第7話
第七話
翌日、クラスは咲夏ちゃん達の水族館ダブルデートで話題はもちきりだった。
「咲夏ちゃん、田中に手繋がれちゃって泣いてたらしいよ。」
「明らか両思いなら手を繋ぐのもありなんだけどねぇ。」
咲夏ちゃん、泣いちゃったのか。相手の気持ちは応えられないし、気持ちがないのに流されたままに手を繋いじゃったもんな。
頬杖をついて水族館でとった行動を思い出し、虚しくなる。咲夏ちゃんと顔合わせづらい。気まずいな。今日は課題でもして過ごそうかな。数学のノートを開き、課題に取り掛かろうとする。
「ダメだ……全くわからない。」
数学が苦手な私。いつも赤点ギリギリ。今回の中間テストはまずいかもしれない。
「
いつの間にか私の席の近くに来ていた雪村。ノートを覗かれそう言われた。水族館での出来事を知らない雪村にとっては1人で課題を頑張っている私に疑問を持っているのだろう。
「たまには自分で頑張らないと思って。」
雪村に笑顔で応えてシャープペンを動かそうとするが、わからないからペン回しをする。先生に教えてもらおうかな。
「ふーん。せっかく漫画持ってきたのに。」
甘い誘惑に誘われそうになる……。絶対にのらない。
「雨季好みの清楚系美少女が登場したのに。」
素早く雪村が持っていた漫画を奪い去る。ブックカーバーをしてくれているおかげで周りを気にせず読むことができる。
「しかも巨乳。雨季のタイプだろ?」
「そりゃそうだよ、大は小を兼ねるし。」
読みながら気にせず言ってしまった。この時、私は知らなかった。この発言を聞いて激しく傷ついた人がいることを。
昼休みになっていつも通り4人でご飯を食べる時間になった。今の時間まで咲夏ちゃんとは話してなくて気まずいまま。
「中間テスト、そろそろあるけど雨季、勉強大丈夫なん?」
朝、コンビニで買ったおにぎりを食べようとしたところ雪村に痛いところを突かれた。大丈夫なわけない。
「大丈夫と言いたい人生だったよ。」
食べようとしたおにぎりを置き、手のひらで顔を覆う。
「大丈夫じゃないってことね。咲夏、今週泊まり込みで教えてあげればいいんじゃない?」
その発言に思わずびっくりして顔を上げる。そして、咲夏ちゃんに視線を向ける。咲夏ちゃんは……
「雨季ちゃんがいいならわたしはいいよ。」
ニコリと笑ってくれた。気まずいのは私だけだったみたいだ。変に意識しすぎなんだよ、自分。思いっきりおにぎりにかぶりつく。
「え、茜も行きたぁーい。雨季のお家でお泊まりする。」
隣の私に甘えるような声で言ってくる茜ちゃん。
「いいよ。おいで。」
茜ちゃんも確か頭いいし、勉強も捗るんじゃないかな。そんなことを考えて週末を楽しみする私であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます