第3話 神刀 無銘

 この世界に生まれて、早3年の月日が流れた。この3年間で色々解かった。


 自分の顔立ちは、生前とは全く違う顔立ちになっていた。イケメンになりそうだが、この顔で彼女と再会しても気づいてもらえなさそうと思った。


 父親の名は、サント 農民&狩人として生計を立てている。

 母親の名は、カレン 農民&料理人として家計を支えているらしい、なんでも畑仕事が終わった後は、村の食堂で働いているらしい、割と美人!

 2人とも、20代後半から30代前半と言ったところだろう。


 そしてこの村は、ブライメリー王国領の隅っこにあるブラン村で、少し歩けば、ヴェンダル王国との国境が近い事、60人ほどの集落で、主に小麦と豆類の輪作で成り立ちっていることが分った。


 この村で、年の近い子どもが居ない、一番近い子で13歳になる女の子だし、おかげで3歳になったら適当に畑仕事を手伝ったのち1人遊びをすることが多かった。


 そんなある日の事、どうも大人達の様子がおかしい、畑仕事が終わったらいつもは狩猟に出かける父親が狩猟に出かけず、村長宅に出かけていった。


『なぁ、ヒスイ村に異変が起きているのか?』


 なにか異変が起きているのか分からないが、自分の肩に腰かけているヒスイなら何か知っているかなと思いつつ聞いてみた。


『ん~異変というか~お隣の王国兵が、村の西の森にグレーダーボアって魔物を誘導しているんだよね~近くに2頭のグレーダーボアがいるよ』


 十分な異変だよ!しかも西の森って家の目と鼻の先じゃないか、自宅は村全体から見て南西に位置している。


「そのボアって村人でも倒せるの?」

『ん~君の両親なら単身でもいけるかな?他は、総出なら行けるんじゃないかな?君なら1人で退治できると思うよ?やってみたら?』


 3歳児に魔物退治を勧める大精霊、それ以前に、両親なら単身でもって部分が気になった。


『両親なら1人でもいけるの?』

『うん、お父さんは剣を使えば余裕じゃないかな、お母さんは弓か槍を使えばいいと思うけど』


 剣と槍って家にあったか?父親が弓を使うのは何度か見ているけれども、剣を使っているところは見たことがない、とりあえず、やれるなら色々試したいことあるしやってみようと思った。


『そのボアはどこにいるの?』

『ん~やるならここに誘導しようか?』


 ダメだろ、ここは村の端だが村の中だ、こんなところで対峙したら嫌でも目立つと思った。


「いや、それはダメだ、自分から行くよ」

『そっか、んじゃ、こっちこっち』


 そう言ってヒスイは自分の肩から飛び自分の前をふわふわ飛び始めた。


 森の中に入ってしばらく歩くと、大きなイノシシが居た!

 体高が2m位ありません? 3歳児から見たら、巨体なのだが……、赤ちゃん時代に、ヒスイの世界植物視点ツアーで、一通りの魔物を見てきた。その中にもグレーダーボアが居たが、その時見たのと実物では全然違う。


 初実戦!

 ネア様から頂いた刀を少し抜いた。3歳児の身体には大きな刀だ、少ししか抜けない。見た目的には普通の刀だ、きれいな刃文、湾れ刃といったか?ゆったりとした波のような刃文だ、実体無き刃と言っていたが、どうなのだろうか?

 実際触れようとすると、触れられなかった。


 ネア様は言っていた。何でも切れるし、その逆もしかりだと色々試してみないとどんな刀なのかが解らんか、そう思い完全に抜刀した。気のせいか相応の重さがない気がした。


 こちら側が風下だからだろうか、まだボア達には気づかれていないが、おそらく足音などで気づくのは時間の問題だろう。


 気を引き締めた瞬間、体が軽くなるような感覚が現れた。


 対象まで数メートルというところで、気づかれた。


 1頭が、ブォ~~~と鳴くと、2頭が一斉にこちらに突っ込んできた。

 イノシシというより、牛では?と思いながら、グレーダーボアの突進コース上から少しずれて、刃を寝かせ突進してきたと同時に一文字斬り!思いっきり振ったが感触が全くない…何もきれなかったかと思ってみると、1頭のイノシシが真っ二つになっていた。


 ぇ?訳が分からない、手ごたえがなかったのに真っ二つ。どんなに切れ味のいい日本刀でも手ごたえは感じるだろと思った。とりあえず残った1頭を見据えた。


 自分と目が合うと、仲間の死体も突き飛ばして突っ込んできた。次はどうしよう1頭目はグロい……、今度は肉だけ断つことはできるかな?そう思い突進ルートから横にずれ同じように真横に一文字斬り!捕らえた!と思ったけれども、やっぱり手ごたえがない、突っ込んできたグレーダーボアを見ると横たわってもだえていた。


 もしかして肉だけ斬れたのか?神経や臓器が無事なら生きているだろうけども。


『わぁ~君残酷なことするね~なかの肉が真っ二つだよ、どうするの?』


 ヒスイは、横たわっているグレーダーボアの上をふわふわと浮かびながら言って来た。


「肉は斬れているのか?」

『そりゃもう、見事なくらいにね~骨や皮を切らずに肉だけを断つ!さすがネア様の刀だね~』


 なるほど、出来ているのか、少し残酷だがもう少し実験に付き合ってもらおう。

 血を絶つなんてやったら血抜きが出来るかな?試しにやってみると……


『あら~なにも変化がないみたいだけど、何をしたの?』


 ヒスイは、本当に便利だ、いちいち状況を教えてくれる。血を絶つはダメだったか、液体だからかな、縁が切れるなら出来るかなぁと思ったけども、とりあえず、この刀は、本当に凄いけど、慣れたらダメだな……この刀の銘ってなんだろうか?


「ヒスイ、この刀ってなんて銘なの?」

『ん~神刀 無銘ってなっているよ、名前つけることができるみたいだけど』


 名前……刀の名前……斬鉄剣ならぬ、斬全剣?いまいちだな、本来なら、作者名だからネアだよなぁ……しっくりくる名を思いつくまでこのままでいいか……


「まぁ今はいいよ、正直良い名が思いつかない」

『そっか』


 さて、このグレーダーボアをどうするかな。


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