第三集 都合のいい解釈
「結構いるし、なんならもう食べられてるじゃん、人間」
食い散らかされた骨の中にある三つの骨盤は人間のそれ。
どうやら骨までは食べない種類の
「豚じゃないだけいいか」
豚型の
「この歯形は……、猫」
猫の
もともと霊感の強い動物だ。邪悪に染まった木霊に憑依されやすいのだ。
「
「さぁ、出てこい」
風を起こし、においを山中へと滑り込ませていく。
「ぎにゃぁああああ」
可愛らしい猫とは違う、狂気じみた鳴き声がこだまし出した。
「ほら、こっちだよ」
「ぎにゃ……。きしゃぁああああ!」
五体の猫型
「あ、ちょっと! わたしあんまり強くないんですから!」
人間たちから奪ってきたのだろう。なかなか立派な甲冑と武器だ。
腕力では絶対に叶わない。
「うわ!」
振り下ろされた斧と剣。
「わたしは猫が大好きなんだ! お前たちみたいな
「わたしが妖精女王〈
――
その切っ先には何かの液体がしみ込み、艶やかに濡れている。
次に杖を振るうと、矢はまっすぐと三体の
「ぎにゃぁああ! ……にゃ?」
「
「
いくつもの光る眼がこちらを見ていた。
「おいで? 遊ぼうじゃないか」
そして、こちらに向かって走ってくる
口から泡を吹き倒れ痙攣する
「君たちの血で呼び寄せておくれ」
勢いよく流れる赤黒い血液。
生臭いにおいが辺り一面に充満し始めた。
「……来たぞ」
低い唸り声。
「
爪から滴る血はおそらく人間のもの。
針のような毛は黄色に黒い縞、そして返り血の赤。
(人面ということは、けっこう人間を食べているな)
今目の前にいる
両手には青龍刀。意匠も凝っている。
人間の士族から奪ったものだろう。
「言葉がわかるか、
「
「名前まであるのか」
名はその者の命運を縛る
彼は『
もともと話が通じない相手ではあるが、相手に思考があることにより、正義の対立が生まれてしまった。
(人間は本当に
「あなたを退治しに来ました」
「なぜ」
「人間を殺すからです」
「生きるための食料だ」
「……ですよね。なので、わたしがこれからすることは、殺人と変わりはない」
銀色の閃光。目の前をかすめていく切っ先。
頬から血煙があがった。
「……お前、人間ではないのか」
「ええ。違います」
「なぜ俺を殺す」
「人間を食べるからです」
「お前は食べないのか」
「食べません」
「そうか」
名前のごとく疾風迅雷の斬撃と破壊力。
体力には自信がない
木が根元から弾ける。すごい力だ。
直撃したらただでは済まないだろう。
また血煙。腕が切られた。
「お前、甘すぎてくさいぞ」
「
杖を振り、幾千もの矢を産み出し、目くらましにしながら後方へ宙返りし避け続ける。
「こざかしい」
「戦うの得意じゃないので」
「……痛い。……ん?」
「お花……、蝶々……」
うわごとを口にしながら唸っている。
倒れるときに青龍刀の一振りが腹に刺さったようだ。それでも、痛みはさほど感じていないだろう。
「ふぅ。やっぱり
結構限界だった。
腕力もなければ持久力もさほどない。我儘に自分勝手に生きてきた結果なので致し方ないのだが。
それでも、人間よりは少しマシだろう。
「わたしが人間だったら、とうに死んでる」
気付けば日が暮れ、夜がもうすぐそこまで迫っていた。
戦いの中で移動した結果、結構山奥まで来てしまった。この時間に下山を始めるのは自殺行為だ。
「やっぱり泊りだ。今日は
スッとその中へ入っていく。
「ただいま、我が屋敷」
中は
色とりどりの草木が風に揺れ、一年を通して桃の花が開いている、とても幻想的な世界だ。
丹精込めて育てている薬草畑からは、清涼ないい香りが漂ってきている。
「これを見られたら、
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