第36話

「簡単言えば、お母さんが警察で、お父さんが詐欺師だったってこと?」

 簡単に言えばそうだ。電話で、如紀ちゃんに伝えた。色々と要らない装飾をしてしまった。ちなみに、皐奈ちゃんには、緋弥が伝えている。

「信じられる?」

 私は信じられない。だから同意を得ようとした。それで少しでも気が楽になるように。

「今はまだ難しいけど。私たちはその事実を証明しようとしてるから、なんだか、何とも言えない。」

 如紀ちゃんの言葉が未熟な私に喝を入れた。私たちが今、実行していることは、どれだけ恐ろしいことなのか。どれだけ虚しいことなのか。再確認をした。

「でも、全く信じられないわけじゃない。」

 想定外の言葉に耳を疑う。

「違和感は感じていたから。詐欺師ってのも。納得できるかもしれない。」

 涙が出そうになる。ただ共感が欲しかっただけなのに、現実を押し付けないでほしい。納得しないで。

 嘘だって笑ってほしかった。私にはそれができないから。

 もし、そうしてくれたら、自分を信じ込ませることができるのに。

「そう。」

 返事を受け付けない返事をする。

「でも、どうせならお父さんは無罪でいて欲しかったな。あ、ごめん。」

 つい、声が漏れてしまったというように感じた。

「いいよ別に。私だって逆の立場だったらそう思っているから。」

 誰だって影では、人に価値を決める。順位を決める。でも、それは仕方ないことだと思う。それまでどれだけ親密な時間を過ごしたか、がそれを左右する。

「それじゃあね。」

 返答も待たずに電話を切る。


 どうして私はこんなに臆病なのだろうか。

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