとナットが来た!」
壁の上を見ると、何人かの村人が、壁の上から顔を出していた。
村人たちがこちらの姿を確認した瞬間、目の前の土壁が崩れた。
少女と一緒に、土壁の中に入った。
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