第二章~底辺からの脱却~編
第四十三話 あまり変わりない新生活
【青の同盟】さんを見送った、その翌日。
昨日は三人のお見送りで全ての力を使い果たし、抜け殻状態となってしまったので、ボロ宿のベッドで寝転びながら【青の同盟】さんたちとの思い出に浸ってぼけーっとしていた。
あれだけアーメッドさん相手に啖呵を切って宣言したのに、早速一日無駄にしてしまったが流石に仕方がないだろう。
それだけ俺にとっての【青の同盟】さん達の存在は大きかった。
ただ、今日からは平常運転へと戻す。約束をいち早く達成するためにもな!
そう意気込み、一昨日教えて貰った剣の特訓方法を朝の特訓として早速実践する。
ボロ宿の前で三時間の剣の素振りを終えてから、俺は冒険者ギルドへと向かう。
三日間の遊びとプレゼント代でお金を使ったものの、補償金のお陰でまだ余裕があるし、無理に依頼を出さなくても大丈夫なのだが……単純に自身を鍛えるための魔力草が足らない。
残り手持ち金貨20枚前後あることから考えても、1本銅貨2枚の魔力草なんか別に買ってもいいのだが、値段を見てしまうとどうしてもお金の計算をしてしまう。
そしてコルネロ山で、腐るほど自分で採取出来ると言う思考に陥り、魔力草は買うに買えなくなっている。
未だに一泊銅貨3枚のボロ宿に泊まっているし、ギリギリの極貧生活を送っていたから貧乏性がついてしまったみたいだ。
節約出来ているのだし、決して悪いことではないんだけどね。
そんなことを考えながら、俺は冒険者ギルドへと辿り着いた。
ギルド内へと入るが……まず、入口から【白のフェイラー】がいないかを確認。
アーメッドさん曰く、もう‟絶対”に【白のフェイラー】とは遭遇することはないと断言してくれたのだが、やはり心配なものは心配である。
【青の同盟】さん達の後ろ盾はもうないんだからな。
これまで以上に慎重に行動しないといけない。
……まあ、でも冒険者ギルドも【白のフェイラー】捕縛のために動いていると言っていたし、冒険者ギルド内には絶対にいないか。
そのことに気がつきホッとした俺は、軽い足取りでクエスト依頼受付へと向かった。
「いらっしゃいませ。ここはクエスト依頼専用受付なのですが、よろしかったでしょうか?」
「はい。クエスト依頼をお願いしたくて来ました」
俺はいつもの受付嬢さんの言葉に食い気味で答える。
俺の食い気味の反応に、受付嬢さんも少し驚いた様子を見せた。
自分でも自分の発した声量にビックリしたし、利用手数料がなくなったことでテンションが上がりすぎている。
依頼を出すにも買取と同じく、手数料が10%ほど掛かっているようだから、手数料がなくなるのは本当に大きいんだよな。
「分かりました。まずはお名前と年齢、それから貴方様の職業と依頼したいと思っているクエスト内容を教えて頂けますでしょうか」
「はい。名前はルイン・ジェイド。年は十五歳。職業は無しで、依頼したいと思っているクエスト内容はコルネロ山までの道中及び、コルネロ山山中での四日間の護衛依頼です」
いつものようにここまで答えたところで、一つの疑問が頭に浮かぶ。
俺は顔を受付嬢さんに覚えられていないし、どうやって手数料がなしになるのだろうか。
特に割引札のようなものも受け取っていないし……もしかして、申告制とかじゃないよな?
毎回、‟クエストを途中放棄されて手数料を払わなくて良くなったルインです”。……なんて図々しい自己紹介を言うのは嫌だな。
一人でそんな妄想をしていると、俺の名前を書類に書いているところで、受付嬢さんが驚いたような反応を見せた。
「ルイン・ジェイド様ですか! これはいつも大変お世話になっております。それと、この間は大変申し訳ございませんでした。ギルド長からしっかりと申し付けられておりますので、何でもご指示ください」
無表情に笑顔を張り付けたようなマニュアル対応から、急にニコニコと態度を一変させてきた受付嬢さん。
それにしても何でもご指示くださいって……流石にやりすぎじゃないか?
「いえいえ、こちらこそお世話になっております。約束通り、手数料なしと優良冒険者の斡旋さえして頂ければ、いつも通りの対応で大丈夫ですよ。……下手に来られますと、どうやって接したらいいのか分からなくなってしまいますので」
俺がそう小声で伝えると、口をぽかーんと開けた受付嬢さん。
しばらくして俺の言った言葉を理解したのか、すぐに返事をしてくれた。
「……分かりました。それでは普段通りの対応をさせて頂きます。……それでなのですが、ギルド長自身が各ランクの優良冒険者をピックアップしてくださいましたので、紹介させて頂きます。どのランクが良いとかのご希望はございますでしょうか?」
おおっ! これは本当にありがたい。
あのギルド長が選んでくれた冒険者なら、まず大丈夫だろうからな。
それにしてもどのランクの冒険者か……。
ランクによって値段が変わるんだよな?
どうせ依頼するのはコルネロ山での護衛だし、Cランク以上は過剰護衛となるだろう。
「FランクからDランクまでの、冒険者パーティを紹介してもらってもよろしいでしょうか?」
「畏まりました。F~Dランクパーティをそれぞれ紹介させて頂きますね」
こうして俺は、受付嬢さんから冒険者パーティの紹介を受けることとなった。
一つある疑問としては、冒険者パーティ側が護衛依頼を嫌がっていないかなのだが……そこら辺は多分上手くやってくれているだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます