第9話 開戦!街道での戦い!

 街道に出てしばらく走っていると、前方に複数のオレンジ色の光が見えてきた。


 一旦足を止め、街道脇の木の陰に身を隠した。

 

 医師なんて人の命を救う仕事をしていたせいか、人を殺すという事には抵抗があったが今は村の危機だ双方の被害が最小限で済むように願いつつ、目を閉じ神経を研ぎ澄ました。


 この世界に生まれてからすぐに心眼を身に付けられるように鍛錬を始めたが、その心眼は1歳になる前には身に付いていた。


 心眼を実戦で使用するのは今日が初めてだった。


 次第に真っ暗のなか、まずは周囲に、人型の赤いラインが浮かび上がった。


 馬型や木と草のラインは緑色だった。


 多分、敵対者とそうじゃない存在で色が別れるんだろうと思った。


 地面は正直真っ黒のままだから出っ張りがあったら転ぶ可能性があるけど、街道はきれいに整備されてるから大きなでっぱりは無いと信じた。


『ヒスイ、街道に居る兵以外にはどこにどれくらいいる?』

『ん~村の西の森に、だいたい100位かな、あとは国境付近にいっぱいいる!』


 国同士の戦争を始める気か?


 自分が感知できる範囲に居るのは300居ないくらいだけれども、国境付近に一杯ね、とりあえず行くか!と覚悟すると身体が軽くなった。


 斬るのは戦う意思と意識、そして武具のみ!そうイメージし、神刀を構えた。


 縮地が使えるようになりたいなと思いながら、兵士達の合間を縫うように斬り付けていく、1人目を斬り意識を刈りとった。


 目を閉じて心眼を使っているせいで防具も斬れているのかが分からないが、近くにいた2人目を斬りつけると1人目が倒れた音で、兵士たちの視線がこっちに向いたのが分かった。


「「「敵襲!」」」


 複数の兵達が敵襲と叫びだした。

 っち、気づかれるのが早い、でも大丈夫だと感じた。なぜなら戦い始めてから身体が軽くなり続けていた。


 自分でも、刀を振るう速度が上がっているのを実感していた。


 幅が5~6mほどある街道だ囲まれないように注意をはらい、こっちにきた兵士達を斬りながら後ろにさがったりした。


 大丈夫だ、鎧を着た大人達よりは早く動けている。


 ただ、意識を刈り取り倒れている兵士達が邪魔だと感じ、後ろに下がりつつ、突出してきた兵士を斬る、そしてその場に意識を刈り取った兵士達が積み上がってきたらまた後ろに下がるを繰り返した。


『甘いなぁ~、殺せばいいのに、殺したらアイテムボックスに死体がはいるよ』

『いやいや、兵士とかって普通に農民とかでしょうに』

『ここにそういう兵士もいるけど、殆ど王国の騎士団の人たちだからね?それに、こんなところで寝てたら街道を通った人に身ぐるみはがされて殺されることだってある。村人に見つかっても同じ、騎士達の身に着けてるものは高く売れるからね』


 どのみち殺されるのか、日本も昔は落ち武者狩があったのを思い出した。


 兵士達の練度の基準が解らないけど、素人を相手にしている感覚だった構えに隙が多いし、大振りな攻撃も多かったから、普段兵士という仕事をしていない農民や市民だと思っていた。


 きっとまだ騎士団の人間を相手にしてないのだろうと思った。


 下がりつつ斬るなどとやっていたら村の入口近くまで来ていた。


 これ以上下がると村のほうに行く兵が出てくると思い、これ以上の後退はまずいと判断し一旦街道から外れて森の中に入った。


 藪とかが邪魔だと感じ、適当に刀を振るい、藪や木々を伐っていく、伐った木を兵士たちの居るほうに倒したりしていると。


『ナット!西の森に居た兵たちが動き始めた!』


 こっちは、まだ200は残っているのに!さっさと片付けたいと思い、ヒスイにサポートを依頼した。


『ヒスイサポートを!』

『OK!森の中は私達の領域!』


自分の肩の上に座っていたヒスイが立ち上がり、怒鳴ると、辺りに落ちていた落ち葉や小枝が上昇気流によって舞い上がるようにして浮いた。


 すると、今度は兵士達を中心に、落ち葉や小枝が渦を巻くように飛び回わった。


 おかげで、兵士たちは足を止め、落ち葉や枝を切り落とそうともがいている。


『十分!感謝する』

『ふふん!』


 ドヤァ顔を決めてるのが、心眼中でも解る、わざわざ自分の目の前に移動してからのポーズ、ちょっとウザっと思った。


 松明を持っている兵達にも同様に落ち葉や小枝が渦巻いていた。松明の火が渦巻いている落ち葉や枝に移り、所々で火の渦が発生していた。


『わぁお~火の竜巻だ~すっごい~♪』


 すごくないよ!落ち葉や小枝が割とすぐに燃え尽きるため森林火災発生みたいな大惨事にはなることは無かったが火傷を負ったであろう兵士達には少し申し訳なく思った。出来るだけ相手方にも被害が出ないようにしていたが、負傷した兵が出てしまった。


 残っている兵士達を斬りつけ意識を刈り取っていくと、街道の奥の方に立派な鎧を身に着け馬にまたがっている騎士がいた。彼もまた落ち葉の舞に苦しめられていた。


『あ~この作戦の指揮官?隊長っぽい』

『了解』


 斬り捨てごめん!ジャンプしながら、馬ごと下から上へ斬りあげた。


 すると、馬の意識が無くなり馬が横にドスンと倒れた。

 

 騎乗していた騎士もそれに伴って落馬したが、落ち方が悪かった。


 頭を強く地面に打ち付けていた。


「『あ~』」


 一瞬自分とヒスイの声がハモった。


『もしかして』


 今のは、命に係わる落ち方だった。


『死んじゃったね……、まぁ他の兵士たちは無事だよ、松明の火のせいで火傷とか、木に押し倒された兵士が複数個所骨折したりしているし~』


 松明の火のせいで火傷ね、ヒスイお前のせいだと思うんだけどな、まぁ仕方ない、死者蘇生なんてする気はなかった。


「ヒスイ急いで村に戻ろう!」

『OK』


 意識を斬るなんてイメージしたけど、いつまで意識が無いままなんだろう?と疑問が湧いたが気にしないことにした。

 

 ヒスイの明かりを頼りに夜道を走って村へ向かった。

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