第4話 強い能力だと良いね

「なんだよ、あの怪物」

「早速、能力を使ったようね」

「はい、キッドナッパーはここから5階上にいると思います」

能力はこれまで最大限使えておらず来るかどうかしか分からなかったけど

敵の位置と見た目までわかるなんて

「それじゃあ休憩はもう終わりで良いわね」

「えぇ、大丈夫です」

それにこの嫌な気配も慣れて

これなら上にも進める

俺達はまた階段を上り着々と近づいて行き

「この階です!」

「武器を取り出して行くわよ」

イナさんは背中に背負っていた刀を取り出し

俺も銃を構える

その先に奴はいた

紐のような手を地面に擦りながらこちらを見て

【ガァァァァァァァ】

叫び手を伸ばしてくる

向かってきた手をイナさんが刀で斬る

斬れた手は落ちて灰のようになりキッドナッパーの元に収束

そして手は再び元に戻る

「再生するのが早すぎる

これじゃ手を斬るのは意味ないわね」

どうすれば良いんだ

考えながら敵の頭に向かって撃つ

がしかし手で跳ね返してきた

「くそっ銃も効かないのかよ」

これじゃ勝ちようがないじゃないか

負け確なのか?

俺は死ぬのか?

ここで誰の役にも彩乃を助けることも出来ずに

俺があの武器を選ぶときに他のを選んでおけば勝てたのか…

俺は悔やみ床にへたり込む

「避けて!」

「へっ?」

俺が顔をあげると目の前にはあの手が迫ってきていて

イナさんは手によって俺と反対側の壁に貼り付けられていた

俺は迫りくる手に対し何もできなかった

「まてぇぇぇぇぇ」

刹那目の前の手は消える

それはイナさんの方も同じで手は消え驚いていた

そして同時に聞こえた声には聞き覚えがあり

声の聞こえたほうをむくとパーカーを被った龍時と白衣を着た男がいた

   ◇◇◇

「なんだよ、ここ」

周りは黒く気持ち悪くなっていた

さっきまで俺学校にいたよな

どうしてこんな変なことになってんだよ

「おい!」

突如後ろから大声で怒鳴られビクッとなってしまう

後ろを振り向くと白衣の変な人がいた

「お前こんなとこで何してんだ!」

「いやぁえぇあの…」

「イナの知り合いか?」

「イナ?」

「その様子じゃあただ紛れ込んできたって感じか

だったら出口を出してやるからとっとと帰るんだ」

「それじゃあ京音が!」

「京音?…あぁなるほどそういうことか」

そうして白衣の人は納得するとカバンから何かを探し始め

「取り合えず、これを着ろ

それと…」

数秒間俺のことを見つめて頷いた

「お前はこれが似合うな」

「ブーメランですか?」

俺はそのブーメランを持つと青色に光りだした

「そのブーメランはお前がどんなに投げても戻ってくるし

当たった対象を吹っ飛ばせる

名付けて飛曲だ」

「………

かっけぇぇぇぇぇぇ」

「だろぉそうだよなぁ

やっぱ俺のセンスは間違ってなかったんだ」

「…」

「…」

「…」

「俺の名前は蛇 開斗くちわな かいとだ」

「えっと俺の名前は伯井 龍時です」

「良い名前だな

なんて言ってる暇はなかった

早くあいつらの所に行かないとな」

「あいつら?」

「京音とイナのことだ

イナはまぁ仲間だ俺達のチームの」

チーム?なんのことだが分からないけれど

楽しそうだ

「それじゃ行くぞ」

そう言うと蛇さんは走り出したので

俺も後について行く

「そういや、お前がここに来た理由は何だ?」

「理由ですか…

元々は彩乃っていう友達がキッドナッパー?って奴に

攫われちゃってそれを助けるために京音を探しに来たんです」

「少しおかしな理由だが気にしないでおこう」

おかしな理由?なんでそう思われてしまったんだ

「ではこちらからも1つ

俺達はそこらへんにいる黒い怪物サーバントや

それよりも上の階級の怪物を相手にしている

武器はお前のブーメランや、京音は銃だったかな」

銃…だからあんなにエイム良くなってたのか納得だ

「そろそろ着くぞ」

「ここって水上交差点?」

「あぁそこらへんも後で詳しく話すが

この世界は現実とは反対の世界と考えてくれれば良い」

反対の世界…

ガァァァァァァァ

「なんですか今のは…」

「もう始めたようだな」

蛇さんは俺の言葉を耳にせずビルの中に入っていく

俺も置いていかれまいとついて行く

13階ぐらいは上っただろうか

そろそろ体力がきつくなってきた

「あと2階ほどだもう少し頑張れ」

「は、はい」

あと少しか頑張れ俺

「止まれ」

階段の途中で止まる

「あれがキッドナッパーか」

蛇さんの言葉に俺も興味本位で見る

うわぁなんだあれ正に怪物って感じ

それに手が片方女性を壁に押し付けてる

あの女性がイナさんかな?

「避けて!」

突如女性は叫ぶ

俺は反対側を見ると京音が床に座っており

そこに向かってあの手が伸びていた

行かないと

俺は走り出す

「おい、まだ行くなッ」

蛇さんの言葉を気にせず俺は走り

「まてぇぇぇぇぇ」

そして腕に向かってブーメランを投げた

   ◇◇◇

「龍時?何でここに」

「今はそんなこと話してる場合じゃないだろ

ほら立て」

差し出された手を取り立ち上がる

そして怪物に向き合う

怪物の手は同時に潰されたことによりゆっくりと再生していた

同時に潰すことでチャンスが生まれるってことか

そして完全に再生されるとすぐに龍時に向かって手を伸ばしてきた

「今度は俺か」

龍時は来た手に向かいブーメランを縦に投げた

そうすることで近づかなくても手を根元の方から潰せるのだった

来たッ

俺は銃を構える

確実に頭に当たるように

バンッ

弾は発射され進み

奴が防ぐ前に

【ガァァァァァァァ】

頭に当たる

「開斗やるなら今よ」

「分かってるさ」

階段の方からさっきの白衣の男が来る

手には謎の箱を持っている

「捕まれぇぇ」

白衣の男は箱をキッドナッパーに向かって投げた

そしてキッドナッパーに当たると箱が開き

目の前は青い光に包まれた

   ◇◇◇

「キッドナッパー討伐兼捕獲の達成を称えて

かんぱーい」

俺達はアジトでパーティーをしていた

あの青い光の後どうなったかというと


「よっしゃぁぁ捕獲成功だ!」

「ちょっとそんな喜んでる場合じゃないでしょ

ほら君達もぼさっとしてないでこのビルから出るわよ

早くしないと崩れちゃうからね」

「えっ崩れるんですか」

「そりゃあここのボスがいなくなったんだ

この場所の価値はなくなったも同然ってことだ」

そしてビルは揺れ始めた

「ほら早く行くわよ」

そうして階段を下りて行った

「はぁ下りでもまぁまぁ疲れるな」

「そんなこと言ってないで早く出口開けてよね」

「そんな急かすな

開ける場所は気を付けないと人に見られるだろ」

「あのその前に貴方って誰ですか?」

「ん?イナ言ってなかったのか」

「言わなくても良いかなって思って」

「まぁいい俺の名前は蛇 開斗だ

以後よろしく」

「はいよろしくお願いします」

「ここらへんの路地で良いだろ」

すると蛇さんは地面に何かを置き起動した

すると入ってきた時とは違う白い渦が出来た

「さぁ早く入れ」

そうして現実の世界に戻った

場所は水神交差点

パトカーが数台来ており

1人の男が乗せられそうになっていた

「あれが誘拐犯か」

「てことは彩乃は」

「きっと警察に保護されてるわ

こっからは警察に任せることよ」

「じゃあアジトでパーティーでもするか」

ってなって今に至る

「おーい大丈夫か」

「あぁすいません」

「なんか考えことでもしてたのか」

「いえ、なんでも」

「そうか、なら今を楽しめ」

そうして蛇さんは部屋の奥の方に消えてった

楽しめって言った人が楽しまないんだな

「そういえば龍時君の能力は何なんだろうね

戦ってるときとかになんかあった?」

「いえ、なかったと思います」

「けど適性者である以上何かしらの能力はあるんだよな」

「まぁおいおい見つければいいでしょ」

「どんな能力なのか楽しみね

強い能力だと良いね」

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