第2話

 なんとなく。遥井のことを考えながら、歩道橋にいる。あの男。

 遥井というのが、まさか名前だったなんて。

 どこにでもいるようで、どこにもいないような男。殺そうとして、殺されたのだろうか。この下の交差点に、普通に歩いていそうな。そんなやつ。


「よぉ」


「は?」


 なんで生きてんの。


「あ。ニュース見た?」


「うそ」


「なんだ。せっかく見せて自慢しようと思ってたのに」


 何を。何を自慢するんだよ。しんだことを自慢でもすんのか。


「なんで」


 生きてるの。言おうとして、やめた。殺すのができるひとに、いきるとかしぬとか、あまり言わないほうがいいかも。なんて。


「なんで生きてるのかって?」


 遥井。だまる。


「あ、そうか」


 交換条件なのね。


「どうぞ。質問どうぞ」


「じゃ、遠慮なく」


 どんな質問が来るだろうか。ちょっとだけ、身構える。


「どこから、覚えてる?」


「は?」


「あ。いい。今ので、回答を得た。次は俺の番」


 は?


「任務柄、だよ。死ぬのも任務のうちさ」


「任務」


 任務?


「任務の内容についてはノータッチだな。言って分かることでもない。殺しってだけだ」


 殺し。


「殺すのが。そんなに楽しい?」


 あっしまった。質問。


「べつに。特に感情はない」


 あっ普通に答えるんだ。


「なぁ」


「はい」


 質問くるな?


「明日からも。ここに。来ていいか?」


「は?」

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