第6話 親切な上司犬氏

犬「ゴブリンを早期発見できなかった私のミスだ。」


死んだ衛兵の上司と思われる上司犬氏は、淡々と語った。

無念だったのだろう。


俺「背の高い草にまぎれた、背の低い緑のゴブリン。見えませんよね。」


俺は上司犬氏をフォローする。


犬「私が真っ先に負傷してしまってな。時間かせぎのために部下が犠牲ぎせいに…」


無念そうな上司犬氏。声が渋い。


犬「その稼いだ時間で伝令が走ったので、街は大丈夫だろう」


それはよかった。


犬「部下のかたきを討ってくれて、感謝する。君は…?」

俺「ああ、俺は…川に流されて、このへんに流れ着いた田舎者です」


ウソは言っていない。長野は田舎イナカだ。


犬「私は体力が回復するまで戦えないし、いずれにしても街の守備隊がゴブリン軍を撃退するまで街には入れない。ここで休んでいきたまえ」


街の守備隊とゴブリン軍の戦闘が始まっても、俺にできることは無い。

ものすごく弱いからな。

俺は生きて勇者の家族に遺品を届けなければいけない。

俺は上司犬氏の厚意で、この「見張り台のある関所」の小屋に滞在することになった。


***

脚注 「上司犬氏」

「見張り台のある関所」駐屯兵の隊長。

ゴブリン襲撃時、真っ先に負傷してしまい、小屋に籠城ろうじょうしていた。

オトリとなって暴れていた衛兵が敗死はいししたあと、捕らえられ、情報を聞き出すために拷問ごうもんを受けていた。

しかし情報をかないため、拷問兵を残してゴブリン本隊は出発した。

そのへんの経緯を文章にしても物語の本筋とはあまり関係なく、読むのもめんどくさいので、バッサリカット。


***

脚注 「ゴブリン」

緑色の、環境に優しいモンスター。群れで行動する。

人間族の文明を憎悪し、破壊衝動のまま襲い掛かる。

使用言語は日本語だが、ゴブリン訛り(語尾に『ゴブ』がつく)が強い。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る