アンチ主人公に愛を

古原湖澄

第1話やっぱり嫌いだ

俺はこの世界の主人公では無い。

いわゆるモブの存在だ。

主人公はまた別にいる。

はっきり言っておこう…皆は主人公に対して補正が付いてるのがおかしいと思わないか?

一般的に考えて幼稚園からの幼馴染なんて高校まで一緒なんて無いし、昔から天才肌っていうのは全く持ってありえないと思っている。

そんな偏見を持ったまま俺は生きているのだ。

ちなみに言うと俺は、スポーツ以外はごく普通で悪い所をあげるとしたら見た目がめちゃくちゃ地味で陰キャなところだ。

片方の目には髪がかかっており、別に前髪上げてもイケメンと言う訳では無いのだ。

あっ、そういえば俺の名前を言っていなかったな…俺の名前は、夜月零だ…。

ー登校中ー

遥々俺は何気なく高校受験をし、いつの間にか受かり、気がつけば入学していた。

これから退屈な生活が始まるとなると平和だなとつくづく思う。

先に言っておこう…俺は鈍感ではない。

察して欲しい時は察するし、感じて欲しい時は感じるのだ。

それをふまえて俺は、新しい生活が始まる。

「ここが、これから3年間俺が通う事になる高校かー。」

ここは爲見高等学校。

ここの卒業生は有名人ばかりだ。

タレントとして活動している人や芸能人として活動している人もいる。

そんな学校に俺は入学する…。

ー数週間後ー

あれから何週か経って今なおボッチだ。

多少の友達は出来たが陽キャの目からは痛々しい…そんな目をしている。

俺からにしてはどうでもいい、ただ仲良くするだけで満足だ。

「ねぇ…ねぇってば!!」

「なんですか?」

今話しかけてる子はクラスでトップな存在…

瀧井美紗奈、茶髪でポニテ、ギャルな性格だ。

「なんですかじゃないわよ、早く紙…提出してくれる?」

「あっはい、ごめん。」

「ったくもう、次からは気をつけてね。」

そう言って美紗奈さんは教室を後にした。

あとを追うように俺は教室から出た。

家に帰ってからというものの早速俺はアニメを見た。

…やはり、主人公はクソだ。

鈍感過ぎて見てるこっちが腹立つ。

しかも勝手にたらして気がつけばハーレム状態ってやはり俺は主人公を好きになれない。

それとは切り離して自分の世界に入る。

俺には趣味がある、それは音楽だ。

昔から音楽が好きで自分もやりたいと思った。

お小遣いとバイト代を貯めて機材を揃えた。

ネットで何十曲と出していつの間にかファンが出来て有名になっていた。

別のアカウントでラップと歌ってみたを出しそっちも有名になっていた。

皆の応援メッセージを見てまた頑張れる。

翌日、学校に行きいつも通りにボッチ飯食おうとして場所探していた時だった。

「私が彼女に何かした?」

「でも、彼女がそう言ってるから…。」

「だからって私を疑うの?信じられない!!」

あれは美紗奈さんとこの世界の主人公である比井野昴斗だ。

その隣は、樽谷花菜だ。

あの3人が揉めてる…。

「とりあえず、謝ってくれ…。」

「ッ!!」

(ん?今一瞬ニヤッとした?)

「ごめん…なさい…。」

「彼女もこう言ってるし、許してくれる?」

「う…うん…。」

「こんな真似しないようにな。」

「わか…った…。」

そう言って2人は去っていき、美紗奈さんだけが残った。

今の彼女はとても悔しそうだった。

下を向いていて拳を握りしめていて今でも泣きそうだった。

(とりあえず今は1人にさせないとな)

そう思った時だった…。

「誰か居るのよね?そこに。」

「どうして分かったんだ。」

そう言って出てきた瞬間、俺の胸に彼女は飛び込んできた。

「なっ!!」

「迷惑と分かっているわ、でも落ち着くまでこのままで居させて。」

そう言って泣き始めた。

しばらくして泣き止んで落ち着いてた。

「大丈夫、もう平気だから。」

彼女はそう言って無理やり笑顔を作っていた。

「そう…ならいいけど。」

そして俺はその場から離れようとした時…

「待って!!」

「なんだ?」

「私に何も聞かないの?」

「聞きたいのは山々だけど別に話したくないのであれば無理に話さなくて良い。」

そう言って後を去った。

翌日のこと…。

いつの間にか昴斗の周りに人が集まっている。

情熱的な人や応援するような人が真ん中に集まっている。

そういうのが俺は嫌いなんだ。

無理に応援しても無意味だと思っているし、ただ後を押してくれるようであれば普通だと思える…けれど、熱いだけじゃ意味が無い。

そんな感情を抱いていると、話しかけてきた。

「零斗。」

声が聞こえる方に顔を向けるとなんだか照れくさそうだった。

「改めて、昨日は本当にごめん…。」

「良いよ、別に気にしないから。」

「お礼になんでもしてあげるよ。」

「ん?なんでも?今なんでもって言わなかったか?」

「言ったわよ、それがどうしたって言うのよ?」

「いや、何でもない…じゃ。」

(ゴクリ…。)

ー放課後ー

(店の音)

「ご来店ありがとうございました〜。」

「ご苦労。」

「って、なんで私がこんなもの買わないといけないのよ!!」

「良いじゃん、別に君の物では無いだろ?」

「そうだけど!!買っている私が恥ずかしいわ!!」

さっきまでに遡る…。

「じゃ…。」

(ゴクリ…。)

「3つ聞いてくれるか?」

「その内容にもよるけど…。」

「大丈夫安心しろ、下心はない。」

「それはそれで腹立つけど…。」

「何か言ったか?」

「いや、何でもない。」

「さっそくだがまず1つ目だ。」

「うん。」

「これを見てくれ。」

「これは?」

「暗黒天使なやちゃんだ。」

「これ、普通ちっちゃい女の子が買うやつじゃないの?」

「まぁ、小さい事は気にするな…とりあえずこれを買ってきてくれ。」

「分かったわよ、それであとの2つは?」

「それは追追言う、ひとまず1つ目のやつを聞いてくれないか?」

「…分かったわ。」

そして今に至る。

「これ、何に使うの?」

「君が知る必要はない。」

「えっ?君が使うんじゃないの?」

「使うけど、また別にだ。」

「そう…。」

「じゃ、また明日。」

「ちょっと!!あと2つは?」

「明日言うよ。」

俺は彼女を背中に去った。

道中色々と思った事はあるがとりあえず今は目の前のやつをやり遂げよう。

ー家の前ー

俺はとある人の家の前に来た。

そしてインターフォンを鳴らそうと思った時…ドアが開いた。

「待ってた、入れ。」

彼は安山真人だ。

入学当時から仲良かった友達だったけれど昴斗に濡れ衣着せられ、家で過ごしている。

どんな濡れ衣かと言うと、ある日の事だった。

体育の時、女子の服が盗まれた事件が発生した。

前日、最後まで教室残っていたのは彼だった。

その後、俺は彼と一緒に帰ったのだ。

その翌日、皆から問い詰められ周りの圧で身の潔白を証明できず居ずらくなって今はこうやって家にいる。

「それで、例のもの持ってきたか?」

「これだろ?」

「サンキュー。」

「それで、何か分かったか?もうそろそろ我慢の限界だ。」

「まぁ、買って貰った分の働きはした。」

「そうか。」

そんな話しをしていたら電話が掛かってきた。

「誰からだ?」

「ギャル女子。」

「あー、なるほど…出たら?」

言う通りに電話に出ることにした。

「もしもし。」

「もしもし?やっぱり気になるのよ!!」

「あぁ分かった、少し待ってくれ。」

「う、うん。」

「柚木田公園で待ってる、じゃ。」

「えっ?ちょま…。」

俺はそこで切った。

そして公園に向かった。

ー柚木田公園ー

少し早く着いたのか彼女の姿はなかった。

待って見ることにした。

「…来たか。」

「何よ、そんな顔して来ないと思ってたの?」

「正直に言うとそう思った。」

「ふん、心外ね…で、なんで呼び出したのよ。」

「知りたいのだろ。」

「まぁ、そうだけど…。」

「その前に幼馴染である彼の事どう思ってる?」

「一言で表すなら、絶望だわ。」

「それを聞けて良かった。」

「何なの?一体…。」

「ここで2つ目だ、明日の放課後体育裏に来い。」

「はぁ?それまた一体…。」

「良いから、来いよ。」

「分かったわ…。」

彼女は不服そうな顔したけど明日で全て終わると思うと肩の荷が少し軽くなった感じがした。

ー翌日の放課後ー

(いよいよか…。)

この後、戦うとなると緊張してきた。

とりあえず、曲を聞いて落ち着いた。

そして、その時が来た。

既に相手は着いていた。

「それで、夜月くんから話があるって聞いたけど?」

「はっきり言おう…お前ら2人とも馬鹿だな。」

「なっ…なんなのよ一体。」

「夜月くん…いくらなんでも言っていい事と悪い事があるよ。」

「ご忠告どうも。」

「それだけ?」

「いいや、それだけじゃない…これを見てくれ。」

そう言って俺はスマホを取り出しある物を見せた。

「これは…。」

「彼女がパパ活している所だ。」

「そんなのウソよ、その写真捏造でしょ?」

「いや、捏造では無いちゃんと証明してくれる人がいる。」

「…花菜、本当なのか?」

「違う!!」

「何が違うんだ?」

「花菜…本当の事言わないと別れるよ。」

「…。」

しばらく沈黙が続いた。

俺はそんな事を無視し引き続き証拠を見せた。

「次はこれだ。」

「なんだよ…これ…。」

「これは自作自演している所。」

「…。」

「幼馴染である美紗奈さんに濡れ衣着せて真人と離させようという発端でしょうかね。」

「ふふ、ははは。」

急に花菜さんが笑いだした。

「どうしたんだよ!!」

「はー、もう最悪ね。」

「私のここまでのプランがもう台無しだわ。」

「何がだ!!」

「でもその写真をどうするって言うのさ、皆アンタみたいなど陰キャが信じるわけ無いでしょ?」

「確かに俺みたいな、ど陰キャで根暗な人が周りに言っても信じないでしょうけど、生配信していたら?」

「アンタまさか。」

「そうだ、そのまさかだ…。」

「クッ…。」

そんな話しをしていると陰から誰かが歩いてきた。

そして真っ先に花菜さんにビンタした。

突然な事だったのでその場にいる3人は唖然としていた。

「貴方みたいな人に私は人生狂いそうだった!!」

「美紗奈…。」

「美紗奈さん…。」

「私だけじゃない、他の人にも濡れ衣着せて陥れたでしょ!!」

(美紗奈さん…いつ調べたんだ?)

「はは、陥れて何が悪いこの世界では私はヒロインなのよ?アンタは負けヒロインそしてモブには人権は無い。」

「…。」

黙って聞くことしか出来ない状況になった。

「これで、もし人が死んだら貴方どうするのよ?!」

「死んだら?私には関係ないこと。」

美紗奈さんは花菜さんの胸ぐらを掴んだ。

「貴方は関係ないと思ってると思うけどその人だって人権はあるのよ!!」

「なっ、何を根拠に…。」

「誰だって自由に我儘でいたいのよ!!だけどね、他の人の我儘で勝手に人生がめちゃくちゃになる気持ち分かる?分からないよね?!」

「何が、言いたいって言うのよ…。」

「今からその苦しみを味わって貰うわ…。」

そうすると、黒い人達がやってきて花菜さんを連れて行こうとした。

「やめて!!離して!!」

「何?さっきまでの勢いはどうしたのよ?」

「真人くん助けて!!」

「そんな人とはもう…関わりたくない…。」

「そんな…離して、いやー!!」

こうして、連れていかれたのだった。

「すまない!!花菜さんに言い寄られて来て…。」

「はぁ?もう幼馴染じゃねぇーし。」

「えっ?」

「じゃ。」

「…。」

「…追い討ちかけるがお前はマジでクソだ、幼馴染である彼女を信じず、隣にいる人を信じてその人を問いただす…自分では正義だと思っていると思うけど傍から見たらただ陥れてるだけだぞ。」

「…そうなんだ。」

「じゃ俺も、これで。」

こうして、1連の事件は幕を閉じた。

ー翌日ー

いつも通りに学校に行った。

教室を見ると俺の友達がおった。

「来れるようになったんだな。」

「まぁ、あの問題の人が居なくなったからね。」

そんな他愛のない話しをしてると、

「ねぇ…昨日はありがとう…おかげで吹っ切れたわ。」

「それは何よりで。」

彼女を見ると何かモジモジしている。

(これは、もしかして。)

「あのさ…今度の日曜空いてるかな?」

「空いてるけど。」

「もし良かったらさ、どこか行かない?」

「分かった、じゃなんか探しとくよ。」

「えっ、あっうん。」

こんな事になるからやっぱり俺は主人公が大っ嫌いだ。

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