第7話 予知

 若返った事と、複数の上位精霊を与えられ、喜びと感謝の気持ちで、しばらく泣き崩れていたミアンだが、落ち着きを取り戻し、再び家の中に移動した。


「だいぶ先の未来も見えるようになっているねぇ、どこから話そうかね、今夜か明日の晩に、村は襲われるだろうね、家は燃えたりするが、死者は居ないみたいだね、一応どこか一カ所に集まっておくようには言っておいたからかねぇ」


 少女が、お婆さんみたいな喋り方をしているからか違和感を覚えた。

 

 自分はこれまで感じた疑問に思った事を聞いた。


「その予知って、どこまで正確に見られるんですか?」

「そうだねぇ、いつ起こるかは、はっきりとわからない、ただ、見えた時の風景や状況をみると、いつぐらいの季節に起こるかとか、ある程度なら予測がつくねぇ」


いつに起こるかわからないが、今日か明日の晩と言ったのは?


「今日か明日の晩と特定した理由はあるんです?」

「それはね、さっきまで3日後の未来が見えなかったからだね。おそらくこの予知は、自分の死より先は見えない仕組みなんだろうね」


 なるほど、なんか矛盾してない?

 どうしたら3日後とかわかるのだろうか?


「いつ起こるかわからないのに、3日後の未来が見えないってなんかおかしくないです?」

「そうだねぇ、ナット、3日後に何が起きるか、わからないかい?」


 何かあった?村での出来事を思い出してみるが思い当たる事が無かった。


「そうかい、お前さんはまだ知らされてないのかねぇ、3日後、シーナの子どもが生まれる予定日なのさ、それが見えないって事は……」

「子どもが生まれたかどうかが分からないってことは、その前に死んでいると……、そしてその前に村が襲われる予知が見えると」

「そう、ある程度決まった未来が見えないということは、その前に何かが起きているって事だからね」

「今は見えているんです?」

「あぁはっきりとね、予定日から1日遅れるが、無事に女の子が生まれるよ」


 幼き命が奪われるのかちょっと不安だったが、無事に生まれるなら安心した。


「それは良かったです。」

「ナット、君の両親には私が話をつけよう、旅立つのはまだ先だが、きっかけ作りにはなるだろうねぇ」


 村をでるきっかけか、遅かれ早かれ村を出ると思っていたが、いいきっかけなのかもしれないと思った。


「わかりました」

「3歳児とは思えないもの分かりの良さだね、これまでも使徒様には、秋津様を除いても2人に会っているが、皆年齢のわりには落ち着いている者が多かったねぇ」

「まぁ秋津直人として85年は生きましたからね、自分も中身爺なんですよ」

「ほっほ、なるほどね、人として80年生きれば十分さね、その落ち着きも理解したよ。さて、外は暗くなっているね、村まで送っていこうか」


 16歳の可愛いお姉さんに送られるのはうれしいけど、ミアンのほうが心配になる。


「いや、村までは良いですよ」

「そうかい、遠慮しなくていいのにねぇ、なら結界の入口までいこうか」

「まぁそれ位なら」

「そっかい、それじゃあ行こうか」


 ミアンの家を出て真っ暗な夜道のはずだが、ヒスイをはじめ、ミアンを取り巻く精霊達が辺りを照らしてくれた。


「ほっほ、精霊様の明かりは心強いね~ライトの魔法がいらないねぇ」

「そりゃね~今後は彼らが案内してくれるから、どんな暗闇でも安心して頂戴な」

「そういえば、ナットそのボアを譲ってはくれないか?」


 自分の腕の中で眠るボアを見ながら、そんなことを言って来た。


「動物好きなんですか?」

「いやなに、1人で暮らすというのは案外さみしいものでね、少しでもぬくもりのあるものが側に居てくれると大分変るものだからね」


 あぁ、その気持ちはとても良く分かる。自分も彼女を事故で亡くしてから、1人だったら気分が滅入っただろうし、ミアンの気持ちが分かる。彼女にボアの子を渡しながら思った事を伝えた。


「いいですよ、大事にしてやってくださいね」

「ありがとう、大切にするよ」


 ミアンの腕の中で寝ている。ボアの子を撫でながら、ちょっとだけボア子の記憶の改変と、適正武器を全部つけてみた。グレーダーボアに武器適正なんて必要なのかしらんけども、きっと、ミアンの事を守ってくれることだろう。


 そろそろ結界の外に出るかな?と思った時急にヒスイが叫んだ。


『襲撃は今夜だ!村が包囲されている!』


 それと同時に辺りを飛んでいた緑色の光の玉も忙しなく動き出した。


「なにがあったんだい??」


状況を掴めていないミアンが自分に尋ねた。


「王国兵に村が包囲されているらしいです」

「ナットどうする!?」


 どうするか、ここでの行動間違えたら多分、ミアンが見た未来が変わる可能性があると思った。


「ミアン、君は戦える?」

「弓と魔法は得意だけど、土魔法だから、防衛向きかね」


 やっぱり土魔法は戦い向きじゃないかと残念に思った。


「したら村長宅で防衛してくれない?皆そこに避難するって言っていたから、ヒスイも出来る限りサポートしてあげて」

『なにいっているの?私は君について行くよ?君の望みは彼女の周りにいる子達が叶えてくれるから大丈夫』

「そうですか」

「大精霊様はなんて?」

「ミアンの周りに居る子がサポートしてくれるってさ、ヒスイは自分についてくるって」

「だろうねぇ、名前つけてあげたみたいだし、契約者とのつながりは絶対だからねぇ、とりあえず私は村長宅に向かうとしようかねぇ、ナットも無事に戻ってきなさいね」


 そう言って、ミアンは暗い夜の道に消えた。

 精霊達の光が蛍のようだなぁ……とか、のんきなことを思った。


「ヒスイ、ここから近い隊はどこにいる?」

『この先街道にでたら右かな、街道沿いにワラワラいるよ』


 神刀 無銘を抜刀し自分も夜の道を駆けだした。

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