第2話

第二話

「あら、可愛い赤ちゃん。」

 渡してきた写真には赤ちゃんと抱っこしている素敵な笑顔な女の人。たぶんお母さんと思われる人。

「ママとの写真です。ママがとても笑顔だからいつも持ち歩いてるんです。」

 少しだけしんみりした顔して応える。確かにママと呼ばれる人は一ノ瀬さんを大人っぽくなった感じする。

「そっか。ママは本当に一ノ瀬さんなの?」

 この子の言っていること、本当に信じていいのか。

「そうですよ。」

 彼女の目を見る。目が泳いでない。私から視線を逸らさなくて芯が強そうな目に私は……。

「信じるよ。君が一ノ瀬さんの子どもで一ノ瀬季星ちゃんであること。」

 季星ちゃんが唇を噛んで目を潤ませる。え、泣きそうになってる!?泣きそうになる理由はわからないけれど。少しだけでも元気になるといいなと思ってさっきまで読んでいた少しエッチな漫画を渡す。

「これ、読んで。元気になるよ。」

 中身をペラペラ捲るとみるみるうちに顔が赤くなっていく。え、純粋じゃん。見た目、大人っぽいのに。経験ない?私もだよ?

「もういいです。読みたくないです。」

 顔をが赤い顔のまま漫画を返された。見た目が大人っぽいのにウブな反応にニヤニヤしてしまう。

「ニヤニヤしないでください。そんなことより、ママと結婚してください。」

 そういえば、さっきも同じようなこと聞いたな。一ノ瀬さんと結婚……その前の段階いわゆるお付き合いというか、私一ノ瀬さんと。

「結婚とかいう前に一言も会話したことないんだけど!!」

「学校の姫と結婚なんて釣り合ってないし!」

「目なんて私の2倍あるし!」

「私が一ノ瀬さんのこと好きになるわけないじゃん。恐れ多い。自分の立場、自覚してるし!」

 思ったことを全て吐き出した。なんか一ノ瀬さんと結婚してとかいうから心がモヤモヤしてたんだよね。

 ふぅって大仕事しましたよっと。かいてもない汗を拭うフリをする。

「あなたはママのことが好きになります。ママの魅力に落ちちゃいます。」

 ジト目で言う季星ちゃん。よく見れば希星ちゃんも私の目の2倍の大きさ瞳を持っていて綺麗な鷲鼻。一ノ瀬さんそっくり。

そんなことをボーっと考えていたら、希星ちゃんが時計を触り始めた。時間を確認しているようで……

「もうそろそろ30分になるので帰ります。」

 いきなりの別れの挨拶に驚きつつも玄関まで見届けることにした。

「また来ますね。」

 ロンファーを履いて立ち上がる季星ちゃん。

「うん。今度は普通に入ってきてね。合言葉決めとく?」

 軽い冗談を言って笑いかけてみる。

「決めませんよ!もう!それでは失礼します。」

 最初のお堅い雰囲気がどちらに行ったのか。私に少しツンツンして家を出ていく季星ちゃんであった。

「というかどうやって未来から来たんだ?」

 今度会った時に聞いてみようかな。まぁ、いつくるかわかんないけど。私は季星ちゃんを信じることにした。この時の私は知らなかった。一ノ瀬さんと大恋愛することになるとは。

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