第2話 思い出(モミジ)

「キテー、凛桜〜起きてー!!!」


「ハッ、あれ?寝てた…」


「なになに笑 いい夢でも見てた?笑」


「いや、、ってか笑いすぎだよ陽向!」



(なんだ…。夢か、まぁそうだよね)


どうやら私は夢を見ていたらしい。三年前の、あの春の日の夢を。



「三年前のさ、ほらあの日。陽斗に出会った日。あの時の夢、見てたんだ。」


そううつむいてつぶやく私をチラッと見て陽向は優しく言った。


「そっかー、もう三年も経ったんだね。」


「うん…。」


「凛桜めちゃめちゃ愛されてたもんなー笑」


陽向の言葉と共にその頃の思い出が一気にフラッシュバックした。



-三年前-


あの日、私をボールから守ってくれた彼とは、たまに廊下ですれ違って挨拶したり、連絡先を交換するくらいの仲になった。



「凛桜ちゃん、だよね???」


部活へ向かう途中。三年の先輩、二、三人に声をかけられた。


「そうです、けど。えっと、?」


「あー、ごめんごめん!俺達、陽斗の友達なんだけどさ」


先輩達はそこまで言うと、不思議そうにしていた私の顔を覗き込んで


単刀直入たんとうちょくにゅうに聞くけどさ、陽斗のこと!どう思ってる、??」


「どう、?いやまぁ、良い人、?」


嘘ではない。私をボールから守ってくれたんだし、それ以上のことはよくわからない。


「そっかそっかー、恋愛対象としては見れない、かな?」


先輩達は遠慮気味に聞いてきた。


「っとー!そこまで!!はい帰った帰ったー」


慌てて先輩達を追い払ったのは陽斗だった。


「ごめんね?困らせちゃったよね、」


そう言って謝る彼の目を見れないのはどうしてだろうか。


「あ、いや全然大丈夫です、」


咄嗟とっさに出た言葉があまりに可愛くない返答で心の中で反省会をする私に陽斗は言った。


「こう言うのはちゃんと言いたいんだ。」


「へ?」


よくわからなくて思わず聞き返した。


「好きなんだ、!初めて会ったときから。凛桜ちゃんが好き、なんだ。」


真っ直ぐ私を見つめる目から本気なんだってことはよく伝わった。


「その、私、。」


「大丈夫!返事とかすぐに求めてるわけじゃないし、困らせたくはないから、」


戸惑う私に気を使ったのか彼はそう言って部活へと走り去って行った。



ドクドクと加速する心臓の正体がなんなのか、この時の私はまだ知らなかった。




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