第十二集 美麗
宵の宴も終わり、次の日、族長たちに挨拶も終えて出発した
家に帰れるとあり、朱燕軍も兵部侍郎の一団も、足取りが軽かった。
それもそのはず、
さすがに食事に薬を混ぜるのは卑怯すぎるかなと思い、やめたのだ。
五日後の朝、無事に都に到着。
「あら、おかえりなさいませ、
「
「もしや、また甲冑のまま⁉」
「ちゃんと正装に着替えていましたよ。そうしないと
「ふぅ。安心いたしました」
「わたしは部屋に戻るところなのですが、何か困ったことはありませんか?」
「いえ。頂いた関節痛に効く軟膏はまだありますし、よく効いているので元気です。いつもありがとうございます」
「いえいえ」
「な!
「
「ひぃえ……」
母親に似たのか、甘い顔立ちはどこぞの姫のように美しい。
幼い頃はよく女児に間違われていたようで、他国の貴族から「ぜひ息子の嫁に!」と求婚されたこともあったほどだという。
「な、なな、何のお仕事ですか? 薬術師として? それとも
「もちろん、
「ひぃえ……」
「お仕事はまぁ、いいのですが……。何故弟君の屋敷に?」
「
「は、はあ……、左様ですか」
「まぁ、会いに来たというのは建前で、
「そ、そうですねぇ」
「それで、だ。私の親友が営んでいる
「ぎ、ぎぎ、妓楼⁉」
「おい、まさか行ったことが無いのか」
「な、ないですよ! お給金もそこまで多くないですし、そ、そんな、び、びび、美女だらけの高級な場所、目もお財布も疲れてしまいそうです!」
「あはははは! お前、
「そりゃ、色男が腕を組んでいけば
「なんだよいきなり、拗ねるな
「え、あ、はい……」
「怪異だ」
「怪異? 幽霊は、まぁ、そりゃ出るでしょうね。どこにでも出入りできるようになったら、まずは妓楼に行くって奴もいるでしょうから」
「いや、それがな、実体があるようなんだ」
「では、妖怪の類でしょうか」
「それはわからないが……。まだ
「……え。まだ客もとっていないのに、ですか? それでも、妓楼なんですから堕胎薬があるでしょう?」
「飲んでもダメだったらしい。月のものが一向にくる気配が無く、お腹も膨らんできているのだとか」
「では、手術は?」
「そこがさらに奇妙でな。堕胎手術をしようと専門の医師を呼び、妊娠した妓女に近づいたら、どういうわけか全員熱病に侵されてしまったのだ」
原因不明の妊娠に、熱病。
「……通常の薬が効かない異常な妊娠で、さらにはなんらかの
「それは保証できるそうだ。なんせ、元貴族の娘たちだからな」
「……ああ、親が投獄されてしまったから、国が管理する
「そうだ。貴族が大罪を犯せば、成人している男は皆牢獄へ。女性と子供は皇宮のすぐ近くにある
「……わかりました。調査に行きましょう」
「頼んだぞ!」
「……え?
「私は忙しいからな」
「ぐぬぬ……」
たしかに、
それはもう、あらゆるところから仕事が舞い込んでくる。
「で、では、一人で妓楼に行けと?」
「私の親友が案内してくれるから安心しろ」
「では、いつ……」
「今夜頼む」
「こ、今夜⁉」
「ああ。じゃぁ、親友には言っておくから! 私は
「え、え!」
「ほら、いろいろ準備があるだろう? 昼寝とかもしておかないとな!」
「ひぃええ……」
爽やかな美しい笑顔で去って行く
(なんなんだ! 顔の良い奴っていうのは、人生で断られたことが無いんだろうね! けっ!)
心の中で悪態をつきつつ、
言われたとおり、準備しなくてはならない。
人間の女性を生殖行為無しで妊娠させ、
服も良い物を用意しなくては。
初の妓楼。
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