第3話

 部屋に戻ってフカフカのお気に入りベッドの上に座った。

 空色のソーダを飲みながら、母の言っていたことを考えた。そもそも推理ドラマのように犯人を探したいのであれば、容疑者になりうる人の前で事案を明かすべきではない。初っ端から間違っているのだ。

 しかし、一体誰の仕業なのだろうか。全く検討がつかない。

 兄は引きこもりだ。食事と排泄意外、基本的に部屋で済ませている。リビングに一日一回降りてくるのも珍しいくらいだから、犯人だとは考えにくい。

 姉はJ K生活を謳歌するとかなんとか言って、家にいるよりも外出している時間の方が長いくらいだ。しかし、外で何をしているのか、わからない限り、お金に困っているのか否かは知り得ない。

 緋弥の口答えの生意気さを考えると、悪戯でやりかねないのだが、度胸の必要なことはできそうになさそうだ。

 妹はまだ三年生だ。それに普段のあの純粋な様子を見ていても、お金を盗むようには思えない。

 一人一人を分析していて、感じたことが一つある。客観的に見て、私が限りなく一番怪しい、ということだ。前科があるだとか、常に非常な行動をしているとかいうわけではないのだが、何も特徴がない限り一番染まりやすいのだ。強い意志を持って否定できる私でさえ、疑っている(自分で疑っているわけではないが、あくまで客観的に見て、ということ。)のだから、母から見たらおそらく、最重要人物なのだろう。だからといって、別に何かしようと思っているわけではないし、何も変わらず生活していたら、誰も疑いはしないだろう。第一、母を除いては、誰も気にしていなさそうだったしね。

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