第42話

 睦空

 私は緋弥が正しいとは思えない。睦空を信じていたい。あなたが私を大切にしなかったとしても、私の期待に応えなかったとしても、ただ一人の信頼できる人でいて欲しい。その願いは叶わないのかな。私は緋弥を認めるべき?彼を信じるべき?何もかもがわからない。睦空は答えを知っているの?今何をしているの?どうゆう気持ちでそこにいるの?

 疑問はいくらでも出てくるのに、答えは何一つとして出てこなかった。

 睦空に会いたかった。でも、それと同時に会いたくなかった。緋弥の言葉通りの睦空を見てしまうのが怖かったから。

 行く当てをなくした私は、ふらふらと街中を歩いていた。笑い声に腹が立つ。街を彩る装飾に腹が立つ。真っ暗で静かな私と対照的なものに腹が立った。どうしようもないこの気持ちを誰かに打ち明けられたらもう少し楽になるのかもしれない。でも、私はこの気持ちを誰にも理解して欲しくなかった。私だけの悩みであって欲しい。なぜかそう願う。

 正しさなんていらない。本気でそう思っている。あなたさえいれば、それでいい。なんてお話の世界の中だけのことだと思ってたけど、いるんだな。そういう人が。


 言葉でしか表現できない思いも、感情でしか表現できない想いも、全て同じ類の思想。


 私は何を間違えたのだろう。どこで道を踏み外したのだろう。

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