セグエラグポイントフォー
***
ノーマと別れたメリカは地上に降り立った。
ここは
ここには
この月の基地からなら、他の《はこぶね》の位置が分かる。
月面歩行船、
メリカは《ムーンライドアイランドステーション》に向かった。ステーションのゲートでIDカードを見せようとしたとき、背後から声をかけられた。
振り返ると、そこに一人の男が立っていた。
男は二十代後半だろうか。黒髪の長身痩躯で、白いワイシャツに黒いズボンを穿いている。彼は右手を胸にあてて一礼した。メリカは彼の顔に見覚えがあった。記憶の底を浚う。すぐに思い当たった。彼を見たのは初めてではない。
男は口を開いた。落ち着いた声で告げる。
――メリカ・リリスさんですね。
メリカの表情が凍り付いた。なぜ彼が私の名前を?混乱しながらもメリカは答えた。
彼の名を呼ぶ。
――アルコン人……、……ですか。
メリカは男を見据えた。男の目には懐かしさが宿っていた。男はメリカに言った。
――そうです。お久しぶりです。お元気そうですね。
メリカは動揺した。こんなことがあるはずがない。あり得ない偶然だ。目の前にいるのは間違いなく人間だった。だが同時に、彼はメリカを知っているようでもある。いや、知っているどころの話ではない。まるで旧友のような親しみが込められていた。……そんなわけがない。私が彼と会っている?ありえない。絶対にない!……いったいどこで? その時、メリカの心の中で閃光が走った。……そうだ、あの時の!
――……あぁ、なるほど。……そういうことですか。
そう呟いて、彼は納得したように微笑んだ。メリカは彼に問うた。
――いつ、ここへ? 彼は即答した。
――たった今ですよ。
それは、あまりにも自然な返事だった。一瞬、メリカは言葉を失った。……まさか、……信じられない。――メリカ・リリスさん、僕の名前はアルヴィン・ランフォードといいます。
アルヴィン・ランフォード……、……ランスロット。メリカの脳裏に過去の情景がフラッシュバックした。
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