第3話 有効に使うんだ

結局あれから眠れることもなく朝が来てしまった

けれど今日は金曜日で1日頑張れば明日は休みになる

モチベーションは鬼高い

略しておにたかだな

金曜日は日課も楽で最高なんだよな

なんて考えながら荷物を用意する

銃はリュックとは別のバッグの方で良いだろう

こっちの方が取りやすいしな

そうしているともう学校に行き始めたほうがいい時間になった

きっとそろそろ彩乃が

ピンポーン

ほら来た

俺はリュックを背負いバッグを持つ

銃を入れたせいかバッグが重い

これを毎日持ってたら鍛えられそうだな

階段を降りドアを開けると

そこには誰もいなかった

「あれ?彩乃ーいるのか?」

返事は帰ってこない

子供のいたずら?こんな朝からやる奴がいるのか

俺は気にせずに彩乃の家に行く

きっとまだ用意の途中なのだろう

インターホンを押すと出てきたのは

彩乃のお母さんで

彩乃は既に学校に行ったらしい

何か早くいかなきゃいけないことでもあったのだろうか

俺はあまり深く考えずに学校に向かった

学校に着き教室に入るも中には彩乃はいない

そうしてHRが始まる時間にも彩乃が来ることは無く

先生に聞くも連絡は無いらしい

家を出て学校へ向かおうとしたことは確実だろう

その途中で何かあったのか?

俺はその日授業に身が入らず

指されても答えることが出来なかったりした

そうして放課後になってしまった

取り合えずLINKを送る

『大丈夫か?』

返信が来なければ既読もつかない

この感じは2日前と同じだな

放課後に彩乃にLINKを送って既読もつかない…

まさかサーバントに襲われた?いや、そんなはずあるわけないあいつらは夜行性だし

バグだとしても朝に人を襲うことは無いだろう

1人残った教室で考える

そこでスマホの通知が鳴った

良かった、なんともないのだろうか

スマホを開くがその通知はイナさんからだった

『大変なことが起きた』

その一文は俺の心を揺さぶった

『どうしたんですか』

すぐに既読が付き返信が来る

『チーフが現れてしまった』

『チーフって何ですか』

『簡単に言えばサーバントの上の存在だ』

上の存在!?

そこで俺は彩乃とチーフを結び付けた

チーフだったら朝だろうと関係なく動くだろう

『取り合えず君はその場で待っていてくれ

私が今向かうから』

チーフという親玉の存在の出現

彩乃が攫われたかもしれないという懸念は

俺の混乱につながっていたものの

無意識のうちに俺はバッグから銃を取り出していた

そうして数分もしないうちにイナさんはやって来た

しかしイナさんはいつもの感じの服ではなくパーカーで

もう1枚持っており

「はい、これ君のパーカー、制服の上からでも良いから着てね」

どうしてこれをなんて聞いてる暇なんて無く俺は着始め

その間イナさんはなにやら準備をしていた

「着終わりました」

「そう、それなら始めるわよ」

始める?

「これよりチーフA危険度エプタの討伐を始める

それではマヴロスへ入る

準備は?」

準備はって聞かれても

「ばっちりです」

としか答えられないでしょ

イナさんが刀の柄の部分を持つと

柄の先に青い刀身が構成された

適性者が持つことで武器となるこれらは通常の状態では武器とは分からないな

そうしてイナさんは小声で何かを唱え刀を縦に振る

するとそこにはドス黒い渦が出来た

「これがマヴロスに入るための門よ

さぁ行くわよ」

イナさんに手を差し出され俺はその手を掴む

彩乃のためにもいかなければ

   ◇◇◇

門を通った先は黒く憂鬱になりそうな世界だった

「ここがマヴロスですか?」

「えぇそうよ、でもここはマヴロスの中でもサーバントがうろつく

ただの広場みたいなものよ」

辺りを見渡すと確かにサーバントが沢山いる

そしてもう一つ気付くことがあった

「現実と似てる」

「そう、ここは現実の裏側のようなもので

サーバントは人の裏を表しているのよ」

人の裏…

サーバントが無限に沸き続けるのもそれが関係しているのだろう

「取り合えず今日はキッドナッパーがいると思われる場所に行くわ

さぁフードを深くかぶって」

イナさんに連れられるまま歩き出す

不思議とサーバント達は俺達に気が付かない

このフードと関係しているのだろうか

しばらく歩いて着いた場所は交差点に近い1つの廃ビルだった

「ここがですか?」

「えぇここがキッドナッパーの巣食うビル」

周りにも同じようなビルがありそれらは現実でも同じだ

本当にここなのだろうか隣かもしれないなんて疑っていた

けれどそれは一瞬のうちに晴れた

ガァァァァァァァ

と叫び声がマヴロスに響き渡り

サーバント達もそれに続き叫びだす

   ◇◇◇

その少し前、現実の水神交差点では龍時がいた

「京音にも彩乃ちゃんにも連絡着かねぇな

あの2人になんかあったのか?」

俺はカフェで少しくつろぎながらも心配していた

「事件なんかに巻き込まれてなければいいけど…」

バンバンッ

刹那2発の銃声が鳴り交差点にいた人達は叫びだし

1つのビルに取り付けられたモニターの映像が映り変わり

何処かの中に1人の女性、いや彩乃が拘束された状態で映り

そこにもう1人仮面をつけた人物が現れ言う

「皆さんどうも、キッドナッパーです」

   ◇◇◇

「何が起きてるんですか」

「今のはキッドナッパーの叫びよ

予測では現実でキッドナッパーがなにかアクションを起こし

周りの人々にも何かアクションがあった

そんな具合だろう…早めに倒さないと」

「1つ聞きますがキッドナッパーなどは

こちらの世界に人を連れてこられるんですか?」

「今のところこちらに連れてきた前例はないわ

どうしてそんなことを聞くの?」

「実は…」

俺は彩乃のことを話した

「なるほどね、あの子が…

じゃあなおさら早くいかないとね」

そう言いイナさんは刀を持ちなおす

「さぁ突入よ」

   ◇◇◇

同時刻現実では

「頼む、繋がってくれよ」

俺は学校に向かって走りながら京音に電話をかけていた

京音は最後まで教室に残ってたし

今も残ってるんじゃないだろうか

ダメだ電話は繋がらない

何してんだよあいつは

学校に着くころにはもうすぐ日が沈みそうだった

流石に走り疲れ階段で手すりに寄りかかってしまう

そこで一度冷静になる

これで京音に会えたとして京音は彩乃を助けられるのか?

警察に任して待っているのが良いんじゃないだろうか

俺はそう思いつつも

心の中では京音が何とかしてくれると思っている

俺は再び歩きだし教室に着く

扉を開けると中には黒い渦があり

京音の荷物が無造作に置いてある

俺は好奇心に黒い渦に近づく

この黒い渦は何だ

手を伸ばすと…

   ◇◇◇

ビルは本当に廃ビルで所々に穴があったりするし

階段の位置が階によって違い迷路のようになっている

けれど階段を上るたびに嫌な気配は増していき

近づきたくなくなる

「大丈夫か?」

「だ、大丈夫です」

ついにはイナさんに心配されてしまった

そんなにダメそうに見えたのだろうか

なんでイナさんは平気なんだろう

慣れなのか

「少し休むぞ」

「えっ、大丈夫ですよ」

俺の言葉など聞かずイナさんは座る

「いつまで立ってる早く座れ」

「は、はい」

大丈夫と言ったのに…

「適性者には個々に能力がある」

えっ能力?

「私はこの吸血鬼が能力だ

だから君にも能力がある」

俺にも能力があるのか

「まだ少ししか会っていない予測だが君の能力は

敵の感知だ」

敵の感知?

「最初の夜君は横から突如現れたサーバントに銃を撃つことが出来た

反射的な行動では無くまるで来ることを知っていたかのように」

あの時は俺は嫌な気配を感じて…

そうか、この嫌な気配を感じとることこそ感知なのか

そして今俺はキッドナッパーの嫌な気配に負けそうになっているが

嫌な気配を感じないイナさんはこんなに平気なのか

全てのつじつまが合った

これが俺の能力なのか

「その能力を君は有効に使うんだ」

有効に…

俺は目を閉じ嫌な気配を最大限に感じ取る

胸が苦しく痛い

けど我慢するうちに何かが見えてきた

ここからあと5階上に奴がいる

黒いがサーバントとは違い2足歩行で

手は紐のようになっている

まるで誰かを縛れるかのような

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る