第33話 真新しい写真

麗奈は、高齢者専用住宅の施設管理長に就任した。元夫の拓也は社会福祉士である麗奈の事を見下していた所があったが、麗奈は業界でそれなりの地位を築いていた。特に学会で発表した数々の論文は、高評価を得ていた。


その高齢者専用住宅は、60歳以上なら入る事ができる。賃貸と購入物件があり、環境のよさから既に沢山の問い合わせが来ていた。


麗奈が就任した後、続々と各住宅に入って行った。


中には身の回りの事全てに手伝いが必要な方もいて、常勤のケアマネージャーがケアプランを立てている。


ある日、麗奈はロビーで、話し込んでいる車いすの女性と、若い男性を見かけた。


車いすの女性は泣いているみたいだ。


麗奈は気になり、近づいて行った。


車いすの女性は、80歳くらいに見え、酷く憔悴しているようで、若い男性に必死に頼み込んでいる。


高齢な女性が言った。

「お願いだから、そんな事やめてくれ。私は死んでもいいから。」


過激な発言に驚いた麗奈は、声をかけた。

「どうされましたか?」


その麗奈を見て、男性が驚いたように言う。


「麗奈?麗奈じゃないか?覚えている?徹だよ。」


麗奈は男性を見て、驚き言った。


「え?徹君?隣に住んでいた。じゃあ、こちらは菊さん?」


驚いた事に、そこにいたのは、父方の祖父母宅の隣に住んでいた幼馴染だった。


「久しぶりだね。麗奈。急にいなくなるから心配していたよ。叔父さんもすぐに亡くなっただろ。」


「ふふふ、本当に久しぶりね。今、私は、この高齢者専用住宅の施設管理長をしているのよ。」


徹は、麗奈をまぶしそうに見て言った。

「そうか、凄いな。俺は、、、、」




徹は現在ホストとして働いているらしい。元々は介護福祉士をしていたが、祖母に介助が必要になったため、できるだけ収入がいい仕事へ転職したという。


徹は、整った外見をしており、それなりの収入を得ていると告げられた。


二人が話し合っていたテーブルの上には数枚の写真が並べられていた。


自分の為に水商売をする孫を心配して祖母が泣いていたらしい。


麗奈はその写真の一枚を見て驚く。













そこには、徹の横に、あの女が映っていた。

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