彼女は泣いていた。

***

メリカ・リリス。

「…………」

彼女はベッドの上にいた。

カーテンの隙間から光が差し込んでいる。窓の向こうで鳥が鳴いていた。室内に人の気配はなかった。静かで穏やかな朝だ。

メリカはベッドから出て、部屋の隅にある鏡を見た。

「……」

メリカは顔をしかめた。

顔にあざができていた。左の頬骨に青アザ。鼻の脇にも切り傷がある。首筋の肌は内出血で斑になっていた。メリカの服はところどころ破けている。

「……痛い」

身体中が痛かった。特に腹と背中がひどい。痛みで身動きが取れなかった。全身に激痛が走る。呼吸するだけで、つらい。……痛いよ。誰か助けて。痛いの。

彼女は泣いていた。

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