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「ときどきじゃないじゃん」


 歩道橋の、上。また、彼が来た。


「いつもいるじゃん。ここに暮らしてんの?」


「まぁ、任務地が近い」


「うそじゃん」


「うそじゃねぇよ」


 なんか。慣れてきた。


「ねぇ」


 彼に、問いかける。


「ここで、ひとを眺めて。たのしい?」


 というか、わたし自身に問いかける。


「わからん」


「わからないんだ。へぇ」


「わからんことは、わからんよ。ただなんとなく、ここにいるだけだ」


 なんとなく、か。


「わたし。この、歩道橋みたいだな、って」


 ずっと、ひとり。


「なんかね。生きてる心地がしないの。気付いたら、ここにいて。歩道橋の下を眺めるだけ。そんな人生」


 これからも。ひとり。


「顔はいいのに、誰も近づいてこない」


 無言。


「何か言いなさいよ」


「いや、すまん。突然語りはじめたから、気持ちよくなってんのかなと思って」


「ばかにしてんの?」


 にやにや笑いやがって。むかつく。


「顔がいいからだろ。誰も寄りつかないのは」


「は?」


「顔が良すぎれば、そういうこともある」


「じゃあ、あんたは何。わたしの顔目当て?」


「まあ、そんなところだな」


「うわ」


「冗談だよ。意味はない。俺もおまえと同じ。意味はない」


 わたしと。同じ。


「しんじまったから、次の戸籍が出来上がるまでは暇なんだ」


「そうなんだ。辻遥井つじはるいさん」


もと辻遥井つじはるいだよ。今は名無しだ」


「名無し」


 そういえば。


「わたしも。名前。無いなぁ」


「そうか。名がないか」


 隣。

 男の顔が、一瞬だけ、くしゃっとなった。泣いてるのだろうか。

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