第14話

「もう犯人探しはしなくていいわ。」

 旅行の思い出に浸っていたころ、突然母に言われた。

 え?思わずそう返した。

 犯人探しを続けたかったわけではないが、ほぼ初めて母に責任の必要な仕事を任せられたものだから、少し寂しくなった、だけだ。

 私の役目が一瞬でなくなってしまい、無職になってしまったのと、同じ感覚を覚えた。まだその経験をしていない私がそう言うのも、おかしい話かもしれないけれど。

「なんで?」

 結果的に母はその質問に答えなかった。

 なんだか、道徳上の問題だとか、心が痛いだとか、仮の理由は聞こえた。旅行を通して感じたものがあったのかもしれないが、それが本当の理由には思えなかった。核心をつくような理由は聞こえなかった。

 経験上、これ以上話してくれないことはわかっていた。だから、こちらも曖昧な返事をした。

「ふーん。まあいいや。」

 何がいいのか、伝わっていないだろうが、伝える必要もないと思った。


 それを機に兄と会話を交わす機会もなくなった。簡単に言えば、話題がなくなったからだ。しかし、意図的に避けられているような気もしなくもない。それが事実だとしたら、悲しいので考えないことにした。

 

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